お姉ちゃん? と契約獣。レグルスお父さんが怖いです!
「ねぇしゃま、ねぇさま。おなかしゅいたぁ~。
ごはんにしよう?」
私のお腹をぎゅ~っと抱き締めて、肩越しに目の前の女の子を睨んでいるベル姉様に、取り敢えず放してもらわなきゃですね。
姉様の顔を見上げて、お腹に回されてる腕を、たしたしと軽く叩いてみる。
途端に、私のお腹の虫さんは元気に鳴き始めた。
───ぐ~~っ、ぐるるぐ~~~ぅっ
──きゅ~~ぅっ、きゅるるん
………。
『きゅるるん』って……。
恥ずかしすぎて、泣きたくなって来ましたよ?
泣いていい?
『リュニベール様、取り敢えずユナを放していただけますか?
ユナ、魔法を使ってよいから、下りてください。
ご飯にしましょう』
シリウスに促され、魔法を使う。
姉様が放してくれないので、姉様ごと風で包み込んで、そっと地面に下り立ちます。
背後から抱き付かれ、シリウスのお腹と女の子の身体で挟み込まれた私を、シリウスの背中にいた姉様が、転移魔法で自分の傍に移動させてくれたから、1度下りたのにシリウスの背中に戻ってたんだよね……。
転移した途端に、呼吸が楽になって、噎せちゃったのはご愛嬌かな?
『お~い。たっだいま~♪』
私と姉様が地面に下りたと同じくらいに、アルタイルとレグルスが戻って来ました。
『今戻った。……何故、此処に?』
「ぁ、やっほ~♪ 久し振り!」
レグルスは、落ち込んでいる女の子を見付けると、訝しげに声をかけた。
声をかけられた女の子は、嬉しそうに笑って、親しげに挨拶を投げ掛ける。
……ん?
知り合いですか?
『無沙汰の程、御容赦いただきたく。
健勝の御様子、喜ばし……「相変わらず、堅いね~。崩して良いよ?」……では、御無礼を。』
レグルスが今まで見たことが無い程、慇懃無礼な応対をするのに驚きながら、私は女の子の正体を予測する。
声に聞き覚えがあるし、容姿が何処と無くお母さんに似てる…。
…お姉ちゃん…かな?
前に教会で聞いた感じだと、フォーレお姉ちゃん → リュニベール姉様・お母さん → ラメル姉さんって順番に、ちょっとずつ低くなってたから、声で判断するなら、あの女の子はフォーレお姉ちゃんだと思うんだけどな…。
ぁ、因みに私の声は、フォーレお姉ちゃんより、ちょこっと高め。
3歳児ですからね♪
………。
取り敢えず、ご飯の準備をしよう…かな。
うん。
お腹の虫さんも、さっきから“ぐるるきゅ~っ”と楽し気? に鳴いてますしね……。
…恥ずかしくて、泣きたいです。
もう、逸そ泣いちゃおうかな…。
シリウスとアルタイル、それに姉様も準備を手伝ってくれてます。
ぁ、アルタイルのお腹の虫さんも、鳴き始めましたね。
皆のお腹の虫さんも時々鳴いてるみたいだから、恥ずかしさは軽減しましたね♪
…それにしても…アルタイル。
朝ご飯は、モウ消化シチャッタンデスカ?
シチャッタンデスネ…スバラシイです。
ちょこっと現実逃避をしつつも、やっぱり女の子が気になります。
ご飯の準備をしながら、チラチラと様子を窺ってみましょう。
『何故、此処に居る? 仕事はどうした?
まさかとは思うが、放置して来た訳ではあるまいな?』
「放置はしてないよぅっ。眷属達に振り分けて来たもん!」
レグルスが流れるように質問(詰問?)を投げ掛ければ、女の子は拗ねた様にそっぽを向いて頬を膨らませました。
というか、レグルス?
先程の慇懃無礼な応対はどこに投げましたか?
私を叱る時と同じくらい言葉が……。
女の子の相手を、レグルスに丸投げしちゃいましたが、良かったのかなぁ?
『はぁ~っ。“季節の精霊王達に、押し付けるな”と、何度言わせれば気が済むのか…』
「大丈夫、大丈夫。“妹との約束”以上に大事な事なんて無いから♪」
大きな溜息をついて、ぼそりと呟いたレグルスの嘆きを拾って、女の子は上機嫌でサクッと切り捨てました。
ぁ、やっぱりお姉ちゃんなんですね。
フォーレお姉ちゃんかな? ラメル姉さんかな?
どちらであっても、会いに来てくれたのなら、嬉しいなぁ。
でも、季節の精霊おうさん? 達には、迷惑かけちゃったのかな…。
いつか会えたら、私もちゃんと謝ろう。
古代竜さん達や季節の精霊おうさん達は、私のせいでお仕事増えちゃったみたいだもん。
『阿呆っ! 自分との約束の為に、他人に迷惑や負担をかけたと知れば、ユナが申し訳なさに落ち込むだろうが!!
約束を守るなら、やるべき事を他に放るな!』
「え~。じゃあ、リュニベールは? 私と“同じ”じゃないの?」
『リュニベール様にも、朝方説教させていただいたわ!
相手の事を思うなら、まず自分の事をちゃんとやれ。
ユナの様に周りを気遣う者は、自分の事で他に負担がかかる事を苦手とする。
ユナが大切だというなら、その心の在り方も考えるべきだろう!?
何よりも先ずは───』
………。
レグルスのお説教が始まっちゃっいましたね…。
シリウス達の方に視線を向けたら、2匹とも苦笑してたし、目が合ったベル姉様は、視線を泳がせた後、そっとお顔ごと目を逸らした。
うん。
朝、大変だったもんね…。
1階のダイニングについた途端、レグルスがベル姉様にお説教開始。
ベル姉様は、軽く涙目でしたっけ……。
ん? 私? 私は朝ご飯を作り始めちゃいましたよ?
だって、レグルスのお説教は、怖いですから。
レグルスのお説教は、淡々としてて心臓の奥の方(良心?)にチクチク刺さるから、心の中が「ごめんなさい」でいっぱいになっちゃうんデスヨネ…。ワカリマス。
ベル姉様には悪いと思いましたが、怖いものは怖いので、サクッと避難してましたよ。ふふふっ。
フォーレお姉ちゃん? も、頑張って叱られてください。
お仕事は投げちゃ駄目です!
でも、先にご飯にしようよぉ~。
お腹が空きましたぁ~!
本当に泣いちゃいますよ!?