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元空手マンの異世界転生録  作者: 間宮緋色
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能力発現

初登場の時のアリアの口調が違いすぎたのでちょっとだけ修正したんじゃよ

 崩れ行く洞穴を走り抜けていた俺の脳裏に、声が聞こえた。

 その声は静かで、だけど心の底からの言葉で、だからなのか周りの轟音も気にならないぐらいはっきりと聞き取れた。

 強くなりたい。私も二人を助けたい。

 そんなセラの言葉と同時に俺の頭に浮かんだのはこの世界の理。それが俺の最初の特殊能力の発現だった。

 魂魄契約ソウルエンゲージ。条件を満たした対象の力を引き上げる能力。条件は二つで、何らかの強い感情を持ちながらの対象への接触と対象の俺への反応修正がプラスな事。

 能力に覚醒するのと同時に即発動する。セラがそう願っているという事はきっと二人はピンチなのだ。ならば一刻の猶予もない。

 そして、崩れ落ちる洞穴から抜け出た俺の目に映ったのは、想像以上の数の倒れ付したゴブリンたちと、アリアの前で今まさに崩れ落ちる最後のゴブリン。そして、二人の無事な姿。

「良かった。二人とも無事だったんだな」

「ええ、セラのおかげでね」

 そう言って持っていた大剣を地面へ突き刺し俺たちへと振り返るアリア。そして、そのままセラをぎゅっと抱きしめた。

「アリアさん!?」

「本当にありがとう、セラ」

「そんな! 私のほうこそいつもありがとうございます!」

 突然のアリアの行動に慌てふためくセラ。よほど混乱しているのかよく解らん返しをしている。アリアはそれがおかしかったのか小さく吹き出して、アリアから離れる。

「悪かったな。危険な目にあわせて」

 そのアリアの様子に、実際かなりのピンチだったのだろう事を読み取り謝罪する。

「いいのよ。そっちも大変だったんでしょ? 洞穴崩れてるし」

「まあ、大変だったけど、崩れたのはなんていうか……」

 まさかやりすぎて崩れたとは言えずに言いよどむ俺。だが、幸いアリアはそれ以上その事を追求せず話題を変えた。

「それにしても、それ、セラの能力なの?」

「え?」

「ほら、そのおでこのとこの奴」

 言われて俺も見てみると確かにセラの額に紋様みたいなものが浮かび上がっていた。見た瞬間気づいたが、契約した相手に浮き出る証みたいなものだ。位置が額なのはあの夜のキスが原因だろう。

「これは、ユーリさんが助けてくれたんです」

 俺だけじゃなくてどうやらセラも俺が能力を使ったことを理解しているらしい。だから、俺はそれに頷いた。

「俺の特殊能力だな。対象の能力を引き上げる。まあ一種の契約みたいなもんだ」

「なるほど。効果だけ聞くと白系の能力みたいね」

 言われて見れば強化は白だったな。まあ、対象の能力が見れたりもするので多分髪の色的にも黒系の能力だろう。銀の部分がまだ未知数だが、目覚めたばっかりだしな。

「へー、でも能力強化は珍しいわね。さっき私を助けてくれたのってセラの能力でしょ」

「はい。治癒能力だけじゃなくて防御もできるようになりました。それに、治癒能力も強くなってるみたいです」

「そうなんだ。じゃあ、私もそれしてもらえれば、Sランクの魔剣とか複製できるようになるんじゃない!?」

 セラの言葉を聞きキラキラと目を輝かせこちらを見るアリア。

 うーむ、戦力強化的に契約したいのは山々なんだが……。何らかの強い感情を持ちながら接触ってのが結構難易度高いんだよな。

「条件があってそう簡単にはいかないんだよ」

「条件って?」

「秘密だ」

 アリアに条件をばらした日には、何されるか解らんしな。恐怖の感情で契約とか嫌だぞ俺は。

「ちぇー。まあ、いいけどさ。それじゃ疲れたし、戻ろうか」

「ああ」

「はい」

 という訳でとりあえずゴブリン剥ぎ取りタイムである。洞穴の中の死体からは回収できないが、表にいたホブゴブリンの討伐でその分以上に報酬がもらえるらしい。なので俺たちは嬉々として耳を剥ぎ取った。これも冒険者ならではの体験だな。

 そんな訳で俺たちの初ゴブリン退治は危ういところもあったが、まあ大成功と言っていい感じで終わったのだった。

 そう言えば、アリアの持っていた大剣。ベリトとか言うらしいが、剣の方はどうでもよく、あの時、アリアはセラに抱きつく前に大剣を地面へと突き刺した。背中に背負うのももどかしいぐらいセラに抱きつきたかったんだろうが、それをあのアリアがした事を考えると、アリアは本当にセラの事が好きなんだろう。

 もちろん指摘はしないが、俺はその事が本当に嬉しくて、今日はみんなで美味い物でも食べるかなんて思ったのだった。

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