「いただきます」と私達の設定? 難しいお話よりも、クラウディアの初カレーです♪
「できたよ~、はこんで~」
こんがり焼き上がったハンバーグカレードリアを、ワゴンに乗せて、お願いします。
1人分ずつ用意したので、いっぱい焼きましたよ♪
焼き上がった分から、冷めないように、冷蔵庫に突っ込みました♪
最初は、シリウスに教えられても、“冷蔵庫に突っ込んだら、冷めちゃうよね!?”なんて思いましたが、そこはやっぱり魔道具さん。
冷やすだけでなく、入れる場所によって、保冷保温や時間停止、熟成や腐敗防止なんか──これって冷蔵庫?──の効果が付与されているのです!
超高性能!? とか思ったら、お母さんの加護の効果で、強化されてました……。
そういえば、お母さんの加護って、魔道具性能の強化効果がありましたね。
お家の利便性の高さも、お母さんの加護のおかげですしね。
………。
お母さんて、やっぱり過保護?
まぁ、取り敢えず、出来上がったお料理は、冷蔵庫──形は冷蔵庫だから、冷蔵庫と呼びます!──にポイです。
おかわり分も考えて、大量に作りましたよ♪
ふふ~ん、偉い? 偉い?
「──ん。完成♪ スープも出来たよ~」
「──…ん。出来た…」
お父さんとベル姉様が、スープに隠し味を足して、最後の味見のあとで、嬉しそうにお互いの笑顔を認め、頷きあってます。
スープストックを使用した、あっさりオニオンスープをお願いしたので、これも食べるのが楽しみです♪
バゲットもあるので、パングラタンスープにしても美味しいですよね。
多少カロリーは気になりますが、チーズを削っておきましょう♪
カロリーは消費すれば大丈夫!
エネルギーを発散させれば、カロリーも消費されるはず。
子供の新陳代謝の高さ──燃費の悪さ?──は伊達じゃ無いのです!
沢山食べても、ちょっと運動するだけで、大分燃焼されると思うのですよ♪
と、またお話しが跳びましたね。
まぁ、兎も角、お料理は全て完成です。
お父さんは、自分からお手伝いを言い出したくらいなので、割りと器用にお料理を進めてましたが、作り方が思いの外豪快でした。
前の世界で云う所の“ザ・漢の料理”って感じですね。
旅の間は、お父さんがご飯作りを担当してたんだって。
ベル姉様がデザートを作り終えたあと、私ではなくお父さんのお手伝いに回ったのは、大雑把過ぎて多少不安を感じたのかな?
まぁ、無事に出来上がって良かったです♪
「じゃあ、みんなで“いただきます”だね♪」
「「? いただきます?」」
席に着いて、皆を見回し、宣言したら、エディさんとクリスさんが、聞いたことの無い言葉に、不思議そうに首を傾げました。
「ははは。いただきますと云うのはね──」
お父さんが、私がレグルス達にしたのと同じ説明を、楽しそうにしています。
旅の間は、クラウディアでは当たり前の“食前の祈り”をしていたそうですが、お父さんは「いただきます」を“隠れ郷のしきたり”だと、お兄さん達に教えました。
? 隠れ郷?
何処の事でしょう?
不思議に思いましたが、疑問の答えはシリウスとレグルスが(念話で)くれました。
クラウディアでは、転移の魔道具があるとはいえ、“界渡りの転移魔法”は、創造神であるお母さんだけが使える“特殊な魔法”のため、私の転移事情はクラウディアの民には、報せない方が良いそうです。
そのため、私がいた前の世界の事を、隠れ郷と呼ぶことにしたらしいです。
もともと、神域のことを隠れ郷と呼んでいて、お父さん自身がその郷の出身と云うことになってるんだって。
勿論、お母さんもその隠れ郷の出身で、お父さんとは幼馴染み。
お母さんは“神降ろしの姫巫女”と呼ばれる、特別な存在なため、本来なら郷から出られない所を、転移の魔道具を使用し、1年を通して5回だけ、たった4時間だけ、郷からの外出が許されてるっていう“設定”らしいです。
ぁ、郷の中なら、自由に過ごせるんだって。
姫巫女と呼ばれる存在は、軟禁生活を余儀無くされますが、婚姻や出産は許されていて、お父さんとお母さんは、幼馴染み同士で結婚した、ラブラブ夫婦なんだって♪
お姉ちゃん達も、能力の高さから、次代の姫巫女候補とされていて、半月に1度1週間だけしか外出が許されない、特殊な環境に措かれている事にしてあるみたい。
私とお父さんは、特に制限がないため、家族にいろんな場所や物を見せられる様に、郷の外に出て生活をしていくつもりなんだって。
これが、いずれ旅をする理由になるみたいです。
転移の魔道具が、魔道具に魔力を込めた相手の元──半径1キトラ以内──へと、空間を繋げる物なため、こんな“設定”が用意されたらしいです。
つまり、私やお父さんの魔力を込めた転移の魔道具を使って、お母さんやお姉ちゃん達が、郷の外に出歩ける形をとっているって事なんですね。
む~。
難しいお話ですね~。
まぁ、何と無く理解しておけば大丈夫でしょう!
それよりも、お腹空きました!
ご飯が冷めちゃうよ~。
「──って、訳だから、家にいる間は、食前の祈りじゃなくて、私達の挨拶に付き合って」
あ、丁度良くお父さんの説明も終わりましたね♪
「じゃあ、冷める前にいただこう」
「「「「「いただきます」」」」」
『『『いただきます♪』』』
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やっぱりカレーは美味しいです♪
───ハフハフッ。はむはむ。ゴックン。はふ~ぅ。
──ゴクゴクゴク。ぷはぁ~♪
食欲に委せて、勢い良く食べます!
食欲を誘う香りと、スパイスの効いた複雑な味わい。
カレー味のメニューって、どうしてこうも止まらなくなるのでしょう?
美味し~ぃ♪
辛い物を食べると、喉が渇くね♪
お水が美味しい。
普通のお水でも良かったんだけど、今日のお水はハーブ水。
レモングラスとアップルミントのおかげで、さっぱり爽やか気分爽快です♪
エディさんは掻き込む様に、クリスさんはゆったり味わう様にと、食べ方に違いはあれど、食べる速度はどっちも早い。
お父さんとベル姉様も、美味しそうに食べて、私と目が合うと、にっこり満面の笑顔をくれます。
どうやら気に入ってくれたみたいですね♪
良かった、良かった♪
ぁ、レグルスとシリウスの口回りの毛が……。
お風呂で念入りに洗いましょう♪
いえ、その前に魔法で落とすべき?