襲撃者
混色出すぎな気がするけど、どうしても主要面子はね。ちなみに書いてないですけどイゴールとカガリは二人とも単色です
結局、あれから後も俺たちは結構な時間ダンジョンに潜った訳だが、特に危なくなるような場面はなかった。アリアのスカウト能力はかなりのレベルで、おまけに俺の身体はチート装備レベルである。段々と複雑になっていくマップもセラのおかげで迷うこともなく恐ろしいほどに順調だった。
お宝に関してはセラに渡した短剣レベルのものは出なかったが、持ち帰り可能なポーションなども含めそこそこの収穫はあったので、稼ぎとしては問題ないレベルだ。
後は帰ってアリアが鑑定できなかったものを鑑定してもらいお宝を買い取ってもらって終了である。新しい仲間も出来て、仕事も順調。ちょっと上手く行き過ぎているぐらいだった。
だからというわけじゃないだろうが、既に揺り戻しはすぐそこまで迫ってきていたのだった。
「いい感じに終われたな」
「そうね。私としてはちょっと不本意な結果だったけど」
「そんな簡単に出るもんじゃないんだろ? まあ、でも何回かやってればそのうち出るだろ」
「私はもう頂いたのでその時はアリアさんの番ですね」
「うう、その時のためにお金貯めとかないと……」
そんな感じの会話を交わしながらリオネルへの帰路を歩く俺たち。ダンジョン探索が思いのほか上手くいったから、全員の足取りは軽く、会話も弾む。
時刻は既に夜になりそうで、リオネルにつくのはちょっと遅い時間になりそうだが、特に急ぐ用事もないし、少しのんびりするのもいいだろう。
そんな感じで俺たちは街道を歩いていたわけだが、ふと前方に気配を感じた。数は一人。特に隠れるわけでもなく、こちらへと歩いてきている。特に怪しいというわけではなかった。街道なんだから今までも人とすれ違っているし、今回もその類だろう。
と思いながらも、俺は違和感を感じていた。だから、その所為で俺は少し考え込む。そして、突然会話の止まった俺に二人が不思議そうな顔をする。
「あの、どうしたんですか?」
「え、ああ、何でもない。前から人が来てるからちょっと気になって」
「え? 本当? こんな時間に珍しいわね」
「ああ、そうだ、……な?」
その時、俺はアリアの言葉で違和感の正体に気づいた。ここはもうリオネルの近辺であり、こんな遅い時間にリオネルから出立した人物だから、という訳じゃない。
問題は距離だ。俺は気づいたけど、セラだけではなくアリアですら気づいていないこの距離で、前方から来る人物は俺たちを視認している。そして、その視線は間違いなく俺たちに意識を向けている。
「二人とも、下がれ」
考えすぎだとは思わなかった。何より俺の直感のようなものが告げている。前方から来る奴が只者じゃないってことを。
「?」
俺の言葉に、二人は不思議そうにしながらも素直に下がってくれた。それを確認して臨戦態勢を取る俺。そして、そいつは姿を現した。
「すげぇな。この距離で反応してるのかよ。能力かなんかか?」
現れたのは少年だった。目つきの鋭い、俺と同じ年代ぐらいの少年。その髪色は混色で青と赤。そして、纏う気配はまるで暴風。姿を視認した事ではっきりと解る。こいつはやばい。
「まあ、いいか。金緑の混色の女と黒銀の混色の男。間違いないみたいだし」
どうやら俺とセラのことだ。そして、それを聞いた俺は事の次第を理解した。こっちにきて日が浅い俺だが、心当たりが一つだけある。脳内に蘇るのはセラと初めて出会った時のこと。
「お前、あの奴隷商人の仲間か?」
俺がそう言うとセラもその事に気づき、更に数歩後ろへと後ずさりする。
「仲間って訳じゃないけどな。ただ金で雇われただけさ」
そして男はそれを肯定した。それを見て俺は自分の考えが甘かったことを悟った。
この世界での奴隷商人の地位は複雑だ。国によって認められているところもあれば、犯罪指定されている国もある。そして、ギヤマン商国では、禁止はされていない。
だが、それでも、その内容は契約に縛られており、具体的に言うと、日本で言うところの破産宣告をしたような場合にのみ許されている事で、セラみたいに戦争で生き残った孤児を取り扱う事は禁止されている。
俺はリオネルについた時に、その事を確認したからこそ、大丈夫だという判断をしていた。だが、結果はこのざまである。相手が思った以上にでかい組織なのか、それとも、考え無しなのかは解らないが、今はそれを考えている場合じゃない。
そして、目の前の男を説得する事は不可能だ。先の奴隷に関する扱いの件はこいつも承知しているだろう。その上で金で雇われたと明言している以上、正論では止められない。
だから俺は覚悟を決め、意識を切り替えた。それを見て、男も嬉しそうに笑い、構えを取った。見たことのない構えだが、戦い慣れているのははっきりと解る。
「話が早い奴ってのはいいねぇ。俺はジン。あんたは?」
「ユーリ」
「オーケー。じゃあ、ユーリ……殺し合いを始めようぜ!」
そして、戦闘が開始された。