ささやかな宴と出会い
記念すべき初契約者であるセラのステータスを折角なので見てみようと思う。
攻撃E、防御C、敏捷D、魔力B、素直さA、能力:緑C、金D。
攻撃がEなのはまあ納得だし、防御はこれ能力込みだな。魔力は高いが現状魔法を使えないから意味が無い。やはり早く魔法の習得をしなければ。素直さはここは契約者それぞれのユニーク欄らしい。能力は防御が高くて回復はまだあんまりって感じか。
ちなみにランクはF~SSSの上のEXまで存在している。アリアが魔剣のランクを語ってる時はよく解らんかったが、いざ自分の能力で関わってくると確かに説明が難しいなこれは。実際セラの攻撃Eだって何となく弱いなーって事ぐらいしか解らんしな。目安程度に考えておこう。
しかし、まだ参照できるのがセラ一人だから現状目安にすらなれていない。俺とかアリアのステータスも確認してみたいんだが、自分相手に契約は出来ないしアリアを契約者にするのも難しいし仕方が無いか。
まあ、今後に期待といったところだな。
さて、夜である。予想外に収入があった俺たちは、宿の一階でお疲れ様会をやっていた。宿場町で尚且つ馬車を止める場所付きの宿な為、客足は盛況な様子。俺たち以外でも宴会みたいになっているところは少なくなく、ファンタジーでよくある大衆食堂って感じの雰囲気だ。
俺たちは全員酒を飲まないためテーブルの上に置かれているのは主に料理。それも量よりも質を重視したちょっとお高めの一品物である。
この世界の食事上は大体日本と変わらない。流石にコンビニみたいに店で既製品が大量に売られてて時間が来たら廃棄なんて事は無いが、普通にファミレスのような感覚で店に入って注文すれば料理が来る。内容も馴染みの深い料理が普通にあり特に困ることもない。
もちろん、日本では見れないようなものもある。例えば今日のメインディッシュであるグリフォンのステーキとかがまさにそれで、どの部位なのか解らないが、鶏モモ肉のような味で、しかし弾力と脂身が断然違い、おまけに噛みごたえがあるのに口の中では霜降り肉のように溶けていくとかいうまさにファンタジーである。
この世界ではグリフォンは強敵でその肉も中々手に入るものではないのだが、結構な巨体な為、町の近くで討伐などがあるとこんな風に俺たちでも手が出せるぐらいの値段で出回るらしい。これもこの世界ならではである。
ちなみにこの世界には普通に箸が存在する。何故かは解らないが結構使う人も多いみたいである。もちろんナイフやフォーク、スプーンを使う人のほうが圧倒的に多いが。
「グリフォンとか初めて食ったけど、これマジで美味いな」
「私は初めてでは無いですけど、本当に美味しいです」
「まあ、部位にも寄るんだけど、今回はあたりの部分かな」
「そうなのか?」
「ええ。これはグリフォンの足の部分ね。グリフォンが大きいって言ってもやっぱ希少部位とかあるわけだしね。ちなみに羽の付け根が一番美味しいらしいけど、まあ、かなりの値段がするし、まずこんな場所でお目にかかれることは無いわね」
「へえ、よく知ってるな」
「狩った事あるしね。でも羽の付け根は食べた事ないわ。その分はお金に変えたから」
「一応聞くけどその金は?」
「もちろん、魔剣を買う費用に消えたわ」
「ですよねー」
「でも、凄いです。私も遠目で見たことしかないですけど、グリフォンって凄く強いって聞いた事がありますから」
「もちろん、一人じゃないわよ。グリフォン狩るのに重要なのは遠距離攻撃だから相性がよかったってのもあるし。まあ今の私らでも充分いけると思うけど」
「ユーリさんは凄く強いですしね!」
そんな感じでわいわいと話しながら料理をもりもり食べる俺たち。セラもファーストインパクトがアレだったからとはいえ、最初に比べるとすっかり懐いてくれてるし、こんな風に俺の強さを純粋に褒めてくれたりもする。まあ、何度も言うが頭爆発四散は事故なんだけども。
「でも、実際ユーリってホント強いわよね。特にユーリが構えた時ってホント洗練された一本の刀みたいで、ちょっとだけ触らせてくれない?」
「駄目です」
言ってる最中に興奮するんじゃない。おまけに食事中だぞ。俺が伸ばしてきたアリアの手をにべもなく突っぱねていると、セラもそう言えばという感じで口を開いた。
「アリアさんの言ってる感覚は解らないですけど、でも確かにユーリさんの構えって何ていうか凄く似合ってますよね。しっくりくるというか」
「ああ、まあ、子供の頃からずっと空手やってたからなぁ」
「カラテ? なにそれ? 一子相伝の暗殺拳?」
「何でだよ」
頭の中に有名な漫画のタイトルが浮かぶが、ホントに何でだよ。しかし、何て説明したらいいのか。俺が物心ついた時にはもうやってたから身近すぎて説明が難しいな。
そんな風に俺が頭を悩ませていると、ふと横合いから声をかけられた。
「ちょっといいかな?」
「ん?」
俺たちは三人ともそちらへと振り向く。そこへ居たのは、外見年齢がアリアと同程度の赤髪の美少女だった。セラもアリアももちろん可愛いのだが、それに勝るとも劣らないって感じだ。まあ、この世界平均顔面偏差値が高い印象だけど。俺も結構なイケメンに造られてるし。
何て俺が考えているとその美少女はニコリと笑って言った。
「ボクをキミ達の仲間に入れて欲しいんだ」
それが俺たちの四人目の仲間。フランとの出会いだった。




