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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第3章─びっくりがいっぱい! 私の家族は楽しいです♪
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朝からちょっとお勉強? おはようございます、姉様。

 つんつん、つん、つつつつんっ。

 つくつくつんっ。つんつん、つっくんっ!

 ───ガシッ。


「…痛ぃ…」


 女の子(ベル姉様?)は、ほっぺを突っついていたアルタイルを鷲掴み、その手をそのまま枕の下に埋めた。

 憮然とした文句を呟いただけで、目を開ける気配も、起き上がる気配も無い。


 ………。


 ……。


 …えっ!? これ、どうすれば!?

 ぇ、ちょっ、待って!

 アルタイル!? アルタイルが死んじゃう!?


 枕の下に埋められたアルタイルが心配で、私はオロオロしてますが、その間も女の子は穏やかな寝息をたてて、爆睡中です。


『──ぶはぁあっ!? し、死ぬかと…。死ぬかと思った~』


『…大丈夫ですか? アルタイル』


『ん~。大丈夫~。リュニベール様って、寝起きが悪くてね~。

 神域にいた頃は、起こす度に何かしら危険はあったから~』


 なんとか枕の下から這い出してきたアルタイルが、ゼイゼイと荒い呼吸で、シリウスの右前肢に背中を預けました。

 心配というより、驚きを滲ませた声音で、硬直の解けたシリウスがアルタイルに尋ねます。

 反ってきた答えに、私もシリウスも、絶句しました。


 ………。

 ベル姉様…。


 それにしても、念話とはいえ、真横でお喋りしてても起きませんね…。

 私は普通に声に出してるんだけど…。

 というか、レグルスが殺気を帯びていた時も、起きませんでしたしね。

 大丈夫かな? 具合が悪いとかじゃ…。


『ユナ、大丈夫だよ~。本当に爆睡してるだけだから~。

 てか、突っついて分かったけど、なんで実体化してるんだろね~』


『…待て。実体化だと?

 女神様方が実体化するなど、余程の事だぞ!?

 転移体憑依ではないのか?』


 ぁ、レグルス復活した…。

 と、それより、“転移体憑依”って何?

 …“実体化”は、多分昨日のお母さんみたいに、触れる様になる事だよね?


「昨日、おかあさんも“じったいか”? してたんじゃないの?」


『いいえ。昨日のフェリシア様は、転移体憑依。

 実体化とは違いますよ?

 ……待ってください。

 ユナは実体化については、知らないのですか?』


『む? フェリシア様から、聞かされていないのか?』


 シリウスが私の疑問に答えて、ふと驚いた様に聞き返した。

 レグルスにも確認されたから、躊躇い無く頷く。


「うん」


『『………』』『…丸投げかな~?』


『丸投げだな』『丸投げですね…』


 私の返事に、シリウスとレグルスが黙って、アルタイルが仕方無さげにわらった。

 アルタイルの言葉に同意し、レグルスが実体化について教えてくれました。



 実体化とは、精神体のままクラウディアに“顕現”し、魔素を圧縮して“触れる器”を造る事らしい。

 通りでベル姉様がうっすら輝いているはずですね!

 魔素を圧縮しているのなら、魔法で身体を作っている様なもの。

 私の目は、魔法を“色のある光”として捉えますから。


 そして、実体化とは別に、最初からクラウディアに“適化させた器”を用意し、その器に精神体の一部を“憑依”させるのが、転移体憑依なんだって。

 昨日のお母さんは、この転移体憑依だったそうです。

 だから、前から使っていた器だと言ってたんですね♪


 転移体憑依は、実体化よりも簡単で、世界にも優しい。

 実体化だと、世界に僅かとはいえ“影響を与えてしまう可能性”がある上、常に基礎魔力を消費する事になる。

 転移体憑依であれば、世界に顕現するのがほんの一部であるため、殆んど影響は出ないし、精神体にかかる負担も20~30分の1くらいになるらしい。

 ただし、どちらも、元が女神様である事は変わらないため、大きな力を行使すれば、世界は崩壊へと天秤を傾ける。


 私の場合は、転移体憑依に近いけれど、精神体の一部じゃなくて、精神体その物全部を器に込めたので、転移体を使っていても、転移体憑依ではなく、クラウディアの人族として世界に受け入れられたそうです。



「じゃあ、ベルねぇしゃ()まは、ムリしてここにいるの?」


「…違う…」


 一通りの説明を聞き、一気に押し寄せた不安を口にすると、お母さんそっくりな声に、間髪入れずに完全否定されました。

 伏せて横たわるシリウスの向こう側。

 ゆっくり起き上がる女の子は、たった今神様に命を吹き込まれた人形みたい。


「…おはよう…。初めまして…ユナ…」


 サラリと肩から流れ落ちた髪は、肘に届く少し前。

 背中の半分ほどが隠れるかな?

 驚く私を写し混んだ瞳は、銀色を帯びた落ち着いた緑。

 眠そうに解けた目元は、ほんの少し垂れぎみで、左目尻にある黒子が、年齢以上の“女の艶”を演出してる。


 朝の挨拶と一緒に、シリウス越しに両手を伸ばして、抱き締められました。

 実体化している姉様は、温かくてほっとする。


「おはようごじゃ()いましゅ()。ベルねぇしゃ()ま。

 はじめま()て。…ねぇしゃ()ま、あったかい」


 舌足らずにはなったけど、朝の挨拶を返して、自分からも姉様に抱き付きます!

 私と姉様の間に挟まれたシリウスには申し訳ないけど、姉様との初めての邂逅ですので赦してください。

 大好きを伝えたくて、姉様の肩口に擦り寄れば、くすぐったいのか、姉様がクスクスと笑います。


 やっと会えたぁ~。

 よろしくお願いしますね、リュニベール姉様♪

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