一難去って、また一難? いえいえ、今度は救助要請ですか!?
携帯の調子がおかしい……。
突如フリーズして、勝手に再起動。
壊れた?
「それにしても、変ねぇ」
後で叱られる覚悟を決めたのか、フォーレお姉ちゃんは優雅にお茶を飲みながら、顔をしかめて小さく呟いた。
「? ねぇね? なにがへん?」
お茶の淹れ方が不味かったのかと焦りつつ、お姉ちゃんに聞き返す。
呟きを拾われるとは思ってなかったのか、一瞬驚いた後で、お姉ちゃんが呟きの答えを教えてくれました。
「ボルヴァルディの森なら兎も角、リシャの森にアンデッドが出現した事よ。
本来、リシャの森には、脅威になり得る魔物は、生息してないはずなの。
それなのに、食屍鬼が現れた。しかも、魔獣化までしてたし……」
『そう言われれば、そうさな』
『確かに。ボルヴァルディの森は、魔素濃度が高く、魔素溜まりが無数に存在しますから、魔獣化も頻繁ですが、リシャの森は……』
『ん~。魔素の流れも正常だと思うしねぇ。もう1回見回りする?』
お姉ちゃんの疑問に、レグルス達も同意します。
確かに。
リシャの森は、お母さんがお気に入りだと公言するほど、魔素の流れが安定しています。
ラメル姉さんや、リュニベール姉様に連れられて、あちこちを見ましたが、リシャの森ほど魔素の安定した場所は、近隣にはありません。
「ん~、いいや。ベルやラルに調べて貰うわ。私も確認しなきゃ駄目そうだしね」
アルタイルの提案を流して、仕事が増えそうだと落ち込むお姉ちゃんに、何か少しでも力になりたくて、お姉ちゃんの指先を握ってみる。
「ねぇねたち、おちごとたいへんしょう……。わたち、おてちゅだいできりゅ?」
「~~~っ、ユナ! ユナ、ユナ、有難う♪
大丈夫よ! 心配しないで。お姉ちゃん頑張っちゃうから!」
何かに感動したかの様に、お姉ちゃんがぎゅうっと抱き締めてくれます。
だけど、返されたのは、お手伝いの拒否と、「無理でもなんとかして見せる」とでも言いたげな、頑張る宣言。
………。
お姉ちゃん?
無理して欲しくないから、お手伝いしたいのよ?
いつも頑張ってお仕事してるの聞いてるから、必要以上に頑張り過ぎないで欲しいのに……。
「むぅ。ムリしちゃ、めっよ?」
『……ユナ、手伝いたいのなら、称号を使ってみてはどうだ?』
私の気持ちが伝わってなさそうな対応に、ちょっとだけ不機嫌気味に拗ねてみれば、レグルスが控え目に提案してくれました。
『あぁ、そうですね。【世界の愛し子】の特殊効果……』
『あ~。多少なりとも、お手伝いにはなるかもね~♪』
シリウスや、アルタイルも後押ししてくれます。
称号【世界の愛し子】の特殊効果を使う?
あぁ、そうだ。
有りましたね、特殊効果。
確か──
───キュォォォォォォン。
「う?」
「今のって…」
微かに聞こえた、頭に直接響く様な、甲高い動物の鳴き声みたいな物に、思考をバッサリ切り捨てられました。
なんでしょう?
なんだか、凄く辛そうな…。
────キュイィィィィィィッ。
「! …ないてりゅ……。ねぇね! だれか、ないてりゅ!」
「この声……。!? まさか!?」
聞こえているのは、お姉ちゃんとわたしだけなのか、焦る私とお姉ちゃんを余所に、レグルス達は不思議そうにしてますね。
『如何した?』『どうなさいました?』『どうしたの?』
「レグルしゅ! もりのどっかで、だりぇか、ないてりゅ!」
3匹に確認されて、焦りながらも、助けたい思いが強くなる。
だって、本当に辛そうなんです!
『? よく分からぬが、ユナはその泣いている誰かを助けたいのか?』
「ん!」
レグルスに再び確認されて、力いっぱい頷きます。
『───良かろう。助けられるかは分からぬが、様子を探る事は出来よう。さっさと片付けて、俺に乗れ』
僅かに逡巡した後、レグルスが私の願いを承諾してくれました。
はっきり「助ける」とは言ってくれませんでしたが、様子を探るだけでも、助けられる確率は上がります。
急いで片付けなきゃ!
「ちょっ、待ちなさい! 声の主が誰だか分かってるの!?」
わたわたとお茶の後片付けを始めたら、お姉ちゃんが慌てて止めてきます。
?
お姉ちゃんは、あの辛そうな声が、誰の物か分かったのかな?
なんで慌ててるの?
不思議に思いながらも、お片付けの手は止めません。
【無限収納】にぽいぽい片付けていきます。
目についた物から、どんどん触ります。
触って片付けたいと考えるだけですから、簡単かんたん♪
「あれはドラゴンの声よ!? それも、多分幼生体!
下手を打てば、ユナが危険に晒されちゃうわ! 絶対駄目!!」
私の心配をしてくれてたんだね。
嬉しいな。
優しくて大好きなフォーレお姉ちゃん。
心配してもらえるのは、とっても幸せな事だけど……。
「……ねぇね……め? レグルスちゃちや、ねぇねがいっちょでも、め?」
ごめんなさい。
お姉ちゃんに心配を掛けるって分かってても、あんなに辛そうな声を聞いちゃったら……。
偽善だとしても、聞いたり、見たりしちゃったら、出来る限りの最善を尽くしたくなるのは、人間としての本能と良心だって、私は思うもん。
助けられるか分からなくても、せめて様子だけでも確認したいよ。
よし。
片付いた!
突然投稿が止まるかも知れません。
ひとまず先に、謝罪を。
一身上の都合で、携帯ショップに行くのに、時間がかかりそうな状態です。
今まで通り、7話前後を投稿後、早々に行ければとは思ってますが、それ以前に投稿が止まったり、投稿再開予定日までに戻れない可能性があります。
その場合は、「あぁ、携帯が壊れたんだな」と、寛大な気持ちでお待ち頂ければと思います。
大変、申し訳ありません。