表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
序章─始まりは、大草原?
3/169

目が覚めたら、3歳児!? 新しいお母さんが出来ました♪

 ふと、意識が浮上する感覚があり、ゆっくりと目を開けた。


「おはようございます。結愛(ゆな)さん。」


 優しい笑顔のシアが、私を覗き込んでいた。


「…おはよう、シア。」


 挨拶を返しつつ、再び閉じそうになる瞼を(こす)る。

 (わず)かに倦怠感を覚えなからも、横たわっていたらしい身体を起こす。

 辺りを見回して、自分の置かれた状況を確認する。


(眠る前にいた草原? ……ミステリーサークルのど真ん中に天蓋付のベッド……)


 シュールな状況に、一瞬再び眠りに着くべきかと、現実逃避しかけるが、横で嬉しそうに微笑むシアに、眠る前の感覚を思い出した。


「もう、準備が出来たの?」


「はい。一通りの準備は終えましたよ♪ 後はこれからの事や、結愛さん自身について、幾つか説明しますね。それから【転移】する場所を選んでください」


 …………。


 ……なんか……。


 ……なんだろう……。


「!? 私、縮んでる?」


 ベッドから降りようとして、違和感に気が付いた。

 身体を支えている手は、覚えていた自分の手の半分程。

 ベッドに腰掛けた状態で、足と床の間に50センチ以上の距離。

 どう考えても、縮んでいる。


「ごめんなさい。結愛さんの精神を、新しい身体に定着させるには、傷によって失われた活力を、ある程度取り戻さないといけなくて…」


「え~と。つまり、縮んだというより、若返った?」


「はい。今は、3歳位ですね」


「ほぇ~」


 驚き過ぎて、変な声出ちゃった…。


 シアの説明によると、転移する為の身体も、精神体に合わせた年齢になるらしい。

 眠る前は、10代後半の学生だったのに、目が覚めたら、幼稚園児より年下って…。

 説明出来ない感情が、幾つも混ざって何やら複雑だ。


「身体も出来ています。結愛さん自身には、転生の気分が味わえた方が良いかと、容姿は以前と変えさせて貰いました」


 眠る前は、肩の辺りでふわふわ舞ってた栗色の髪が、起きてからは、膝の辺りを擽るようにサラサラと揺れる薄く朱みを帯びた金色に変わっていた。


「……シアと同じ色だ……」


 自分の髪を一房掴んで、何だか嬉しくて微笑みが浮かんだ。


「ふふっ。瞳も私と御揃いの菫色です。見てみますか?」


 シアが用意してくれた大きめの手鏡に、自分の今の姿を映した。

 手鏡の中には、不思議そうな顔をした、愛らしい幼女が居た。

 透き通る様な白い肌。

 青みを帯びた菫色の大きな瞳。

 早朝の光を集めた様な髪は、絹糸の如く癖がない。

 神様に愛された、芸術家の作品と言われても、疑いようがない程に、整った面差しの女の子だ。


「……シアに似てる?……」


 鏡に映った自分と、隣で微笑むシアを見比べる。

 幾つかの共通点の様なものを見つけて、少しわくわくとした高揚を感じた。


「先に説明しますね。取り敢えず、お茶にしましょうか」


 シアに(うなが)されて、腰掛けていたベッドから、頑張って降りた。

 身体が小さいと、1メートルもない高さでも、それなりに怖かった。

 私が降りて、シーツを握っていた手を離すと、天蓋付のベッドは跡形も無く消えた。

 空気に解けるように消えたので、そういうモノなのだろうと、自己完結で納得した。


 振り返れば、眠る前のお茶会の様な準備が整っていた。


「じゃあ、説明しますね」


 テーブルに近付いた私を、シアが優しく抱き上げて、椅子に座らせてくれた。

 3歳児の背丈じゃ、通常サイズの椅子は高過ぎます…。


「容姿を変える際に、一応クラウディアの一般的な容姿をと、考えていたのですが、今一納得がいかず、他の管理者にも、容姿について相談してみました。その中で、『私の容姿をベースにしてみては?』という意見が出て、嫌がられたら“もう一度創り直す”事を前提に、結愛さんの身体を創りました」


「ぁ、成る程。シアの容姿をベースに、幼さや愛らしさなんかの、庇護欲を誘う要素を強化したんだね…」


「はい。その様なところです」


「ふふっ。こんなに似てると、シアが私の【お母さん】みたいだね♪」


「私が結愛さんの母親ですか? それも良いかも知れませんね」


 私の好意を、シアは嫌がらずに受け入れてくれた。


 それから、新しい身体について、説明を受けた。

 本来転生の際に、親が造りだすはずの身体を、【管理者】であるシアが創った為に、私自身がシアの【眷族】扱いとなり、人族の枠を超えた、ハイスペックを所持する事になるらしい。

 あまり派手に動き回ると、面倒事を引き寄せそうだ…。


 カップに注がれた、甘めのミルクティーに口をつけ、染み渡る温かさにホッと力が抜けた。

 掌を暖めるように、カップを包み込んだまま、視線で話の続きを促せば、シアは1つ頷いて、説明を続けてくれた。


「クラウディアの一般常識、特別教養、必要知識は、新しい身体に馴染ませてあります。前の世界での経験値も、【浄化】が出来なかった為、そのまま持ち越す形になります。あと、これは相談してからと思いまして…」


 一通りの説明の後、シアは私の目の前、テーブルの上に、薄青い透明なパネルの様なものを展開させた。


「このパネルは、【ステータスウィンドウ】。クラウディアでは、【ステータス確認】が可能です。なので、結愛さんのステータスを、決めましょう。取り敢えず、身分証明に必要な【名前】【種族】【年齢】【職業】ですね」


「ン? 名前も?」


「はい。ぁ、勿論、今まで通りでも大丈夫です。ただ、『転生気分を味わってもらうなら、変えてあげた方が良い』という意見があったので、結愛さんに決めてもらおうかと…」


「成る程。ん~、シアは私の名前どう思う?」


「私ですか? 私は可愛いと思いますよ♪ 漢字の意味も、『ゆな』という響きも」


「そっか。じゃあ、音は変えないで、表記だけクラウディアのにしようかな…」


「分かりました。え~と。クラウディアの表記だと、『ユナ』さんですね。後は、種族はどれにしても、(?)が付いてしまいますね…。私の眷族扱いなので…。それと、職業は【成人の儀】で授かるのが、一般的なので未定で大丈夫です」


「ん。種族は人族のままで。年齢は…3歳だっけ? で、職業は未定と」


 決めた事が、随時パネルに記載されていく。


 ──────────

 名前:ユナ

 種族:人族(?)

 年齢:3歳

 職業:─

 ──────────



「ここまでが、他人がスキル【生物鑑定】で、確認出来る範囲です」


「スキル?」


(ぁ、またやっちゃった…)


「はい。え~と。クラウディアに()ける様々な技能の名称です。“先天的に取得している”ものや、“学習する事で後天的に取得できる”ものが在ります。…っと、それより、残りを決めてしまいましょう」


 悪い癖で、また話がずれかけたけど、シアが元に戻す。


「後は…【魔力適性】【技能(スキル)】【固有技能(ユニークスキル)】【加護】【称号】の5つですね」


「魔力? 魔法が使えるんだ…」


「ええ。クラウディアは、魔素(まそ)が濃いので、生き物であれば、多い少ないの違いは在れど、絶対に魔力を持っています。……そう言えば、結愛さんの世界は、魔素が薄かったですね……。まぁ、それは良しとして、結愛さんは私の【眷族】なので、魔力も多いですし、適性も高いので、8つ全部の属性が使えますよ♪」


 楽しそうに教えてくれるシアを見てると、私自身もどんどん楽しみになってきた。


「適性全てを表示すると、長くて邪魔ですから、統合しておきますね。次がスキルで…ぁ、持ち越した経験値が、結構在りますね。これも統合すると、最上位スキルが、幾つか出来ますよ♪ ユニークスキルは、言葉に困らない様にと~、魔素の濃度に対応出来る様にと~、安心して暮らせる様に~、後々必要になるかもだから、これも…かな? それと“私が結愛さんとお話ししたい”ので、これも…。ぁ、これも付けましょう! 可愛いですよ♪」


「わぁ、いっぱい…。いいの?」


「はい♪ ところで、結愛さん。動物とかペットって好きですか?」


「うん。好きだよ? 何で?」


 今までの楽しそうな様子が一転、シアは悲しげに俯いた。


「…知らない世界で、家族と云える存在がいないのは、寂しいです…。転生出来ていれば、新しい家族だって居た筈です。だからこそ、せめて“愛玩動物”としてでも良いので、管理者達の用意した【家族】を、受け入れてもらえませんか?……」


 ……………。


「分かった…。けど、条件を出してもいい?」


「勿論です」


 迷った末の返答に、シアは間髪入れずに頷いてくれた。


「……あのね……え~と。シアの事……【お母さん】だと……思ってても……いい? ……神様相手に、不遜 「そんな条件で良いのですか?」 ……っえっ!?」


 被せる様に紡がれた肯定の返事に、私の方が驚いた。

 ずっと【姉】として【保護者】で居た私にとって、少し話しただけでも、シアは【憧れのお姉さん】であり、【理想の母親像】だった。

 シアの【弟妹】や【娘・息子】になれる存在が居るなら、羨ましいと思った。

 家族と言われて、1番最初に浮かんだ“我が儘”だった。

 だから、駄目出しされる覚悟で、条件に上げたのに……。


「勿論です!! 結愛さんの事を知る度に、結愛さんの事を愛しいと思う感情が、大きくなっていきます。世界を創らない様にするのが大変な程に…。私は管理者なので、クラウディアで一緒に生活する事は出来ません…。だからこそ、結愛さんには沢山の【幸せの欠片】と、安全に生活する為の【守護の力】を、受け取って欲しいのです」


 与えられた言葉は、拒絶処か歓迎で、私は泣き笑いの様な表情で、シアを見つめた。


「よろしくお願いします。お母さん」


「はい。此方こそ、宜しくお願いいたします♪」


「喋り方、変えた方が良い?」


「いえいえ。そのままで大丈夫ですよ。ぁ、でも、私からの呼び方は、変えさせてもらいますね♪ 娘に“さん”付けは変ですから」


「うん。敬語もいらないよ? お母さんでしょ?」


「ふふっ。そうね♪ お母さんだものね♪ じゃあ、これでステータスは決定!」


 ──────────

 魔力適性:全属性


 技能(スキル):主婦/職人/採集/解析/(けもの)契約/状態異常耐性/精神異常耐性/浄化/製菓/遠視/暗視/投擲


 固有技能(ユニークスキル):世界言語理解/環境適応/攻撃無効/無限収納/神託/精霊視


 契約獣:天狼/天虎/天鷹


 加護:主神フェリシアの加護


 称号:異世界転移者/女神の愛娘

 ──────────



 わぁ、狼さんと、虎さんと、鷹さんかぁ♪

 強くて格好良い動物さん達だねぇ。えっ!? 小さくなれるの!? 凄いねぇ~。

 って、お~い。

 お母さんてば…やり過ぎ…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ