本当の再会
「はっ!?」
まるで呑み込まれていくような恐怖に意識が浮上する。多分、俺が気を失っていた時間は一分にも満たないだろう。あまりの圧に意識を失ったが故に、このままではまずいという防衛本能ですぐさま目を覚ましたのだ。
「大丈夫、お兄ちゃん?」
俺が状況を確認しようとした時、そんな声が頭上からかけられた。声はカノンのもので、俺はそれを聞いて安堵した。そう、安堵だ。先ほどの経験で俺は思い出していた。俺がどういう存在なのかも。カノンとの関係も。
だが、それは有坂悠里が消えたというわけではない。消えかけた悠里をユーリは拾い上げてくれ、そして、俺を尊重し、できるだけ悠里が消えないように一体化してくれたのだ。
今はもはや我がことのように感じられるが、相変わらずユーリは人間に優しい。まあ、自分が守護するものなのだから当たり前なのかもしれないが。
「酷いな、カノン。死ぬかと思ったよ」
「ごめんね。でも、その感じだと上手くいったみたいだね」
「ああ。思い出したよ」
いつの間にかされていた膝枕を少し名残惜しく思いながらも俺は身体を起こした。そこは最初に目を覚ましカノンと出会った場所であり、セラたちもちゃんと無事に存在していた。
「だけどずいぶん無茶をしたなカノン」
その言葉が指すのは先ほどのことではない。それはカノンも解っており、ちょっと苦笑しながらも言った。
「確かにね。でも、チャンスはこの瞬間にしかなかったの。上手くいったのは本当に奇跡レベルだけど」
「ああ、そうだな」
俺はその言葉に頷き改めて仲間たちを見やる。そう、必要なことだったのだ。俺にはすべき事があり、そして、その為にはセラとアリア、そしてフランの力が必要不可欠なのだ。
「でも、奇跡だったとしても、それを手繰り寄せたのは、カノン、お前のおかげだよ」
「お兄ちゃん……」
俺の言葉を聞いて、カノンは少し言葉に詰まった。何かを言おうとして、何も言うことができずに、代わりにその目に涙があふれる。
だから、俺はカノンへと近づき、その小さな身体を抱きしめた。
「あっ……」
カノンは最初少し驚いたようだったが、そのまま俺の服をそっと掴んできた。だから俺は遠慮するなと伝えるために抱きしめる腕へと力を入れる。そして言った。
「今まで頑張ってくれてありがとうな。そんで、遅くなってしまって悪い」
俺はかつてユーリがそうしたようにカノンの頭をそっと撫でた。
「うん。私、頑張ったよ。だって、約束したから……絶対にこの世界を守るんだって。だから……」
そこから先は言葉にならなかった。代わりにカノンは嗚咽を漏らし始め、やがて俺の腕の中で静かに泣き始めた。
俺はそんなカノンの頭を、落ち着くまでずっとずっと優しく撫でていたのだった。




