ドラゴンさんを救え!? みっしょん、こんぷりぃと♪
───キュォォォォォォン。
『ユナ、方向は?』
「あっち!」
レグルスの背中で、声の聞こえる方向を確認されて、お日様が沈む方角を指示します。
声は言葉になっていないのに、「放して」「痛い」「助けて」と、私の心に直接響く感情の様な波があります。
(今、行くから……直ぐ、行くから……)
心が助けなきゃという思いで、いっぱいになっていく。
長い様で、ほんの僅かな時間を、焦れる気持ちを抑えながら、私達は一気に駆け抜けた。
*~*~*~*~*
─キュァァァァァ。
間近で聞こえた鳴き声に、レグルスが急停止して、辺りを探ります。
?
洞窟?
少し開けた場所に出る直前、繁みや藪に身を潜めて、声が聞こえてくる洞窟? の様な物の様子を窺います。
私達の視線の先には、岩と土で出来た“かまくら”みたいな洞穴が……。
フォーレお姉ちゃんの言うドラゴンの声は、そこから響いてきます。
相変わらず、甲高い胸に迫る様な声。
───キュォォォォォォン。
『いるな…。ドラゴンの幼生体だ』
『なんという事を……』
『うわぁ~。何してくれてるのかなぁ~? 潰して良い? 潰して良いよねぇ?』
魔法でかまくらの中を探っていたレグルス達が、鳴き声の主の所在と状態を、確認したみたい。
シリウスは絶句し、アルタイルは怒り心頭。
唯一冷静なレグルスからも、魔力が陽炎の様に薄く揺らいで立ち上っています。
3匹とも、殺る気満々ですね…。
いや、私もちょっと……怒りの限界値が振り切れそうな感じですけどね?
最初、私に及ぶ危険性から、近付くのを反対してたお姉ちゃんまでも、表情が抜け落ちる程、探知した状況に怒気を隠せずにいますよ。
「まさか、ドラゴンの巣穴に入り込むお馬鹿さんが居るとは、思わなかったわ」
「どらごんのすあな?」
『さよう。あの洞穴は、竜族が造る巣穴の入り口だ』
『中は、そう複雑な造りではなく、思いの外広い空間が造られている筈です』
『ドラゴンの巣って、広いんだよ♪』
「取り敢えず、状況は把握出来たわ。
あの巣穴の主が、幼生体であることを知って、お馬鹿さんな盗賊か、冒険者崩れが、売却目的で捕獲しに来てるのね。
竜族全体を敵に回す覚悟は、出来てるのかしらね?」
洞穴について、それぞれが教えてくれている間に、お姉ちゃんの周囲の温度が、ゆっくりと低下していってます。
あ~。
お母さんや、お父さん、リュニベール姉様と同じ怒り方ですね♪
にっこり笑顔で、お目めだけ笑ってません。
周りの空気が、冷たく重くなっていく様は、“肝が冷える”という感覚を、如実に体感させてくれます。
お姉ちゃん……恐い……。
でも、笑顔が素敵で、格好良いです♪
物語の英雄ってこんな感じでしょうか?
え? 違う?
まぁ、兎も角。
さっさとドラゴンさんを助けましょう♪
お姉ちゃん曰く、ドラゴンさんを捕まえてるのは、悪い人認定で大丈夫らしいですから。
ドラゴンさん、怪我とかしてないといいんだけど……。
*~*~*~*~*
───ガヅッッ。
「ぐっ!? てめぇら、何しやがった!」
──ゴッ、ドスッ、バシッ。
「ぐあっ」「おぐっ」「ぶほっ」
洞穴の中では、大人の男の人の物らしき声と、戦闘音らしき物が、途切れ途切れに聞こえてきます。
ドラゴンさんの救援の声は、もうありません。
只今、私は洞穴の外で、オロオロ、ソワソワ、挙動不審な小動物と化しています。
だって!
レグルス達ってば、私とお姉ちゃんを置いて、洞穴へと突入しちゃったんです!
置いてくなんて、酷いです!
レグルス達の後に続こうとしたら、お姉ちゃんに羽交い締めにされちゃうし…。
うわぁぁん、ドラゴンさ~ん、無事ですかぁ。
*~*~*~*~*
暫くして、全部の音が止みました。
──ズ………ズズッ……ズリズリッ。
─ドサドサッ、ベチョッ、ボテッ。
………。
……。
…。
? ヒト? 人ですか?
なんか、物凄くズタボロの物体を、レグルス達が洞穴の外へと、引き摺って来ました。
私とお姉ちゃんの目の前には、ズタボロな人族の小山が出来た。
え~と、にぃ、しぃ──8人?
洋服は、あちこち破け、所々肌色や鈍い赤色が、覗いてます。
誰1人意識が無く、3匹が揃って容赦しなかったのが、丸分かりです。
運ぶのも嫌々だったのか、エディお兄ちゃん達にする配慮が、全くされてません。
うやぁ~。
あちこち傷だらけだぁ~。
いや、正確には、引き摺って来たのは、レグルスとアルタイルで、シリウスはゆっくり優雅に戻って来ましたよ?
「あ、どらごんしゃん!」
シリウスの背中に、深紅のドラゴンさんが鎮座してました。
ちっこいです。
アルタイルの半分くらい?
まぁ、それでも、私と同じくらいの大きさな訳ですが…。
私の知ってるドラゴンさんは、もっと大きい生き物だったんですけど…。
─キュゥイッ。
「!? どこもケガしてにゃい? みんなも、だいじょうぶ?」
嬉しそうな鳴き声に安堵して、洞穴へと飛び込んだ3匹諸共、安否確認を開始。
あちこちをペタペタ触りながら、怪我の有無を確認しますよ。
魔法で確認すれば早いけど、体温を直に感じられる触診の方が、私的には安心出来ます。
*~*~*~*~*
「ん、よっと。完成~ぃ♪」
触診を終えると、私がスルーした、ズタボロな小山を、お姉ちゃんが魔法で簀巻きにしてました。
大きなミノムシさんが、8匹。8体?
え~と、どうしよう…。
運ぶ?
運ぶの? コレ…。
巨大なミノムシさんを前に、途方に暮れたのは、仕方が無いと思います。
戦闘シーンを書くの…苦手です…。
(;¬_¬)
平和主義なユナちゃん達に感謝!
作者が苦手シーンを回避しても、ユナちゃんに荒事を見せたがらない、レグルス達のせいに出来る~♪
ヤッタネ♪ (o≧▽゜)o
………。
ヘタレ作者で、スミマセン。
m(。≧Д≦。)m