お風呂って、危険と隣り合わせなんだね。小さな危険は日常の中に…。
美味しいご飯を堪能して、食後休憩の後、契約獣の3匹と、フォーレお姉ちゃんにラメル姉さんと、今いる家族総出で、入浴です♪
「わぁ~、結構広いのね~♪」
「てか、湯船…深っ!? これ、気を付けないと、溺れるな…」
フォーレお姉ちゃんは、お風呂場の広さに感心して、ラメル姉さんは、浴槽の深さに軽い衝撃を受けてます。
うん。分かります。
驚くよね~。
私の背丈より、深いもん。
お姉ちゃん達と私の身長差は、40セタ。
お姉ちゃん達でも、1番低い所に立つと、顎より上に縁がある。
お湯を張った状態だと、ギリギリお顔は浸からない…かな…。
『一応、この2日は、大丈夫でしたよ?』
『そうさな。一応、溺れは、しなかったな』
『あ~、うん。一応、大丈夫だったよね~♪』
シリウス、レグルス、アルタイルの順に、遠い目をしてラメル姉さんの呟きに応えます。
え~と…。
はい。
溺れはしませんでしたよ?
「? 溺れは?」
「洗い場で転けた…か?」
フォーレお姉ちゃんが、疑問符を浮かべながら、シリウス達を振り返ります。
直後に、ラメル姉さんが見事に言い当てました。
その通りです…。
昨日、ちょこっと落ち込んでたせいか、洗い場で転けました…。
ええ。
そりゃ、もう、キレイに“すてん”と転けましたとも!
頭を打たなかったのは、不幸中の幸いでした…。
これ以上お馬鹿さんには、なりたくないですから。
「気を付けろよ? ユナ。
ちっこい内は、色んな所に危険が転がってる。
日常生活の中にだって、死に直結するような出来事はあるんだからな!?」
「ユナに何かあったら、世界の安定どころじゃ無いわ。
私やラメル、リュニベールだけじゃなく、御母様だって哀しみや悔しさに呑まれかねないもの。
ユナの平穏が、世界の安定の第一歩だと思って、無茶な事はしないのよ?」
「ぁい。気ょうつけましゅ」
うん。
本気で気を付けよう。
私のせいで世界が崩壊とか……。
絶対嫌だ!
お母さんやお姉ちゃん達が哀しむのだって、御免蒙ります!
私は皆が幸せに笑っているのが、大好きなのです!
シリウスやレグルス、アルタイルだって、私を好きになってくれたんだもん。
哀しませるのは駄目だよね!
怪我や病気、危ないことは、極力回避の方向で!
「ユナ~、背中流してあげるから、こっちにいらっしゃい」
「お。なら、あたしは髪を洗ってやるよ」
シリウス達を姉妹3人で洗いあげたら、フォーレお姉ちゃんに呼ばれました。
転ばない様に気を付けつつ、ぽてぽてとお姉ちゃんの元に向かいます。
フォーレお姉ちゃんの前に椅子が置かれて、そこに座る様に促されました。
椅子にちょこんと座れば、ラメル姉さんが前に来て、乾いたタオルを目に当てられます。
「そのまま、ちょっと下向いて…。お。上手い、上手い。
よ~し、ちょい我慢な。
泡が目に入らない様に、タオルで確り押さえてろよ?」
「わぁ、ユナの肌、もちもちすべすべ。
触り心地がとっても良いわね♪」
「母さんが創る転移体は、肌理が細かくて、繊細な印象だな。
その割りに、丈夫でもあるみたいで、傷とかは深くない限り、綺麗に治りそうだぞ?」
「それは良いわね♪ 戻って来る時が楽しみだわ♪
っと、よしっ! 洗い終わり♪」
「ん。髪もこんなもんだろ。流すぞ」
目を閉じていた間に、背中を流され、髪を洗われ、お顔に跳ねたお湯をタオルで拭かれて、さっぱりしました。
ラメル姉さんは、「もうちょい頑張れ~」と、最後まで髪を洗い上げ、軽く搾って乾いたタオルで纏めてくれました。
確り纏められているので、落ちてきません。
「わたしも、ねぇねとねぇしゃんのおせなかながしゅ!」
私の宣言に、フォーレお姉ちゃんとラメル姉さんが、驚きながらも、お互いに目を合わせて、笑い合います。
「「じゃあ、お願いね」頼むな」
2人同時にお願いされて、ちょっと悩んで、既に自分で髪を洗い終えているフォーレお姉ちゃんを優先します。
フォーレお姉ちゃん、ラメル姉さんと、背中を流し終え、自分の身体も洗います。
誰かと一緒のお風呂は、なんとなく恥ずかしくて、なんとなく嬉しくて、なんとなく幸せですね♪
お姉ちゃん達と湯船に浸かって、軽く脱力。
はふぅ。
正に至福。贅沢な一時ですね~♪
………。
あれ?
くらくらします。
む~。真っ白~。
*~*~*~*~*
「ユナ~、死んじゃ嫌ぁ~」
む~。
遠くで、姉さん達が呼んでます?
にゃ~。
ガクガクします~。何事ですか~。
「やめろ! フォーレ!」
『フォーレ様っ、離さんかっ!』
『フォーレ様、落ち着いてくださいませ!』
『ぁ、ユナ。気が付いた~?』
『『「「ユナ!?」」』』
目を開けたら、目の前に私の肩を掴んだフォーレお姉ちゃん。
お姉ちゃんの両側にシリウスとレグルス。
頭の上に、小さいアルタイル。
その上に、覗き込むみたいに逆さまのラメル姉さん。
あれ?
『気が付いたか。状況は分かるか?』
安心した様なレグルスが、ぶっきらぼうに聞いてきます。
『ユナは、逆上せたのですよ?』
心配そうなシリウスが、状況を説明してくれます。
『意識が無かったから~、レグルスまで焦ってたよ~?』
不思議そうなアルタイルが、シリウスに続いた。
と思ったら、何だか余計な情報が混じった様な……。
『………』
ぁ、レグルスがアルタイルの頭を咥えた…。
レグルス? アルタイルを食べたら駄目ですよ?
視線で訴えたら、そっぽを向いて、アルタイルをペッと吐き出しました。
吐き出された勢いのまま、アルタイルが転がります。
怪我してませんかね?
ぁ、大丈夫みたいですね。
平気でちょこちょこ戻って来ます。
どうやら、逆上せて湯船に沈みかけ、ラメル姉さんに助け出されて、脱衣所のソファに寝かされてたみたいですね。
余りにも目覚めない私の様子に、フォーレお姉ちゃんが恐慌状態に陥り、両肩を掴んで揺さぶってた模様。
あぁ、うん。
姉さんとシリウス達が、お姉ちゃんを止めてくれてた訳ですね。
ん~。不覚。
気を付けようと決めたばかりなのに…。
取り敢えず、怠いので、もうちょっと横になってようかな。
後で、皆に謝らなきゃなぁ…。