取り敢えず……私の心配と、覚悟を返してください。
峠岬(作者)にシリアスは向いてない…。
いや、描けないのか?
相変わらず、ユナちゃん達が、勝手に暴走します。
いや…ユナちゃんていうか、その周り?
………。
え……と。
現実逃避もあってか、少し前のリュニベール姉様との実地勉強会の内容が頭を過っている間に、目前の状況が何やら凄いことに…。
結論から言えば、脅威は去った?
いえ、正確には、食屍鬼はまだ近くにいます。
ですが、状況としては、安全の確保は出来たのだと思います…。
目の前では、旋風の強化版を丸めた風の大玉を、レグルス、アルタイル、シリウスの順に、立体的な三角形を作るように、高速パスを廻して遊んでますから。
………。
脅威って……何でしょうね。
出来ることなら、ドウシテコウナッタと突っ込みたい。
私が見たものを、詳細に語るなら、最初に動いたのは、レグルスでした。
少し強目に魔力を放出して、食屍鬼へと打ち当て、魔力放出と同時に、吹き飛ばした食屍鬼の先回りをして、飛んで来た食屍鬼をキャッチ。
この間のレグルスの動きは、目視出来ないほど速かったです。
次いで、体勢が完全に崩れていた食屍鬼を、流れ作業の様に風の膜で囲い込み、食屍鬼の入った風の大玉を作ったかと思えば、それを猫パンチ…もとい、天虎パンチで空高くへと打ち上げました。
風の精霊さん達が、面白がって力を貸していたので、思いの外勢い良く上昇した風玉を、勢いを殺さずにアルタイルが爪でキャッチ。
その勢いを利用して、空中で縦回転したかと思ったら、地上に向けて弾丸の如く打ち出しました。
………。
アルタイル、それは鳥さんの動きではないと思いますよ?
怪我とかしないんでしょうか…。
あり得ない勢いで、直線落下してきた風玉を、今度はシリウスが、地面に着くギリギリで、尻尾で真横に弾きました。
痛くないのかと思えば、尻尾は魔力で硬質化させているらしく、淡い水色に輝いています。
弾かれて勢いを増す風玉は、再びレグルスの元へと戻った途端、レグルスの天虎パンチにより、再度上空へ。
これを延々と繰り返しているんです…。
あの……その風玉……中に食屍鬼が入って……。
脅威って言われてるはずの……魔獣化した魔物さん……。
………。
……。
…。
まぁ、いっかぁ。
「ねぇね…お茶する?」
「…そうね。あっちは楽しそうだし、私達も楽しみましょうか。
元々、今日は遊びに来たのだし」
レグルス達の行動に、毒気を抜かれ、緊張感が何処かへ吹っ飛びましたね。
思わずフォーレお姉ちゃんを見上げて、少しずれているかも知れない提案をしちゃいましたよ。
弛緩した空気に、ちっちゃい動物さん達も、再び私やフォーレお姉ちゃんに寄って来ます。
気を失ってた子達も、意識を取り戻して、私の腕から抜け出し始めました。
『『『あ』』』
「「え?」」
足元のちっちゃい動物さん達に気を取られていたら、3匹の唖然とした声がしました。
何かあったのかと、お姉ちゃんと同時に振り向けば……。
!?
ふぎゃっ!?
風玉がこっち来るぅ~~~!?
焦って固まる私の目の前に、赤と黒のふわりとした壁……じゃなくて、お姉ちゃんの背中が現れた。
と、同時に……。
「ていっ!」
『お~♪ フォーレ様、ナイスバッティング♪』
お姉ちゃんが身体全体を使った、見事なフルスイングで、向かって来た風玉を、お花畑の向こうの森の上空へと弾き(打ち?)返した。
お姉ちゃんの手には、いつの間にか、御伽話の魔法使いが持つような、武骨で粗削りな杖が握られていて、よく見れば、魔力で強化しているのか、身体も杖もうっすらと淡い色の光に包まれています。
アルタイルの合の手に、お姉ちゃんがサムズアップしてますね。
(クラウディアにも、サムズアップってあったんだなぁ)
なんて、森の向こうに消え行く食屍鬼入りの風玉を見送りながら、どうでもよい様な事が、頭を過りました。
『ごめんよ~。目測を間違えちゃったよ』
『すまん。勢いが付き過ぎていたな』
『申し訳ありません。お怪我はありませんか?』
「大丈夫よ♪ あのくらいなら、理の範囲内での能力行使で、充分対処出来るもの♪
さ、お茶にしましょう」
どうやら、レグルスが打ち返しの加減を誤り、アルタイルも軌道修正に失敗したので、風玉がシリウスを大きく迂回して、私達に向かって来たみたいです。
連繋が崩れたせいで、シリウスの反応速度以上の加速が起きちゃったんですねぇ。
でも、咄嗟の判断が出来るお姉ちゃんは、やっぱり凄くて格好良いです♪
フォーレお姉ちゃん、大好き♪
*~*~*~*~*
「あい、ねぇね。どうじょ」
「ありがとう♪」
食屍鬼も片付いて、一段落が着いたので、本日二度目のお茶にしましょう♪
片付け忘れていたラグマットに座り直し、再びお茶を淹れた。
今度は雪花茶。
クラウディア独特のお茶で、柔らかなお花の香りのお茶です。
砂糖を入れなくても、まろやかな甘味のあるお茶で、リラックス作用のある薬草茶でもあります。
お茶菓子には、甘い物よりしょっぱい物を用意すべきかな?
クラッカーやプレッツェルでいいかな?
ディップソースを幾つか用意して、新鮮野菜や、ハムにチーズ、果物も一口大に切って、彩り良くお皿に盛り付けてあります。
好みの物を乗せて食べれば、楽しいですよね♪
甘い物は、ジャムとクリームも、数種類用意してありますから、問題無しです。
………。
ハッ!
また、やっちゃった…。
加減を考えようよ、私!?
今日は、夜ご飯は抜くべきかしら?
お茶菓子だけで、再びお腹がいっぱいになりそうな気が……。
軽食を用意したのは、完全ナル失敗デスネ。
「どうしたの?」
「ねぇね…どうちよう…。おにゃかイッパイで、ごはんがたべらんにゃい……」
「あ…」
軽食を見つめて固まった私を、お姉ちゃんが心配してくれましたが、私が固まった理由を聞けば、お姉ちゃんまで固まりました。
本当にどうしよう…。
お昼に夜ご飯…2度もご飯よりお茶菓子なんて……。
お父さんに怒られちゃいますよね?
皆、クラウディア最強に近いからね~。
シリアスさんは、どっかにトンズラしちゃうみたいです…。
そして、ユナちゃんは、深く考えるのが苦手らしい。
峠岬(作者)もですけどね?
(^ー^;A