密談と契約2
俺の確認したフランの能力。それは思わず変な声が出るレベルでやばい奴だった。
攻撃SS、防御SS、敏捷A、魔力SSS、魔法創造SS、能力:白A、黒A、青A。能力名は究極体。能力内容は不老とスペック強化に見切り。
いやもう、ビックリだ。攻撃も防御もめちゃくちゃ高い。敏捷もAで充分高いが、攻撃とかほど高くないのはフランの攻撃と防御は魔法によるところが大きいせいなのだろう。魔力は最高レベルでおまけにユニークは魔法創造。能力が軒並みAなのもフランが魔法主体で鍛えてきたからだろう。
いやー、しかし、やばいなこれは。RPGで言うなら序盤にしていきなり最強ユニットを仲間にしてしまったって感じだ。DLCとか課金ユニットとかそういうアレなのかもしれない。
まあ、そのおかげでこっちは大いに助かってるわけだし異論は無いのだが。ないのだが何回確認しても凄いなこれは。
俺がそんな感じで内心めっちゃ驚いていると、気がついたら目の前にフランの顔があった。近い!
「なんだよ?」
とりあえず距離をとりながらそう言うと、フランは更にこっちに距離を詰めてきた。間近で見ても美少女にしか見えないせいで、その、ホントやめてください。
だが、俺のそんな内心を見透かしたようにフランはニヤニヤと笑いながら近づきつつ言う。
「一つ聞きたいんだけど」
「なんだよ。ってか近いよ」
「近づいてるからね。それよりセラの額の契約印なんだけど」
うっ。やっぱその話になるのか。まあ、そうなるだろうと思ってたし、致し方ない。
とか俺は内心で覚悟を決めていたのだが、
「ひょっとしてセラとエッチな事したの?」
「ぶっふぉ!」
想定以上の事を聞かれ、俺は思わず吹き出してしまった。結果として至近距離にあったフランがそれを避けるために、顔が離してくれたので助かったが、そもそも話の内容的に全然助かってない。
「してない!」
「え、そうなの? てっきりあの位置は行為に及んだ後にピロートークでって感じかと思ったんだけど」
「違うわ!」
発想が飛びすぎだろ!
「そうなのか。前に読んだ漫画だとそんな感じに描いてあったんだが」
「この世界漫画があるの!?」
そして、何て漫画を描いてるんだお前はよぉ!
とりあえず脳内でまだ名も知らぬ漫画の作者に全力で突っ込みを入れておく。
「あるよ。主にダンジョンで見つかったりする奴だけどね。お金持ちの趣味で描いてる人も居るけど一般には殆ど出回らないよ。何せ複製するのが手間だからね」
どこから突っ込めばいいのか。まあ、とりあえず、印刷技術がそんなに発達してないから流通はしてないって感じなんだな。
「で、フランはどこで漫画とか読んだんだ?」
「それは色々。所有者に見せてもらったりアカデミーの図書館にあった奴を読んだり」
「そうか」
俺のこの世界に対する認識がどんどん塗り替えられていくな。しかし、漫画は想定外だったわ。って何の話をしてたんだっけか。
俺がそんな事を考えながら、話を戻そうとした時、それより先にフランが言った。
「でも、なるほどね。ユーリ、キミは転生体だったのか」
「え!?」
フランの言葉に素で驚く俺。何で、と思い先ほどの自分の発言を思い出す。うわ、やらかしたな。動揺してたからつい言ってしまってる。
「…………」
少し悩む。まあ、どうせフラン相手に誤魔化すのは無理だ。それに、言ってしまってもいいのかもしれない。何故ならさっきフランは言った。キミは転生体だったのかと。それはつまり、俺以外の転生体の例を知ってるってことだ。なら、俺の疑問についても何か解るかもしれない。
俺はそう判断し、フランの言葉に素直に頷いた。
「そうだよ。俺は地球の日本ってところで生まれて、その後、死んで気がついたらこの世界でこの身体になってたんだ」
「ああ、話に聞いた事がある。魔法の存在しない地球という世界の日本という国。でも、そうか、それなら……」
フランはそれを聞いて少し考え込む。そして、言った。
「とりあえず、今回の件が片付いたら、改めて今の話をしよう」
「ああ」
「大丈夫だよ。悪いようにはしないさ。マイマスター」
ちょっと真剣な顔をしていた俺の緊張を解くように悪戯っぽくそういうフラン。まあ、そうだな。フランは俺たちの仲間だし、信じられる。だから俺もひとまず今の話は横においておくとしよう。
気がつけばそろそろ日が昇ろうとしている。俺たちにとって大事な一日が始まろうとしていた。それに気づいたフランも話を切り上げるように言葉を紡ぐ。
「さて、そろそろ二人が起き出して来る頃だし、それじゃ、行動開始としようか」
「頼りにしてるぞ、フラン」
「ああ、大船に乗ったつもりで任せてくれたまえ」
さて、まずは直近の問題から片付けていくとするか。




