魔物さんの森でのお勉強♪ ちょっと変わったピクニック?
「ふわぁ~。おっきい……」
ただ今、私の眼下には、不思議な魔物さん。
……何でしょう、これ?
クラウディアに来る前から、私は生き物全般“恐いもの無し”な状態でしたが…。
え~と…。
*~*~*~*~*
あちこち魔物さんの生息地を廻り、分布図を把握しながら、魔物さんの生態や弱点、攻撃や防御の仕方を教えてもらいました。
クラウディアで暮らしていれば、万が一・億が一1人になる場合もあるかも知れないからと、最低でも自己防衛が出来る様になんだって。
レグルス曰く、『闘ったり、倒したりは出来なくとも、俺達が駆け付けるまで、自分を守れれば、それで良い』だそう。
そんなこんなで、森を見て回ってたら、眼前にウネウネ動く魔物さん。
「…ヘビさん?」
この大きさなら、私をひと呑みに出来そうですね。
相変わらず、魔法で存在感を消してるので、蛇さんは気付いて無いみたいだけど。
「…ん。この辺りの主…かも…」
ん? 主? 蛇さんが?
ぁ、でも、大きさはレグルスと同じくらいだから、そうかも。
リュニベール姉様の言葉に疑問を持ったのは一瞬。
姉様が蛇さんを見上げているので、視線を追ってみる。
ん?
蛇さんの尻尾の先が、上に向かって伸びてます。
視線を蛇さんの身体に沿って上げてみれば。
……何かいる…。何だこれ?
「…これは…キマイラ…珍しい…」
姉様が呟きながら、魔法で身体を浮かせます。
「…ユナ、おいで…。全体を見てみて…」
という訳で、冒頭の一言です。
*~*~*~*~*
大きさは、レグルスの倍以上。
正確には分からないけど、3倍…くらい…かな?
蛇さんの尻尾の先には、山羊さんのお尻。
というか、山羊さんの尻尾の代わりに、蛇さん?
ぁ、山羊さん、角が立派……雄ですね。
不思議な所はもうひとつ。
山羊さんの胸から、雄の獅子さんの上半身が…。
動物としての生態は、どうなっているのでしょう?
「…ユナ…これは、割りと気性が荒い…。
見掛けたら…即座に…回避で…。
今回みたいに…魔法で隠れるのも…あり…かな…」
「ぁい。分かりました」
「ん。…良い子…♪」
ベル姉様が淡々と遭遇時の行動方法を教えてくれるので、キマイラさん? の大きさに圧倒されつつ、素直に頷きます。
うん。
これは、逃げるが勝ちだねぇ~。
私なんかじゃ、お豆を食べるが如く、パクっと一口で食べれそうですから。
いや、噛まずに呑み込みそうだな…うん。
まぁ、そんなこんなで、色んな魔物さんを観察し、逃げ方や見付かった時の対処法なんかを、実地でお勉強。
森の中をちょこっと荒らす形になりつつも、ベル姉様が実際に魔物さんを蹴散らしたり、不可視の状態のまま弱点を突いて討伐(暗殺技術な気が…)したりと、中々(魔物さん達にとって)危険な探索となりました。
*~*~*~*~*
結構歩き回って、3歳児の体力ではキツくなってきた頃、魔物避けの魔道具(【無限収納】に入ってた)で確保した空間で、お昼ご飯となりました。
「──む。…ちょっと…辛い?」
「うん。ピリッとからいから、ピリから~♪」
お弁当に用意したのは、中華料理。
海老のチリソース炒めを食べた姉様が、不思議そうなお顔で、再び海老さんに手を伸ばします。
気に入った…の…かな?
ところで、姉様達が“3人とも会いに来てくれた日”に発覚したんですが…。
カトラリーにお箸が存在してます。
しかも、姉様達が扱い慣れてて、仕草というか所作というか、凄く綺麗。
優雅なのに、見たこと無い早さで減ってく料理に、愕然としつつも、その光景に見惚れていたのは、楽しい思い出だ。
『ふむ。これは、旨いな。塩味の濃さが絶妙だ』
レグルスは、八宝菜を食べてますね。
子猫が勢いよく食べる姿は、見ていて和みます。
『私は、こちらが気に入りました。
ふかっとした柔らかさと、ほんのりした甘味が美味しいですね』
シリウスは、桃饅頭が気に入ったみたいですね。
桃の香りと、優しい甘さが、味の濃い中華料理の箸休めに丁度良いですよね♪
私も好きです。
『僕は、これ~♪ 甘いのに、酸っぱいよ~♪
お肉も軟らかいし~、面白い味だよね~♪』
アルタイルは…。
油淋鶏…。
いや、美味しいんですが…。
………共食い?
………。
まぁ、気にしない事にしましょう。
細かく分類すれば、完全に別の種だろうし…。
うん。
気にしたら、負けな気がします。
餃子の匂いの強さに驚いたり、小籠包を頬張ってお口の中を火傷しかけたり、米粉の皮の蒸し春巻の彩りを楽しんだり。
楽しいお昼ご飯を終えて、食後の一服と落ち着いた所で、突然レグルス達が元の姿に戻り、同じ方向を気にして、警戒態勢をとりました。
『ユナ、リュニベール様の傍を離れるな。嫌な気配が近付いて来る』
レグルスに鋭く注意され、不安のあまり姉様にすがり付きます。
『これは──アンデッド…』
安心させる様に姉様が頭を撫でてくれた時、シリウスの呟きが聞こえました。
『だね~。折角楽しかったのに~、台無しだよ~』
先程まで小鳥姿で仰向けに寝ていたのが嘘の様に、アルタイルが聞いたこと無い程に低い声で唸ります。
「…ねぇしゃま…」
すがり付いたまま、姉様を見上げれば、姉様が優しく微笑んで、落ち着かせてくれました。
午前中のお勉強で、聖獣であるレグルス達には、アンデッドと呼ばれる魔物さんにも、対抗手段があるとは聞いてます。
それでも、アンデッドと呼ばれる魔物さん達は、魔物さんの中でも、討伐の難しい相手で、遭遇すればかなりの危険に晒されるそう。
普通の人族や獣人族、魔法の苦手な種族は、遭遇しただけで、死を覚悟しなくてはならない相手なのです。
レグルスも、シリウスも、アルタイルも、怪我しないで…。
───いなくならないで…。
ちょこっとシリアス展開?
それは、それとして。
お父さん…。
頑張って、早く出てきて~。
次こそ出てこい!
章タイトルは、詐欺じゃないはず…。
アルタイルが、どんどん残念男子になっている気がします…。
これはこれで、可愛い…のか?