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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第6章─賑やかにレッツゴー♪ 街中散策も、楽しいイベントでっす!
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悪者さんの運び方? これは真似してイイモノカシラ?

『ではな。さらばじゃ♪』


 お出掛けの準備が整い、悪者さんの運搬準備も完了しました。

 最終確認を済ませた所で、リム(ドラゴン)がふわりと浮き上がり、お別れの時が来ました。


「リム…」


「またね、リム」


 う~。

 昨夜が楽しかったせいで、お別れが寂しい~。

 泣きますよ? 泣いて良いよね?

 リム~、行っちゃ嫌だ~。

 フォーレお姉ちゃん、サラッとお見送りしないでぇ~。


「おい? ユナ、泣きそうなんだが…」


『? どうした、ユナ?』


「リム~」


 落ち込んでいたら、ラメル姉さんに指摘されました。

 パタパタと翼を動かし、私と目線の合う高さまで降りて来てくれたリムに、ぎゅうっと抱き付きます。

 また会えると知っていても、お別れは寂しいです。


「…ユナの泣き虫は、健在…」


「お別れが寂しくなってしまったかな?」


 リュニベール姉様が呟き、お父さんが優しく頭を撫でてくれます。

 図星を指された恥ずかしさを、リムに額を擦り付けて誤魔化します。


『なんじゃ。そんな事か。ユナ、確かに別れは寂しいが、一時の間じゃ。

 新しい住処(すみか)が出来たら、其方等を招こう。

 待っておれ。

 この場所に負けぬ様な、素晴らしい住処を見付け、自慢してやるのじゃ』


「ん。うん。まってりゅ。また、あえるよね? ずっと、さよならじゃないよね?」


 あっけらかんと笑い飛ばすリムの言葉に、一生懸命気持ちを立て直しました。


『当たり前じゃ。ユナと(われ)は、友達なのじゃろ?

 互いの命が尽きるまで、ずっと、ず~っと、仲良しじゃ♪

 そうじゃ! ユナ、コレをやろう』


 私の腕から抜け出して、リムが魔法を行使しました。

 瞳を閉じたリムの額に、柔らかで暖かな紅色の光が集まります。

 光は小さく小さく収縮し、やがて小さな球体となり、具現化しました。

 私の小指の爪サイズの紅色の石となったそれは、艶やかさと透明感が無ければ、木の実と勘違いしそうです。


『コレはな、我等竜族が使う、通信手段じゃ。人の子等が扱う、魔道具みたいな物じゃ♪

 我がコレを人の子に与えるのは、ユナが初めてじゃぞ。

 ほれ、コレを飲み込め。

 さすれば、何処(どこ)に居ても、互いの位置が分かる様になる。

 暫くして、身体に馴染めば、距離を無視して念話も可能になるぞ♪』


 掌に受け止めた紅色の石を、リムに促されるままに飲み込みます。

 コクリと飲み込んだ筈なのに、喉を固形物が通る違和感がありません。

 身体がふんわりと温かくなった辺りで、何と無く前方が気になる感覚が生まれました。


「? リム? なんかふしぎ……リムがいるの、わかる…」


『かかか。面白かろ? 竜族の同族感知の能力を、少量のみ譲渡したのじゃ。

 我等は幼生であっても、群れはせぬ。

 しかし、僅かなりとも、同族との繋がりはある。

 親子の(えにし)よりも、種族の縁の強い我等じゃ。

 互いの位置くらいは、感知しておるのよ。

 我等は独立する際に、(おさ)より今の様に(ぎょく)を頂く。

 長だけが、我等総ての竜族と繋がっておるのじゃ───…代替わりの際は、面倒じゃがのぉ…』


 楽しげに笑い、リムがクルリと私の周りを回った。


 ん?

 最後が聞き取れなかった…。

 なんて言ったのかな?


『かかか。気にするな。さて、そろそろ我は行く。達者でのぉ。また、会おうぞ♪』


 疑問を浮かべていた私に、楽しげな雰囲気だけを残して、リムは問答無用で旅立ちました。


「ま・た・ね~! げんきでいてね~」


 お父さんの腕の中、遠ざかるリムの背中に、精一杯の気持ちを込めて叫びます。

 声が届いたのか、リムが微かに振り返ったのが分かりました。

 見えるかは分かりませんが、見えると信じて、思いっきり手を振ります。


 ──キュアァァァァァ。


 柔らかくて優しい、ドラゴンの咆哮が響き渡り、泣きそうだった昂った気持ちが、静かに凪いでいきます。

 後に残ったのは、清々しいまでに澄んだ空気。


「さて、私達も出発しようか」


 気持ちを切り替える様に、お父さんが宣言します。

 そうですね。

 こんな空気の中で落ち込むなんて、この雰囲気を作ってくれたリムに、失礼ですね!

 寂しくはありますが、次に会えた時の為にも、笑顔で過ごして、沢山お話しの種を集めましょう♪

 次に会えた時は、夜通しお喋りするのも良いかも知れません。

 楽しみは、まだまだいっぱい有りますね♪



 *~*~*~*~*



「……おとぉさん…いいの? あれ……」


 私はお父さんを振り仰ぎ、後ろを視線で示します。


「ん? 何か問題あるかい?」


 いや…。

 問題しかない気が…。


 レグルスの背中に、お姉ちゃん・私・お父さん・姉さん・姉様の順番で騎乗して、街に向かって移動中です。

 重量オーバーでは? 等と思ってましたが、レグルスはびくともしません。


 レグルスが動けなくなる重さって、どのくらいなのかなぁ。


 まぁ、それは兎も角。

 今、私が気にしているのは、その後ろ。

 お兄さんズを乗せたシリウスです。

 前に乗るエディ兄さんは左手に、後ろに乗るクリスお兄ちゃんは右手に、それぞれ蔦を握ってます。

 その蔦の先には…。

 ───悪者さん達が、阿鼻叫喚の様相を成してます……。


 ………。

 うん。

 地面スレスレを、浮遊したまま、引き摺られるとか、恐怖でしかないよね?

 お父さんてば、容赦無いなぁ。

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