お仕事お疲れ様でした。あとは、楽しくお料理しましょう♪
驚いた!
名称に柵の文字が無いし、個数が40本しかない【お気に入りの庭】が、探していた“柵”だとは思わなかった。
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【お気に入りの庭】 魔道具 耐久値:500
4本で1セットの、15セタ程の杭。
防御結界(上級)を展開する。
魔力を込めることで、どんな場所にも刺せる。
害意が無ければ、出入りは自由。
魔道具【私のお城シリーズ】と同時使用可能。
魔道具【私のお城シリーズ】に組み込むと、柵状に展開し、結界の精度が上がる。
防御効果上昇[+10]
使用方法:任意の場所を、中心に置くように、1本事に魔力を込めて、4隅に設置。設置場所から引き抜けば、結界は解除される。ただし、引き抜く為には、最初に魔力を込めた者の魔力痕が必要。
所有者:ユナ
備考:一般的な冒険者の必需品。わりと安価。女神フェリシアの加護により、結界の精度が上がる。防御効果上昇[×10]
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あ、ホントだ!
……というか、これも、お母さんのおかげで、チート機能だ。
おっと。さっさと終わらせて、ご飯にしよ~っと♪
お腹空いたもん♪
魔導鞄を背負い直し、私の腕より少し細い、長さ15セタ程の杭、魔道具【お気に入りの庭】を、4本まとめて両腕で抱える。
「じゃあこれ、せっちしてくる~」
『僕も行く~♪』『私も参ります』『俺も行こう』
ソファから、危なっかしく滑り降りた私に、心配が膨らんだのか、3匹が一緒に行く事になった。
「ありがとう~♪ じゃあ、みんなで手分けして、せっちしよう! そしたら、早くもどれるもんね」
嬉しくて、満面の笑顔でみんなを見たら、何故かみんな視線を逸らした。
………なんで?
★☆★☆★☆★☆★
─シリウス視点─
………いけません………。
咄嗟に眼を逸らしてしまいました。
私達の主である結愛様は、まだ3歳の幼児ですが、主神フェリシア様によく似た、とても美しい容姿をしています。
ほんのりと朱色を帯びた金の髪は、少しの癖もなく真っ直ぐ。
青みの強い紫の瞳は、朝露に濡れる菫の花を思わせます。
傷ひとつ無い乳白色の肌は、キメ細やかでしっとりした触り心地。
幼児特有の高めの体温が、私達に温かな幸せを与えてくださります。
以前、フェリシア様と母子となる前は、あまり表情が動かない少女だったそうですが、今の結愛様は、とっても表情豊かで、笑顔の愛らしい女の子です。
なので、結愛様の笑顔は、種族を超えて、心臓への破壊力が尋常ではなく、正面から見つめるのは、私達には難しい状態となっています。
ですが、このままでは、結愛様が誤解してしまいます。
悲しませるのは、不本意です。
笑顔を見られる事は、とても嬉しい事だと、伝えねばなりません!
とりあえずは、“頬擦り”で許してくださいませ?
私達の頬擦りは、“親愛の証”なのですから。
★☆★☆★☆★☆★
不思議そうな顔をしているだろう私に、逸らしていた視線を戻し、3匹3様のタイミングで、頬擦りをしてくれる。
何かを誤魔化された気がしなくもないが、とりあえず外に向かおう。
夜になる前に、防御結界を展開しなくちゃ!
現在時刻は、17刻(午後5時)を半分程過ぎたあたり。
夜の鐘である【土の鐘】が鳴る20刻(午後8時)までには、晩ご飯を食べてしまいたい。
それ以上遅くなると、寝落ちる可能性が上がってしまうのです………。
3歳児に、長時間労働は、不向きです!
背が伸びなくなったら、誰が責任を取ってくれるのでせう?
*~*~*~*~*
設置終了~♪
魔道具【お気に入りの庭】は、問題なく発動中です♪
さぁ、夜ご飯の準備です!
お腹ペコです!
4人前を作るのは、大変なのです!
はっ! いけない、いけない。
お腹が空き過ぎて、変なテンションに……。
“それ”は“それ”として、聖獣と云われる3匹は、主の魔力が主食になるので、本来食事はしないんだって。
ただし、食べる事は可能らしいので、“それなら一緒に食べて”と、お願いしてみました♪
1人きりの食事は、私的に寂しいので……。
「クラウディアでの、さいしょのごはん~♪ 何がいいかな~♪」
『ご機嫌だね~♪』
「うん。あんしんあんぜんなおうちに、あったかくてやさしいかぞく。これに、おいしいごはんがあれば、さいこうの幸せだもん。ごきげんにもなるよ~♪」
軽く節を付けて、歌うように晩御飯のメニューを考えてたら、アルタイルが近付いて来ました。
それまで本来の姿だったけど、私の側に来たと同時に、縮小化して肩に止まります。
「アルタイルは何がいい?」
『ん? 晩御飯~? なら、肉かな~?』
「あはは。お肉かぁ。…“かたまり”じゃなくても、だいじょうぶ?」
『ん? うん。勿論♪』
不思議そうに首を傾げるアルタイルに、微笑ましくなりつつ、晩御飯のメニューが浮かんだ。
「よ~しっ! ハンバーグにけってい♪」
*~*~*~*~*
さてさて、キッチンに到着♪
ここで、問題にぶつかった。
うん。そりゃそうだよね。
調理道具や食器が、大人用・子供用どちらも揃っているからって、キッチン自体は、大人サイズに決まってます。
いや、子供用キッチンなんてのも、前の世界に在りましたが、需要は……。
一応、踏み台はあるので、ちょっと怖いけど、チャレンジあるのみ!
……………。
凄~い♪
結果から言えば、この踏み台、魔力を込めると、指定範囲内に、高さ調節可能な、不可視の床を作り出す魔道具でした。
踏み台に触ったとたんに、スキル【解析】が発動。
説明通りに、魔力を込めてから、踏み台に乗ったら、エレベーターに乗ったみたいな、身体が浮き上がる感覚があって、下を見たら足と台の間に空間がアリマシタ……。
魔道具って便利だねぇ。
………取り敢えず、手を洗おう。
冷蔵庫(魔道具)の中身を確認。
わぁ~おっ♪ 大量………。
今日の晩御飯は、“ハンバーグ”がメインの予定。
なので、必要な食材を発掘しましょう!
クラウディアの食材は、前の世界の食材とほとんど同じ。
鮮度が良い分、クラウディアの方が、野菜の味は濃いし、お肉やお魚も独特の臭みが薄い。
ハーブやスパイスは、薫りが強いし、乳製品も濃厚みたい。
スキルも、最上位スキルの【主婦】が、最高練度の“神業”まで、上限達成されてるから、前に食べてた味プラスアルファで、美味しく作れる筈♪
え~と。豚肉、牛肉、玉葱、卵。
牛乳は……使わなくても大丈夫。
チーズは……乗せたのも作ろう♪
バターもゲット♪
サラダ用の新鮮葉物野菜各種。
根菜類は、冷蔵庫横の木箱(魔道具)の中に、新鮮なの(今回は使わない)があった。
あとは、パン粉と調味料♪
冷蔵庫の向かいに、同じくらいの大きさの調味棚がある。
上の方に、籠に入ったパンがあった。
食パン、ロールパン、クロワッサン。
ベーグルや菓子パンもあるよ?
取り敢えず、パン粉は食パンを擦り卸して、生パン粉にしよう。
お塩と、胡椒見っけ♪
ハーブやスパイスなんかも、小瓶(魔道具)に入って並んでる。
ぁ、ナツメグも発見♪
暗所保存用かな? 下半分は開き戸付きだ。
お~♪ 中濃ソースやトマトケチャップも、発見!
あれ? この辺の調味料………。
ペロ………ッ!?
手作りだ! 前に作ってた、手作りの味に(より、美味しいけど…)凄く近い!
中濃ソースも、トマトケチャップも、マヨネーズまで………。他のも!?
ぁ、お米もある!
薄力粉や強力粉なんかの粉類は、こっちにあったんだ♪
と、これで一通りは揃ったかな?
おっと、オイルや料理酒はと……。
ぁ、ここかな?
調味棚の横に、床下収納発見♪
おっ! あった、あった。
ではでは♪ 調理開始と行きましょう!
まずは、ご飯♪
──ざあぁぁぁ
──じゃっく じゃっく じゃっく じゃっく
白米は、使い勝手が良いよね。
工夫次第で、いろいろなお料理に変身してくれる、我らの味方♪
あ、炊飯器(魔道具)発見!
おおっ! 凄い。炊き上がりの加減が出来る!
よしよし。君に頑張ってもらおう♪
お次は、下拵え。
サラダ用の野菜をカット。
水に晒して、そのまま放置。
お肉はどちらも、同量をミンチにして、パン粉も作る。
玉葱はみじん切り、サラダ油で飴色になるまで炒めて、一旦冷ます。
メインは宣言通り、ハンバーグ。
大きなボウルに、豚肉と牛肉の合い挽きミンチと、飴色玉葱のみじん切り、繋ぎの卵と、作ったばかりの生パン粉、お塩に胡椒にナツメグも入れて、粘りけが出るまで、しっかり混ぜてと♪
「ん~しょ。ん~しょ♪」
──ねっち ねっち ねっち ねっち
混ぜるだけでも、3歳児には重労働だけど、これはこれで、楽しいお遊び感覚が♪
タネが出来たら、今度は成形。
ここで再び、問題が……。
私のちっちゃい手だと、普通サイズは無理ダヨネ~。
まぁ、お弁当サイズでもいっか!
──ぴたんっ ぴたんっ ぴたんっ
「ん~、1人3つで足りるかな? わたしの分は足りるけど、みんなの分は5こずつあった方がいいかな?」
焼き割れ防止に、両手で空気抜きのキャッチボール。
数を考えながら、タネを成形していきます。
「まぁ、いいか。れいぞうこでほぞんすれば……。ぁ、そっか。【無限収納】にしまえばいいのか」
一度、手を洗い直して、ハンバーグを焼きます。
3分の1は、チーズを乗せて、焼き上がれば完成だ♪
──ボッ
──ジュワァァア ジュワァァア
お皿はワンプレートで、子供用のカトラリーを一揃い♪
ランチマットもいりますね。
3匹用の大きめで、ちょっと浅めの深皿も。
3匹用の専用食器も、いろんな種類が揃ってた。
予備のお皿は、大人用を使おう♪
2枚いるよね♪
さて、ソース作りに掛かります!
赤ワインと中濃ソース、ケチャップにバターも一欠片。
──くつ くつ くつ
煮詰めたソースを、残りのハンバーグに絡めて、出来上がりっと♪
お皿に盛り付けて、余剰分は【無限収納】へ。
自分達のは、ワゴンに乗せて、そのままダイニングテーブルに運びます。
さあ、ご飯にしましょ~♪