仲直り後の家族団欒♪ 夜のご飯は何にしよう?
「いや~、それにしても、痛かった…。
これでも、【物理攻撃耐性】スキルは、持ってるんだけどなぁ…」
リビングの一人掛けソファに座って、背凭れに身体を預けた状態で、お父さんがぼやいてます。
天井に向けられたお顔の上、おでこと目元を覆う様に、冷やした手拭いが。
お鼻には、絆創膏代わりの、湿潤保護布がペタン。
『不慮の事故の様なものでしたから、“攻撃”と捉えられなかったのでは?』
お父さんの疑問混じりの呟きに、お気に入りの暖炉前から、レグルスが予測を告げます。
「あぁ、そっかぁ。確かに。
勢い良く開けた扉が、“静止せずに戻ってきた”だけだしね。
扉を開けた“相手に攻撃意思が無く”、私自身もそれを理解しているから、“攻撃されたと思わなかった”からか…。
成る程、それじゃぁ、【物理攻撃耐性】の効果は見込めないよね」
『たぶんですが、【物理耐性】スキルであれば、衝撃による痛覚も、緩和か中和が成されたはずですよ?』
『あ~、だね♪ まぁ、【物理耐性】スキルの良し悪しも、錬度によるけどね~♪』
お父さんとシリウス達が、技能効果について検討してます。
クラウディアでは、割りと細かく分かれてるので、判断が難しいらしいです。
私の場合は、お母さんのおかげで、ちょっとしたことでスキルが増える上に、取得した途端に上限到達するから、あまり理解が出来てません。
………。
いいのかなぁ…この状態……。
恵まれ過ぎてて、危機管理能力が低下しそうな気がします。
「…てか、あんなでけぇ打撃音がする程の衝撃を、殆んど受け流しておきながら、顔を押さえて踞るとか…」
「娘さん達に心配して欲しかったのですか?」
「へ!? イヤイヤイヤ。ナニヲイッテイルノカナ」
お弟子さん2人に、冷静に指摘されて、お父さんが慌てます。
エディさんとクリスさんは、ニコニコ……いや、ニヤニヤしてますね。
そういえば、確かに赤くなっただけで、鼻血が出たとか、瘤になったとかでは、ありませんでしたね。
音だけは、思わず固まってしまうほど、凄かったんですが…。
『図星ですか…』『図星なのか…』『図星なんだね♪』
「ちょっ…君達まで何言ってるの!?」
レグルス達まで、指摘を通り越して、突っ込んでます。
慌てるお父さんをチラリと見上げ、私と姉様は視線を合わせて、クスクスと笑い合います。
只今、私と姉様は、お父さんのお膝に居ます。
心配で、お父さんの傍をうろうろしてたら、抱き上げられて、私は左のお膝に、姉様は右のお膝に、ちょこんと乗せられました。
「おとぉしゃん、おでことおはな、赤いのなおった?」
「…父様。…もうそろそろ…手拭い外して良い…よ…」
意識を向けてもらおうと、お父さんのシャツを、ついついと軽く下へと引きます。
姉様は、お父さんの膝の上で、器用に体勢を変えて、膝立で手拭いへと手を伸ばしました。
ん。もう、大丈夫そうですね♪
姉様が退けた手拭いの下を確認すれば、赤みは綺麗に退いています。
会話もちゃんと出来ていたので、後遺症なんかも心配なさそう。
心配事が全部解決した──森での事も、お父さんとお互いに謝りあって、ちゃんと仲直りしました♪──ので、そろそろ晩ご飯の準備を始めましょう。
「ねぇしゃま? 夜ごはん、何がい~ぃ?」
「…洋食…?」
先ずは、メニューを決めようと、姉様に食べたい物を聞いてみたら、だいぶ大雑把な答えが返ってきました…。
洋食…。
一応4分の1程には、絞れる……かな?
ざっくり分ければ、基本は和食・洋食・中華・ジャンクフード(?)の4つですしね。
細かいと和食だけでも、数種類ありますし、洋食だって国別に分けたら、どれだけあるのか…。
ジャンクフードなんか、「何処の国の料理ですか?」とか、聞きたく成る程様々なのがあるんだよ?
まぁ、取り敢えず、洋食は決定ですね。
『あ、僕ハンバーグ食べた~い♪』
『ふむ。主食には、米を希望する』
『私は、チーズが食べたいです…』
おや、もうちょっと絞れそうですね。
ん~、チーズハンバーグにライスのセット?
クラウディアに来た初日に食べましたね…。
「おとぉしゃんは?」
「ん? 私かい?
私は、お腹に貯まるものが良いかな」
ん~。
ガッツリお肉系とか?
「おにぃちゃたちは?」
「え!? 僕達!?」
「おっ♪ 俺達もいいのか?
なら、俺は味の濃いものが食いたいな!
修行中は、野宿とかも多くて、単純に塩振って焼いた肉や、野草を煮込んだスープばっかしだったからな」
「…そうだね。でも、あれはあれで美味しかったと思うよ?
まぁ、確かに、手の込んだ手料理が食べられると、それだけで嬉しいのは、否定出来ないけどね」
家族に聞き終えて、お客様であるエディさんとクリスさんにも聞けば、ちょっと驚かれて「味は濃いめで、手の込んだ物」がリクエストされました。
手の込んだ物─と言えば、一昨日の夜に作って、寝かせておいたアレがありましたね…。
何種類ものスパイスを使って、食欲を誘う香りと、複雑な味わいに仕上げたアレなら、“味の濃いもの”としてリクエストに応えられます!
そう!
子供に大人気、大人だって大好きな、カレーです♪
「ん~。よしっ! あれ、ちゅくりょう♪」
結構皆バラバラな意見だったけど、なんとかなりそう。
そして、私はカレーが食べたいです♪
た・だ・し!
アルタイルとシリウスのリクエスト、ハンバーグとチーズを忘れるつもりはありません。
お父さんもお腹に貯まるものが良いって言ってましたしね♪
と、いう訳で、今日の晩ご飯は、ちょっと贅沢“ハンバーグカレードリア”に決定~♪