出会いと衝撃
自分で読んでて時間軸いつだよって思ったので書いておくと、転生したのが夜で、旅に出たのが朝です
俺が三人に追いついたのと、追いかけられていた人物が捕まったのはほぼ同時だった。
「こいつ、逃げられるとでも思ったのかよ!」
そう言いながら追いかけていたであろう男の一人(髪は二人とも青で種族は人間っぽい)が捕まえた人物を突き飛ばす。
「きゃっ」
悲鳴を上げて尻餅をついた人物は少女だった。髪の色は金と緑の二色で俺と同じ混色系だ。こっちも種族は人間っぽい。そして、手には枷がついていた。
「さて、逃げる気が起きないようにちょっと痛めつけるか」
そう言って尻餅をついた少女へと近づいていく男。うーむ、今のやりとりで大体事情がつかめてしまったな。まあ、とりあえずピンチの女の子は助けるよね。というわけで俺は姿を現して男たちに声をかけることにした。
「そこまでにしとけよ」
「あん?」
突如現れた俺にいぶかしげに目を向ける男たち。その視線が俺の混色の髪に向いた段階で二人はニヤリと顔を歪ませた。すげぇな。ここまでテンプレだともう笑うしかないぞ。
「おい」
「ああ」
短いやり取りで意思疎通を取る男たち。その手馴れた様子からはきっと今まで何度も同じことをしたのであろう事が読み取れる。まずいな。こいつら強そうだ。武術をやってるわけじゃないんだろうが戦いなれてるのがその歩き方だけで解る。気配といい便利すぎないかこの身体。
相手の能力も気になるがとりあえず俺は空手の構えを取った。悩んだ末、とりあえず半身に構えておく。まずは様子見だ。少女は心配そうに俺を見ているが、逃げようとはしない。何でだろう。
だが、まさか逃げろと声をかけるわけにも行かず、仕方なくそっちは後回しにする。さあ、戦闘開始だ。
最初に動いたのは男のほうだった。武器を持たない徒手空拳でこっちに踏み込んでくる。その速度は早いが遅い。いや、何言ってんだって感じだろうが本当にそうとしか言えないのだ。
速度的には多分試合で戦ったどんな奴よりも早い。それが解る。だけど、それと同時に俺はその速度を遅いと感じている。現に今この瞬間も全く余裕だ。右にかわすか左にかわすか悩むことすら出来るレベルだ。
何かあんまりにも隙だらけに見えてきたぞ。とりあえず、即頭部に蹴りでもぶち込んで行動不能にしとくか。俺はそんな軽い気持ちで、向かってきた男の即頭部に上段回し蹴りを叩き込み、その瞬間パァン! という凄い音がして男の頭が弾けとんだ。
ピンク色っぽい肉塊とか色んなものが飛び散り、一瞬後に頭を失った男の身体は噴水のように血を吹き出して倒れ付した。
「…………」
「…………」
「…………」
誰も声を発さない。え、ちょっと待って。なん……これ? え?
「うわぁあああああああ!!」
最初に叫び声をあげたのは俺だった。待って待って。やばい。え、なにこれなに? 目の前の光景があまりにも想像とかけ離れすぎて理解が追いつかない。死んだよ! 間違いなく死んだよこれは! これで生きてたらもうそいつ人間じゃねぇよ!
え、ちょ、うわー、ないわー。それはないわー。なんて俺が現実逃避をしていると、
「ひっ、ひぃいいいいいいい!!」
次に我に返ったのはもう一人の男だった。まるで化物でも見たかのように怯え全力で逃げ出した。いや、そりゃそうだ。俺だって目の前で連れが頭吹き飛ばされたらそんな反応するわ。っていうか化物でも見たかのようじゃねぇよ。化物だよこれは!
脳内でそんな突っ込みを入れながら残った少女を見る。少女も完全にドン引きっていうか、真っ青な表情で俺を見ている。違うんだ。誤解じゃないけど誤解なんだ。かと言って近づこうにも絶対怯えられる事は目に見えている。だから俺は悩んだ末、少女に向かって今出来る最大限に友好的な笑顔で微笑みかけた。
「ニコッ」
「きゅー」
少女は気絶した。




