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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第6章─賑やかにレッツゴー♪ 街中散策も、楽しいイベントでっす!
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素敵な夫婦と、嫌な噂の真相。モル兄の腹心登場?

新キャラ登場です。

「失礼しま──おや?」


 軽いノックの音に、モル兄がお父さんに目線だけで確認し、入室許可を出しました。

 入って来たのは、狐の獣人さんです。


「あぁ、クラウト。報告書?」


 お父さんや私達の姿に、狐の獣人さんは、片眉を上げる仕草だけで驚きを見せて、軽く会釈をしてくれました。

 モル兄の言葉に何事も無かったかの様に、手にしていた書類の束を、差し出してます。


「ええ。お客様がいらしたのですね」


「あら? 初めてだったかしら? 【銀雷】と、その御家族よ」


 モル兄が書類に目を通しつつ、狐の獣人さんに私達を紹介します。


「ほほぅ。Sランク冒険者の【銀雷】のラズヴェルト様に、その御家族様ですか。

 御初に御目にかかります、副組合長(サブギルドマスター)を務めます、ノルディオ・クラウトと申します。

 宜しければ、ノルドと御呼びください」


 狐の獣人さんは、感心した様に何度か頷き、私達に向き直ると、丁寧に自己紹介をして、胸に手を当てる綺麗なお辞儀を、披露してくれました。

 お父さんも立ち上がって返礼し、お兄さんズやお姉ちゃん達、最後に私を紹介します。


 この人……前に串焼き屋台のガザンさんが言ってた人……かな?

 優しそうな雰囲気で、颯爽とした“出来る人”感が漂ってるけど…。

 ホントは怖い人?


「……そう言えば、街で変な噂を聞いたよ。あれは?」


 お父さんも気になったのか、モル兄に鋭い視線を向けます。


「あぁ。あれは餌よ♪ あの坊っちゃんを釣るために、クラウトが噂を流したの。

 嫌ねぇ~。私が、お馬鹿を側に置くわけ無いじゃない♪

 態々自分の評価を貶めなくても、私の名前を出せば良いのにねぇ。

 まぁ、結果こそ予想外だったけど、見事に釣れたから、クラウトの勝利ね♪」


「ふふ。頭の軽いお坊っちゃまで、良う御座いました。

 ギルド上層部の人員が、自分と同じ思考だと知れば、ギルド内でも、やらかすだろうとは思っていましたが……。

 素晴らしくも、滑稽な決着でしたね。

 私も、その場に居たかったくらいです」


 楽しそうに笑うモル兄の後ろに、黒い物が見える気がします。

 狐の獣人さん──ノルドさんも、同じ様にニコニコ笑顔で、毒舌です。

 ですが、ニコニコ笑顔を引っ込めると、ノルドさんがモル兄に真剣な顔を見せます。


「ギルマス、以前にも申し上げましたが、貴方の名を落とす訳にはいかない以上、適任は私です。

 元AAA(トリプル)ランク冒険者であり、口調は兎も角(・・・・・・)、信頼のおける人格者でもある貴方の名を、あの程度の輩の為に、汚す事はありません。

 貴方には、若き新米冒険者の憧れであり、熟練と呼ばれる冒険者達の相談役であり、ラディオールの冒険者全ての抑止力で居て頂きます。

 それでこそ、此処アヴァロンの秩序が保たれるのですから。

 その為でしたら、私が泥を被るのは、当然なのですよ」


「愛妻家のくせに、奥さんを哀しませるんじゃないわよ……ったく……」


 ノルドさんの真剣な顔と言葉に、モル兄が憮然として余所を向く。


 …ノルドさん、妻帯者なんですか?

 悪い人じゃないのは良かったですが、奥さんのいる人の噂としては、あれは酷いと思います。

 ノルドさんだけでなく、奥さんまでも巻き込まれちゃいますよ!


「妻は、私を支持してくれましたよ? 彼女は、良く出来た優しく芯の強い賢妻です。

 私の自慢の妻は、納得した上で、私を支えてくれてます。

 辛い思いをしてでも、それがこの街、しいてはギルドや私達職員の為になるのならと、笑顔で背中を推してくれました」


「あぁ、うん。ノロケはいいわ。相変わらずねぇ」


 先程までの真剣な表情から一転して、恍惚として奥さんを語るノルドさんは、お父さんに負けず劣らずの愛妻家さんみたいです。

 モル兄が、呆れた様に溜め息をつき、書類を片付ける為に席を立ちました。



 *~*~*~*~*



 ──コンコンコンコンッ。


 ノルドさんも交えて、お茶の続きをしてたら、再びノックの音が響きました。


「どうぞ~」


「失礼します。ギルマス、この決裁──って、あら?」


 モル兄の言葉に、入室してきたのは、またもや狐の獣人さん。

 ただし、今度の獣人さんは、女の人。

 金色の髪と毛並みの可愛らしい女性(ひと)です。

 因みに、ノルドさんは、黒髪に漆黒の毛並みです。


「あら、いいとこに♪」


「おや、ディーナ」


 モル兄とノルドさんが、女の人に笑顔を向けます。

 ノルドさんに、ディーナと呼ばれた女の人は、胸元に書類を抱えたまま、丁寧に頭を下げます。


「お客様がいらしているとは知らず、失礼致します。組合長に至急確認すべき事柄が発生しましたので、お邪魔する事を御許しください」


 入室した直後の驚きを仕舞って、礼を尽くそうとする女の人に、モル兄とノルドさんが苦笑してます。


「あ~、この子達は気にしなくて良いわ。古い友人とその家族よ。

 仕事を優先したからといって、嫌な顔する様な器じゃないから、大丈夫よ~」


「ディーナ、こちらへ。私の愛妻を、皆様に紹介させてください」


 女の人を促して、ノルドさんが私達に紹介してくれます。


「彼女は、カルディアナ。私の妻で、此処アヴァロンで会計職を務めています」


「はじめまして、皆様。ノルディオ・クラウトの妻、カルディアナと申します。

 宜しければ、アナと御呼びください」


 旦那様からの紹介で、ほんの少し堅さはとれたけど、それでも丁寧に自己紹介してくれました。

 何と無く、謙虚で慎ましやかな雰囲気のあるお姉さんです。


 ………。

 あれ?

 お名前、というか、愛称はディーナさんじゃないのかな?

 アナさん?


「う? アにゃ()さん?」


「親しい者は、そう呼びます。“ディーナ”は、夫がつけた愛称なんです」


 疑問のままに聞き返せば、恥ずかしそうにアナさんが教えてくれました。


「成る程。夫婦の間だけの、特別な呼び方なんですね」


 お父さんが微笑ましそうに笑い、場の雰囲気が柔らかく変わります。

 素敵なご夫婦と知り合いになれました♪

 ギルドに来る時の楽しみが、また1つ増えましたね♪

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