とりあえず仮契約
「王?」
フランの言葉を聞いた俺は鸚鵡返しにそう尋ねた。というより他にどんな反応をしろというのか。しかも、混色の? 益々訳が解らない。
俺の表情を読み取ったのか、それとも伝わらない事が最初から想定済みだったのか、ともかくフランは俺へと説明を開始してくれた。
「まず生まれたばかりであまり解らないだろうし言っておくと、混色って言うのはそれだけで迫害される対象になりうる。まあ、だって単純に強いからね。嫉妬の対象になりやすいし、利用しようって考えだって出てくる」
うん、それは頭の中にある知識の通りだ。
「ボクも実際それで酷い目にあった。当時のボクはまだ今ほどの力を持ってなかったしね。まあ、その話は今はいいや。ともかく、だからボクはずっと長いこと待っていたんだ。王の素質があるものを」
長いことってフランって今何歳なんだ? 何て疑問が頭をよぎるが口を挟める雰囲気でもないし、そのまま話を聞く。
「ボクが占いで条件付けたのは、混色である事、カリスマがある事、寿命が長いこと、そして潜在能力が高い事。大雑把に言うとこの辺だ」
「一つ目は解るけど、他の奴はどういう意味が?」
「そりゃあ、王だからね。人気があるに越した事は無いしすぐに死なれても困るしね」
「なるほど」
そう言えばこの身体になって考えた事なかったけど、俺の寿命ってどうなってるんだろうな。フランの条件に引っかかってるし結構生きれそうだが。流石に不死では無いよな?
「目的は解った。それで、何人協力者が居るんだ?」
「え? 居ないけど」
「え?」
なんだって? 何か信じられない言葉を聞いた気がするぞ?
「順番が逆だよユーリ。君という旗印がなければ集まるものも集まらない。仲間を募るのはこれからだよ」
「待て待て。まだ、王になるとは言ってないぞ」
「えー、良いじゃないか王様。ハーレム作っても許されるよ?」
「いきなり俗っぽくなったな!?」
「まあ、冗談はおいといて。混色の国を作れば、君の連れてる二人だって少しは安心して過ごせるんじゃない?」
「それは……」
確かにそれは一理あるかもしれない。セラもアリアも戦闘が得意ってわけじゃないし、二人が安心して暮らせるならそれに越した事は無い。
「流石に今すぐってのは無理だけどね。だけど、王になるって言うならもちろんボクが仲間に加わるわけで、自分で言うのもなんだけどボクは結構強いよ」
「それは身にしみてる」
なるほど。そう言われると悪い条件じゃない気がしてくるな。流石に王になれば黒き腕も手は出せないだろうし。それに実際フランはめちゃくちゃ強いし、仲間に加わってくれればかなり頼もしい。
しかし、これは重大な選択でもある。王になれば味方も増えるだろうが敵も当然増えるだろうし、そもそも王って何するものかも解らないし。
流石にここで簡単に決めれるような内容じゃない。それはフランも解っていたらしく、俺にこんな提案をしてきた。
「まあ、今すぐ決めろなんて言わないし、今は仮契約って事でキミの仲間になるよ」
「いいのか?」
「うん。キミはボクを戦力として使える。ボクはキミを見極めながら仲間の二人を説得する事が出来る。ちょっと苦しいけどお互いに利益があるって事で」
そう言ってフランが俺に手を差し出してくる。そういう事なら俺にとってはありがたい。俺は迷うことなく差し出されたフランの手をとった。
「んじゃ、よろしくな、フラン」
「ああ。よろしく、マイマスター」
こうして、フランは俺たちの仲間に加わったのだった。




