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元空手マンの異世界転生録  作者: 間宮緋色
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それぞれの役割

「って訳なんだが……」

 大雑把な説明を終えた俺は三人にそう言って口を閉じた。

 三人の反応はそれぞれだ。

 フランはなるほどと納得し、セラは話の規模がでかすぎていまいち飲み込めてない感じで、そして、アリアはカノンへと不満げな視線を向けている。

「って事は師匠と一緒に開発したこの魔法は、ユーリを保護するためのものだったって事なんだね?」

 フランはカノンへとそう言った。どうも、カノンはこの世界の狭間に篭るまでは、第二世界で色々していたらしく、フランはそんなカノンの弟子の一人だったらしい。

「私の目的はそうだったけど、嘘はついてないわ。混色の楽園なんて物を作るにはお兄ちゃんぐらいしか無理だろうし、お兄ちゃんじゃなければセラは救えなかったもの」

「私、ですか?」

 急に自分の名前が出たセラがびっくりして聞き返す。それにカノンはそうよ、と頷いた。

「あなたの楽園創造イデアルの真の力ははその名の通り、楽園を作り出すこと。回復と防壁はその副産物だもの」

「なるほどね。ボクがユーリを護り、セラがこの世界の狭間に拠点を作る。じゃあ……」

 残る一人であるアリアへと視線を向けるフラン。それにカノンは一振りの剣を取り出して答えた。

「アリアの役割はこのラグナロクでヴァラハギカに止めを刺すこと。ヴァラハギカを殺すにはこの世界すら分断するEXランクの魔剣じゃなければ不可能。でもお兄ちゃんはそんな高ランクの魔剣は使えない。っていうより普通にこの剣を使いこなせる力があるならヴァラハギカには負けないでしょうね」

 戦うことが得意でなかったとはいえ、この世界の最高位の存在であったユーリやカノンですら扱えなかった魔剣。でもアリアの魔剣の主(ブレードマスター)ならば、それが可能なのだ。もちろん魔剣の主を極めればという話だが。

「…………」

 カノンの言葉にアリアは答えない。というより、アリアの視線はさっきからラグナロクにずっと釘付けだ。あ、そういえばアリアには困った病気があったなー、と俺が思うのとアリアが熱っぽい吐息を吐くのが同時だった。

「カノン、それ早くしまってくれ」

「はーい」

 カノンが返事をするのと同時に消えるラグナロク。それを確認してアリアはまたそっぽを向いてしまった。どうも、アリアはカノンのことが好きじゃないらしい。まあ、普段のアリアなら即効ラグナロクに飛びついていただろうし、さっきの話の影響がまだ残ってるんだろう。

「そういえば、俺の身体は結局どういうものなんだ?」

 カノンは俺をこの世界へと転生させるにあたり、一番強い身体へと転生させた。それがこの身体だったわけだが、しかし、この身体にはよく解らない事が多すぎる。あのバンホルトたちが危険視してたぐらいだし。

「バンホルトが殺したイゾルデって女はね。厄介な能力を持っていたの。それは力を移し変える能力。イゾルデはそれを使って全ての色の能力を持った最強の人造兵器を作ろうとしたの。自分に都合のいい思考性と知識を植えつけてね。お兄ちゃんの身体はそのプロトタイプみたいなもの」

 なるほど。俺の間違った知識や、前世じゃ考えられなかった倫理観はそれが元になってるのか。実際、確かにこの身体はやばいもんなぁ。

 俺が自分の中身についてようやく納得のいく答えが得られて頷いている間にもカノンの説明は続く。

「バンホルトは十三の調停者サーティーンインターベイションって呼ばれるこの世界を管理する組織の一人で、イゾルデの企みを察して先に潰した。そして、イゾルデは最後の力をもってしてお兄ちゃんの身体を作り、バンホルトたちに復讐しようとした。だけど、その身体にはお兄ちゃんの魂が先に入っちゃったからイゾルデの企みは完全に潰えた。でも、その事を知らないバンホルトたちからしてみればお兄ちゃんは危険な存在に見えるって訳」

「つまりは、半分ぐらい人違いって感じか。調停者なんて名乗ってるんだから話ぐらい聞いて欲しいもんだ」

 カノンの説明に俺は特に深く考えずにそう言った訳なのだが。何故かそれを聞いたカノンは気まずそうな顔をして俺から眼をそらした。

「カノン?」

「あー、あのね、お兄ちゃん。落ち着いて聞いて欲しいんだけど」

「ああ」

「あれ、作ったの私なの」

 てへって感じに笑顔でいうカノン。はー、なるほど、カノンが作った組織だったかー、はっはっは等と流せるわけもなくそちらにジト目を向けるとカノンはあわわって感じに慌てながら弁明を始めた。

「違うの。あの時の私はまだ記憶のことを思い出してなくて、ただ漠然とこの世界を守らなきゃって思ってて。記憶を思い出してからはすぐに封印のためにここに来ちゃってそのまま……」

「大丈夫。怒ってないよ」

 結果論だけどみんな無事だったしな。

 さて、状況確認はこんな感じか。気がつけば全員の視線が俺へと向けられており、俺はみんなに頷いてから言った。

「それじゃ、これからの事を話し合おうか」

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