西都クオーリア到着
あれから、フランと一緒に宿に戻った俺はフランが仲間になった事やフランの名前の事を二人へと話した。混色の王についてはまだ決まったわけでもないし、話が長くなりそうなので省略した。必要になったら話せばいいだろう。
セラもアリアもフランの本当の名前を聞くと大層驚いていた。そして俺も驚いた。何故なら大賢者フランキヌスは有名になってから既に数十年経っているというのだ。だがフランの外見年齢はどう見ても十代である。
まあ、それについては本人から教えてもらったのだが、どうもフランの能力の影響らしい。白と黒と青の混ざったその能力は究極体というらしく能力内容は不老とスペック強化に見切り。魔法使いのフランが近接戦も強いのはこの能力のおかげらしい。
だが、俺が真に驚いたのはそこではない。セラたちの話によると、大賢者フランキヌスは男だというのだ。その話を聞いた俺はフランの方を嘘だろって顔で見たんだがフランはどう見ても美少女にしか見えない笑顔で
「あれ、言ってなかったかな?」
等とのたまう始末。当然すぐには信じられなかったのだが、
「じゃあ、確認する?」
と言われて俺は慌ててフランが男だと認めたのだった。じゃないと確認とかしたら何か目覚めてはいけない何かに目覚めそうだ。ってかこれから部屋割りどうすんだよぉ! ここにクラスメイトの木村が居たら大興奮だったに違いない。お前の言ってた男の娘っての、俺にもよく解ったよ。
ともかく。そんな感じで一波乱ありつつも、俺たちの仲間に心強い仲間が増えたのだった。
さて、そんな訳で俺たちは改めてこれからの行き先を話し合った。その結果としてまずは王国の首都であるカンディアへと向かうことにした。
フランが一度国王に会いたいとか言い出したからだ。かの有名な大賢者様にもなると国王に会うぐらいは問題ないようだ。改めて凄い奴が仲間になったもんだ。
元々東に行く予定だった俺たちも特に反対理由はなく、そのままグリーナから東へと出発した。たった一日滞在しただけなのに色々な出来事があった気がする。一日で二個も能力に目覚めたし。
能力といえばフランは髪の色を赤にしなかった。混色の中に単色が混ざっていると逆に目立つし、他の色にしてると混乱するだろうからという事だ。
そして、なんと、俺の髪色が増えた。鏡でも確認したのだが、元々の黒と銀に加え赤が増えたのだ。これはやっぱり二個目の能力に目覚めたからだろう。
依然俺の生まれには謎が多い。知識の食い違いやあり得ない髪色の追加にしかも二個目の能力。どうにかしてその辺の事も調べたいものである。
グリーナを出てからは順調に旅は進み、南東へと向かいながら馬車で五日。俺たちはアイベルン王国の西都クオーリアへと辿り着いたのだった。
西都と呼ばれるだけあり、クオーリアはめちゃめちゃでかかった。リオネルも結構な大きさだったが規模が違う。まず目に映るのが巨大な城壁。中に入るのも検問があり怪しい奴らはすぐさまひっ捕らえるとばかりに兵士たちが目を光らせている。おまけに検問待ちの行列も結構長い。
中に入るために一日経過し、冒険者として改めて中に入ると、今度は溢れんばかりの人と建物だ。日本だと信号機やコンビニなどの特徴的な建物である程度は道を覚える事が出来るが、こっちではそうはいかない。材質は違ったりするけど似たような建物がずらりと並んでるのは圧巻の一言だ。
だが、一つだけ確かなものがある。それがクオーリアのどこからでも見えるだろう圧倒的でかさの城だ。俺が生まれた場所も結構な城だったが、間違いなくそれ以上でかい。首都じゃない場所でこれほどなのだから俺が思ってた以上にアイベルン王国ってのは凄いところみたいだ。
ちなみに中心へ行けば行くほど金持ちや身分が高い連中が住んでるらしい。俺たちはとりあえずいつも通りそこそこの宿に拠点を作り、ギルドへと仕事を探しに行く事にした。しかし、討伐依頼とか外に仕事がある場合出入りが面倒くさそうだな。
そんな事を思いながらクオーリアの城下町を歩く俺たち。そんな俺たちに向けられる奇異の目。これだけでかい場所でもやっぱり混色は目立つらしい。まあ、気にしていても仕方が無いので特に何もせずにギルドへと向かう。
当然というかクオーリアのギルド支部は今まで見た中で一番でかかった。受付だけで結構な数があるし、人もめちゃくちゃいる。セラも俺と同じなのか落ち着きなくあたりをきょろきょろ見回している。逆にアリアとフランは慣れた感じでいたって自然だ。
その時、俺たちへ、というかアリアへと声をかけてきたパーティがあった。男女二人ずつの四人パーティでリーダーは気の強そうな青髪の女性だ。
「久しぶりね、アリア。まさか戻ってくるとは思わなかったわ」
「別に」
相手の言葉にそっけなく返すアリア。慣れてると思ったらアリアはどうも初めて来た訳じゃないらしい。しかし、何だか穏やかじゃない雰囲気だ。
「へー、あの変態のアリアちゃんが男と一緒に居るなんてねー」
そんなあからさまな侮蔑の言葉をぶつけてきたのは結構ガタイのいい男だ。右頬に大きな傷がある。
「その変態に欲情した馬鹿はどこのどいつだったかしら?」
「んだと!?」
アリアの返しにいきり立つ男。ホント、こういう輩はどこにでもいるな。まあ、アリアもあんまり話したくないみたいだし、適当に追い払うか。
俺がそう思って前に出ようとすると、その前にさっきの青髪の女性が先に口を開いた。
「まあ、落ち着きなよ。アリアも悪かったわね」
全く悪びれずにいう女性。そのまま紙を取り出して、アリアへと渡した。
「落ち着いたら一度顔を出しなさいな」
それだけ行って背を向けて去っていく。残りの三人もその背を追うように続いていく。ふと、最後尾に居たフードの男と視線が合った気がした。本当に一瞬だったけど。
しかし、よく考えたら俺たちはアリアの事を知らなすぎる気がした。あえて聞くこともないかとも思ってたけど、後でちょっと話を振ってみよう。
「アリアさん……」
セラが心配そうにアリアへと声をかける。
「大丈夫よ」
アリアはセラにそう言って安心させるように笑いかけながら頭を撫でた。
「何の紙をもらったんだい?」
「さあ? 後で確認するわ。それよりほら、次、私たちの番よ」
気がつけばアリアの言うとおり受付が俺たちの番号を呼んでいる。なので、ひとまず俺たちは今のやり取りを忘れ、依頼を探す事にしたのだった。




