表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第2章─街へ行こう! 世界を知るための第一歩?
30/169

やっぱりレグルスは速いです。ただいま、マイホーム!

 帰りの買い物中に、水の鐘が鳴ってたから、今の時刻は16刻を過ぎたくらい。

 お母さんがクラウディアに居られる時間も、1時間を切っちゃった。


「ブロドさん。昼間は有難う。挨拶が遅れてごめんなさいね。

 ユナの母親で、シアよ。この街に拠点を移したの」


 シリウスを抱えたままの私を抱っこして、お母さんがブロドさんに挨拶する。


「冒険者としてよりも、薬師か魔道具技師として過ごすことになるわ。

 ユナにも、お使いを頼むことが多くなる筈だから、良ければ気にかけておいて貰える?」


 お母さんはクラウディアに長くいられないもんね。

 普段は、用事があっても、シリウス達3匹と来ることになるね。


「私は、あまり一緒に居られないから、私の夫や娘達が一緒に来ると思うわ。

 最悪、1人で来させる事もあるかもだけど、その時はこの子達を付けるし、冒険者ギルドのギルマスが知り合いだから、大丈夫」


 ん?

 お父さんや、お姉ちゃん達?

 一緒に居られるの?


 不思議に思って見つめる私をスルーして、お母さんはレグルスやシリウスに視線を投げて、アルタイルに頬擦りしてます。

 ぁ、いいなぁ。


「これから、宜しくね」


 お母さんが満面の笑顔でブロドさんにお願いします。

 さっきまで固まってたブロドさんも、真面目な顔で頷いてくれました。


「こっちこそ。

 嬢ちゃん1人で来た時は、誰か一緒にいさせてやるよ♪

 にしても、こんな可愛い嬢ちゃんを、1人で行動させなきゃなんねぇとは…。

 なんか理由があるんだろうが、心配だろうになぁ…」


 お母さんに抱っこされた私の頭を、ブロドさんが優しく撫でてくれます。

 お母さんやモル兄の撫で方とも、ガザンさんの撫で方とも違う、傷付けないようにと、そっと気遣う撫で方は、ちょっと物足りない。

 でも、凄く大切に扱われているのが分かって、くすぐったい様な感覚に襲われる。

 へにゃっと笑う私を見て、お母さんも何処かホッとした様に、苦笑を浮かべた。


「ふふっ。有難う。確かに心配だけど、荒事に関してだけよ?

 ユナは賢いから。安全面は、この子達が居れば八割がたは保証されるしね」


 ブロドさんの申し出を快く受け取り、心配事の内訳を告げるお母さんに、ブロドさんが訝かる。


「後の二割は?」


「ん~。権力者とか神殿関係…かな…」


「あぁ。成る程なぁ」


 ブロドさんは、お母さんの答えに、躊躇い無く納得したらしい。


 ……え~……納得出来ちゃうんだ……。


 お姉ちゃん達が、慌てて『()っちゃうか』思考になったのも、仕方無かったのかな?

 私的には、其処まで心配しなくても、大丈夫だと思うんだけどなぁ。


「まぁ、宜しく」


「おうよ! 任せとき!」


 ブロドさんの応答に、再び苦笑するお母さんに、ブロドさんが力強く請け負ってくれました。


 おっと。

 そろそろ帰らないと、お家に着く前にお母さんとお別れしなきゃいけなくなっちゃう。

 お母さんも気付いた様で、ブロドさんに会釈して、門を潜るために歩き出しました。

 抱っこされているので、私も必然的にブロドさんから離されます。


 いけません!

 最後のご挨拶がまだです。

 振り返るのは難しいので、お母さんに抱き付くかたちで、お母さんの肩越しに、ブロドさんに手を振ります。


「おじしゃま、またね~♪」


「気ぃ付けてな!」


 笑顔で見送ってくれるブロドさんに、精一杯の笑顔を返しましょう♪


 今日は何だか、色んな大人に会ったなぁ。

 修道女のお姉さんと、ギルド受付のお姉さんの名前聞き忘れたなぁ…。

 まぁ、次の時でいいか。



 *~*~*~*~*



 数時間ぶりにお家に帰って来たよ~♪


 レグルスの背中から滑り降り、玄関口に駆け寄ります。


「ただいまぁ~♪」


 玄関扉を勢い任せに引き開けて、帰宅の挨拶をしながらホールに飛び込みます!


「ふふっ。お帰り、ユナ。 ただいま」


「おかえりなさい、おかあさん♪」


 後ろから、お母さんがお迎えの挨拶と一緒に、ホールに入ってきました。

 ホールの中央で出迎えた私を抱き締めて、帰宅の挨拶もしてくれます。

 嬉しくて、お母さんの首に飛び付いて、お迎えの挨拶を返した。


 お母さんの後ろからは、シリウス達3匹が、本来の大きさで入ってきた。


 ぁ、数時間ぶりの大きいシリウスと、アルタイルだ!

 レグルスは、街を出た所で大きくなってくれたけど、2匹は小さいままだったんだよね…。


「シリウス、レグルス、おかえりぃ~。

 アルタイルもおきゃ()えり!」


 シリウスとレグルスの首に、両腕で抱き付き、大きいもふもふに埋まりつつ、お迎えの挨拶を。

 レグルスの頭の上にいた、アルタイルにも抱き付こうとしつつ、挨拶を…した…。


 ………。

 噛んだ!?

 “か行”も噛んだ!?

 気が急いたり、興奮すると滑舌が悪くなるの?

 “さ行”だけでも恥ずかしかったのに!


 ショックを受けながらも、レグルスが頭を下げて、抱き付きやすくしてくれたアルタイルに飛び付く。

 照れ隠しの如く、アルタイルの胸元の毛並みを堪能してたら、3匹も帰宅の挨拶を返してくれました。


『『『ただい…ま?』』』


「? なんで、ぎもんけい(疑問形)?」


 返された疑問形の挨拶に、不思議に思ってアルタイルを抱えたまま、シリウスとレグルスを見上げ(・・・)ます。


 ……アルタイルの重さに、座り込んじゃいましたからね……。

 3歳児に、両腕が回りきらない大きさの動物は、重い……。

 お腹の辺りに抱き付くときに、翼を開いてくれてたから、落っことす事にはならなかったけどね。


『ずっと一緒にいただろう?』


『一緒に帰ってまいりましたよ?』


『だね~』


 腕の中のアルタイルまで、2匹に同調してますね。


「うん。でも、お家に帰ってきたから。

 “おかえり”は、戻ってきてくれてありがとう。

 “ただいま”は、待っててくれてありがとうだけど、たいしょう(対象)は生き物だけじゃないよ?

 むきぶつ(無機物)だけど、“家”だってわたしたちを待っててくれたでしょ?

 “おかえり”と“ただいま”は、一緒にいられなかった時間を、おたがいにさびしかったねって、教える言葉だよ♪」


『成る程。つまり、ユナが“家”の言葉を代弁したと言うことか…』


『私達が口にした帰宅の挨拶は、留守にしていた“家”に、帰ってこれて嬉しいと伝えるための言葉でもあったのですね』


『そっか~。そうだよね~。

 誰も居なかったら、“家”だって寂しいかも~』


「ね♪」


 3匹に理解して貰えて、嬉しい気持ちを隠さずに、お母さんを振り返る。

 お別れまであとちょっと。

 ずっと笑顔でいたいな…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ