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元空手マンの異世界転生録  作者: 間宮緋色
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空手マン 異世界転生を果たす

 俺の名前は有坂悠里。高校生になりたての将来を有望視されてた空手マンだった。何で過去形なのか。それを話す前にもう少しだけ自己紹介しておこう。

 幼い頃から空手を習っていた俺は強かった。自分で言うのもなんだが才能にあふれ、肉付きも悪くなく、ついでに鍛えるのが大好きだった。

 小学生の頃から全日本大会で優勝し続け、間違いなくメダリストになると言われ、高校生になる頃には向かうところ敵無しだった。だから俺は驕ってしまったのだ。自分は最強であると思春期過ぎても信じてしまったのである。

 その結果、偶然立ち寄ったコンビニで強盗が出た時も取り押さえてやろうと思ってしまったのだ。そして、見事返り討ちにあって現在に至るという訳だ。

 言い訳をさせて貰えるなら刃物程度なら無傷で取り押さえられる自信はあったのだ。なのに拳銃って。なんでそんなもん準備してやる事がコンビニ強盗なんだよ! もっと目標は高く持てよ!

 まあ、そんな訳で、流石の最強空手マンも飛び道具には勝てなかったよ。という具合にものの見事に殺されてしまったのだ。

 そうなんだよ。俺は死んだんだ。頭打ち抜かれて即死。最後に見た犯人の表情を見るに当てるつもりはなく威嚇だったんだろうけど、それなら天井に向けてくれと言いたい。

 んで、何か温かいような寒いようなところを半分寝てるような頭で過ごしてたらいきなり目が覚めたんだ。いやもう、ビックリだね。

 だって、俺が立ってたのはボロボロの廃墟でおまけに、直ぐそばには俺を守るために力を使い果たした二人目の母親が倒れてて、そして、この世界の常識なんかが頭に詰め込まれてた。

 つまり、だ。俺はどうやらやっちまったみたいなのだ。やったというかなったというか。ともかく、最近話題沸騰中の異世界転生をこなしてしまったのだった。あっはっは、泣きたい。


 さて、状況を整理しよう。どうやらここは異世界であり、俺はそこに転生してきたらしい。その割りに体つきが完全に完成しているのは俺が人間じゃないかららしい。

 頭の中にある知識によると黒魔族と呼ばれる種族の魔王の息子として生まれたらしかった。魔族は身体を物質じゃなくアストラルとかいう半物質で構成しているらしく、生まれたその時に身体は完成しているらしい。

 そして、この小さな国の魔王であった俺の母親は、別の魔王に攻め入られこうして滅ぼされてしまったわけだ。だが、母親は俺を守るために最後の力を使い、この世界での知識と共に俺の身体を作り、そこで息絶えたらしかった。

 正直俺が転生体じゃなかったら、ここから復讐の物語でも始まったのかもしれない。だが、残念ながら前世の事を完全に覚えてる俺にはこの人? が母親だという知識はあってもその実感はまるでない。

 本当に申し訳ないのだが、敵討ちとか全く考えられない。まあ、可哀想だとは思うし感謝もないわけじゃないので、とりあえずその辺に転がっていたスコップを持ってきて簡易的なお墓を作ってあげた。どうか安らかに眠って欲しい。

 一段落着いて改めてボロボロになった城から見回してみると、ここが異世界だってのがよく解った。二つ存在する月明かりの元では、完全に滅ぼされた城下町の後が残っており、その先には街灯すら存在していない。

 この身体は人間じゃないため暗視能力があるから夜でも遠くまで見渡す事が出来た。うん、人間じゃなくて良かった。

 かなり先のほうに明かりがいくつか見えているので文明が無いわけでは無いんだろうが、現代社会とは比べるべくもないぐらい未開拓である。まあ、でもこれからこの世界で生きていくのだから適応するしかない。

 残念ながら高校生で死んだ上に勉学の才能はなかったので、文明を発達させようとか思っても無理なのだ。ならば適応を選ぶしかない。まあ、この身体ならそれもかなり楽そうだけど。

 とりあえず、略奪されて殆どからっぽになった城内をお宝探して歩き回る。そうして見つけた僅かながらの資金と、冒険者セットとでも呼ぶべき便利アイテムをまとめ、俺は出発する事にした。

 さらば、母国。もう帰ってくることは無いだろうこの国に、その奥で眠っている第二の母親に一度礼をしてから俺は未知の世界へと旅立ったのだった。

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