とりあえずの目的達成
「いやー、悪い悪い。つい押さえがきかなくってさー」
俺の目の前には出されたお茶と、全く悪いと思っていない口調で謝るアリア。セラは俺の横でチラチラとこちらを見ながらお茶を啜っている。
あれから、空手チョップの衝撃で思いっきり舌を噛んでしまったアリアは、その痛みのおかげかようやく冷静になり俺から離れてくれた。結構な血が出てたけど噛み切るところまでは行かなかったのでセラの能力で治せたのが不幸中の幸いだ。
んで、何でアリアがあんな行動に出たかなのだが、理解できないんだがどうもアリアの目には戦闘態勢を取った俺がそれはもう美しい一本の刀に見えたらしく、ウェポンフィリアとしての本領を発揮してしまったとの事。うん、まごう事なき変態である。
本人は最近新しい武器が手に入らず欲求不満だったせいもあると言っていたが本当かどうかは定かでは無い。正直ときめくよりも恐怖が勝っていたので役得などとは全く思えないあたり悲しい事件だった。
「そんで、用件はなんだっけ?」
「うちのパーティにスカウトとして入ってくれって話だ」
いつもの口調で話す俺。もう気を使う気なんて微塵もないです。
「あんたのパーティに!? 入る入る! もう入りますとも!」
俺の言葉に嬉しそうにぶんぶん頷くアリア。わーい、仲間が増えたぞ。なのに何故だろう、不安しかないのは……。
「先に言っておくが今後さっきみたいな事が起こったら容赦なくぶつんでよろしく」
「えー」
「えー、じゃないわ」
「まあ、良いけどさ。じゃあ、その代わりご褒美頂戴」
「ご褒美?」
「そ。私の頑張りに応じて抱きついて良いとか、ぺろぺろして良いとか、一晩中抱き枕になってくれるとか」
「やらん! 絶対にやらん!」
普通なら男はご褒美だとか言い出すのかもしれんが、さっきの所為でもう完全に恐怖しかないんだよ。俺も本当ならアリアの今の言葉にときめきたかったよ。くそっ、何で世界だ。
「というかお前だって、フリーはもう嫌なんだろ?」
「そうなんだけどさー」
さっきも新しい武器が手に入らずに欲求不満だったとか言ってただろうが。
「まあ、いいよ。私もユーリと一緒に冒険できるだけで役得だしね」
よし。交渉は成立だ。紆余曲折あったが目的は達成できたな。と、俺が胸をなでおろしている間に、アリアはセラへと目を向けてとんでもない事を言い出した。
「ごめんね、セラの男に手を出しちゃって」
「ぶふー!」
アリアの言葉に飲んでいたお茶を吹き出すセラ。こいつ、いきなり何てこと言いやがる。
セラがげほごほと咳き込んでる間にアリアは続ける。
「私は身体だけの関係でも全然良いから、そこだけは許してね?」
「ゆるさねーよ! そもそも俺とセラの関係はそんなんじゃないわ!」
とりあえず咳き込んでいるセラの背中をさすりながら、代わりに突っ込みを入れておく。
「あ、そーなの? じゃあ、私にもチャンスはあるってことか」
「ねー……」
いや、ない事もないのか? アリアは見た目だけなら可愛いし、一緒に過ごしていればそういう事も?
なんて俺が一瞬考え込んだその隙をアリアは逃さない。
「おっと、これはホントにいけるんじゃ? セラも頑張らないと駄目だよ?」
「わ、わかりました」
「解るの!?」
まさかのセラの発言に驚く俺。なんだかモテ期到来の予感?
まあ、一人は他にいくあてが無い妹みたいな少女で、一人は刃のついた武器に欲情する変態なんだけどな。おかしいなー、どこで間違ったんだろうか?
そんな風に俺が世を儚んでいる間にも、アリアとセラの会話は続いていたのだが、まあ内容はともかく歳の近い同姓のメンバーが増えたのはいい事だなとか現実逃避をしつつやり過ごす俺なのであった。




