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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第4章─初めまして! お父さん?
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初めての喧嘩と仲直り。「ただいま」と「おかえり」は、家族の基本です♪

 3歳児の体力で、あれだけ泣いたら、疲れもします。

 只でさえ、今日は実地勉強会という名の魔物さん観察で、継続的な魔法行使や精神的な緊張で、いつも以上に疲れてましたから。

 お父さんやベル姉様、男の子達を置いて、3匹は私だけを連れて帰路へと着きます。

 私は泣きながら、森であった事を反芻し、結局レグルスの背中で、気を失う様に眠りの檻に落ちていきました。



 *~*~*~*~*



『──ナ、ユナ。起きてください、ユナ』


『ユナ、家に着いたぞ』


『おはよう~。うわっ!? 目が真っ赤だよ。ちゃちゃっと冷やそう~』


 シリウスに揺り起こされ、レグルスが魔法でそっと下ろしてくれました。

 周りを見渡せば、既に玄関の内側。

 おうちの玄関ホールだ。

 半分寝惚けた状態で、足に力が入らず、その場でペタンと座り込んだ私を、アルタイルが心配げに見下ろして、優しく頬擦りしてくれます。


「ぅみゅ~。アりゅタイりゅ~」


 頬を擽る羽毛の柔らかさに、寝起きの不安がほっと落ち着く。

 寝入る前の感情の暴走は鳴りを潜め、涙も今は引っ込んでいる。


「……ねぇしゃまたち、おいて来ちゃった……」


 ふと、この数日傍にあった存在が無い事に気が付いた。


 何をするにも、一緒に行動していた。

 常に存在を感じられる場所に居てくれた。

 寂しくない様に、悲しくならない様にと、温かく見守ってくれていた。


「……ねぇしゃま……」


 再び泣き出しそうになる私に、レグルスが大きく1つ溜め息を付いた。


『───はぁ…。大丈夫だ。

 リュニベール様なら、直ぐに戻られる。

 ………。

 あの方は、姉君達の中で、1番短気でなぁ。

 感情の起伏を面に出されぬ割りに、怒りの感情に呑まれやすい』


『そだね♪ でも、それもあんまり長続きしないから、今頃落ち込んでるかも~。

 ラズヴェルト様の方が大変かな~。

 前にフェリシア様が降りてた時と同じだね♪』


『ええ。以前は、転移体憑依で降りていらしたフェリシア様に、他の冒険者の殿方が絡んだのでしたね。

 ラズヴェルト様が「私の奥さんに何してるのかな?」と、瞬時に意識を刈り取り、地に沈めてました…。

 大切な相手を奪おうとする者や、傷付けようとすら者に対して、ラズヴェルト様は問答無用の実力行使ですから…』


 ………。

 今日と同じ様な状況が、以前にもあったんですね…。

 何だか、レグルス達の対応が、慣れている様だったのは、そのせいですか…。

 私の外見が、お母さんそっくりなのも、原因かなぁ。


 ベル姉様…。

 泣いちゃった上に、危ない森の中に放置して来ちゃった…。

 嫌われちゃったかなぁ。

 ごめんなさいをしたら、赦してくれるかなぁ。

 お父さんも…。

 折角会えたのに、酷い態度とっちゃった…。

 こんな子、要らないとか言われたら…。


 自分の駄目さ加減に、嫌な想像ばかりが浮かびます。

 一方的に泣き喚いて、謝りもせずに逃げ出すとか…。

 どれだけ駄目なんでしょうね。


『あまり、落ち込むな。今回は、完全にリュニベール様とラズヴェルト様に非がある。

 ユナはただ、争って欲しく無かったのだろう?

 それは、当たり前の事だし、そんなユナをフェリシア様は好ましいと仰った』


『何より、ユナに家族だと言われて、私達が嬉しかった様に、お二方だけでなく、フェリシア様や他の御姉様方も、喜んでいらっしゃったでしょう?

 ユナはユナのままで良いのです。

 ユナはユナのまま、“家族が大好きだ”という気持ちを忘れずにいてください』


『あはは♪ そうだねぇ~。

 嫌な事をしたり、言ったりしちゃったなら、素直に謝ると良いよ♪

 それだけできっと、リュニベール様も、ラズヴェルト様も、赦してくれるよ~?

 大丈夫、反省してなかったら、僕達がユナより先に怒るも~ん♪

 ふふふふふ~。

 …ユナを泣かせて、反省しないなら~、フェリシア様だって怒ると思うな♪』


 不甲斐なさに落ち込む私を、3匹はそれぞれ慰めてくれます。


 ………。

 あれ?

 アルタイルの発言が…?

 何か最後にボソッと黒い感じの台詞があったような…。

 うん。

 聞かなかった事にしましょう!

 考えちゃうと怖い気がします…。


 ───バンッッ! バタンッ!

 ──ガゴンッ!!


「ユナァァァ~」


 玄関ホールで3匹のもふもふに埋もれていたら、背後で勢い良く玄関扉が開かれ───閉じた。


 ………。

 え~と、私に抱き付いて泣いてるのは、ベル姉様かな?

 確か、今日は落ち着いた緑の外套を着てたはず…。


 音に驚いて振り向いた所を、後方から濃い緑と銀の塊に襲われた。

 勢いに負けて、転がりそうになった私を、アルタイルが支えてくれた。

 というか、アルタイルをクッションにする形で、衝撃を受け流したが正解かな?


「ごめんなさい! …ごめん…な…さいぃぃ…」


「ねぇしゃま? 泣かにゃいで?」


「…ひぃっ…く…。…ごめんね…。…ぼく、ユナの気持ちを…無視しちゃ…った…。

 …ごめんね…嫌いにならないで…」


「ふぇ、ねぇしゃま~。わちゃち()こしょ、ごめんにゃ…しゃ…ぃ。

 きらい…なっちゃ、や~」


 姉様の涙に釣られて、私の目にも再び涙が浮かぶ。

 抱き合って泣いていたら、レグルスが玄関扉を引き開けた。


 ふと、視界に過ったレグルスの姿を追ってしまった。

 爪で引っ掻けて開けた隙間に、逆の手を入れて身体を押し込む。

 そのまま通りやすい幅まで押し開けてる。

 滲む視界で、姉様の肩の向こう、レグルスの行動を、ぼんやりと見てしまう。


 …レグルス…。

 器用だよねぇ…。

 何と無く場違いな感想が頭に浮かんだ。


「~~~~~っ」


 レグルスが開いた扉の向こう側、そこには思ってもみなかった不思議な光景が…。

 レグルスの頭より低い位置に、鼻と額を押さえて、踞るお父さん…。

 と、オロオロとお父さんの背後で、右往左往しているクリスさんとエディさん。


「だ、大丈夫ですか? 師匠」


「凄ぇ音したぞ?」


 ぇ…。

 何があったんですか?

 お父さん? お鼻とおでこが、赤くなってますよ?

 あ、でも、先にご挨拶?


「おかえりなしゃ…い?」


 半疑問形のお迎えの言葉に、姉様は涙を滲ませた満面の笑顔で、お父さんは未だ鼻と額を押さえたまま、ちゃんと応えてくれました。


「「ただいま」」

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