街には、濃いキャラクターが多いのかな? 私的には面白いです♪
「ようこそ! 冒険者組合『アヴァロン』へ!」
お姉ちゃん達との初お喋りを終えて、“冒険者組合”通称『ギルド』へとやって来ました。
ええ、はい。
やっぱり、お母さんに抱っこで運ばれました。
3歳児の歩みは、覚束無くて危なっかしいし、お母さんの制限時間内に、やりたいことを全部やるなら、運んだ方が確実だもんね……。
「本日は御依頼ですか? 御仕事ですか? 御登録も承ります」
おっと、黄昏てる場合じゃ無いですね。
受付に居たにこやかなお姉さんが、定型文らしい口上を述べています。
「こんにちは。登録と、聞きたいことがあるわ」
お母さんも、お姉さんに負けないくらい柔らかな笑顔で応えます。
ところで、登録ってどっちでしょう?
冒険者になるための『冒険者登録』かな?
お母さんは、既に登録済みの冒険者だから、此方なら私の登録だね。
それとも、活動拠点を決める『拠点登録』かな?
お母さんは王都のギルドで登録している事になってる筈だから、此方なら拠点移動の手続きをするんだろうね。
どっちかな?
それに……聞きたい事ってなんだろう?
「なんでしょう?」
お姉さんは幾つかの書類を用意しながら、お母さんに問い掛けます。
「ギルドマスターは、『巨人』のまま?」
「ぁわわわわっ。そ、その呼称は禁句ですぅっ!」
「ちょっと! 誰が巨人よっ!? 死にたいの!? 「ぁ、やっぱり居た」 って、シア!? シアじゃないの!!」
お母さんが“巨人”と言葉にした途端、受付のお姉さんが慌てだし、お姉さんの背後から低音の心地好い声がお母さんを脅すように叱り付けました。
お姉さんの背後を確認して、納得した様に頷いたお母さんの言葉に、声の主が驚きを隠さずに詰め寄って来ます。
「ヤッホー♪ 久しぶりね? モーリス」
陰になっていて分からなかった声の主は、2モルク近い長身のお兄さんだった。
筋骨隆々の逞しい雰囲気だけど、粗野な所は全く無くて、仕草は洗練された上品な騎士様みたいだ。
………。
あれ? ちょっと、待った!
聞き間違いかな?
「どうしたのよ!? あんたは今、王都に居るんじゃなかった?」
!? 聞き間違いじゃ無かった……。
お兄さんの言葉遣いが……。
外見はお兄さんだけど、もしかして本当はお姉さんなのかな?
いや、でも…。
「ん~。4年くらい前に、別行動で実家に戻ってたんだけど、末娘に色んな物を見せてあげたくて、リシャの森に越して来たのよ」
お母さんの知り合いみたいだけど、聞いてもいいかな?
失礼かな?
いや、勘違いする方が失礼だよね!
「あら、可愛い。あんたにそっくりね♪」
決意してお兄さんを見上げたら………お兄さんに褒められた!?
お顔が熱いです!
恥ずかしいです!
でも、お母さんに似てるって。
外見が可愛いって褒められたんだよね?
それなら、合ってます。
お姉ちゃん達の時とは違って、中身じゃないなら、私も可愛いと思いますよ♪
だって、私の外見は、お母さんをベースに造られてますからね!
自己愛主義者では無いです。
純然たる事実ですもん。
でも、面と向かって褒められるのは、やっぱり恥ずかしい!
うん。隠れよう!
……抱っこされたままなので、無理ですね。
せめて、赤くなってるだろう顔だけでも隠しましょう。
お母さんにくっついちゃえば、他の人にも見えないよね?
「で? この子の父親は?」
「あの人以外にいるわけ無いでしょ」
「そうよねぇ」
照れて悶えてる間にも、お母さん達の会話は、私の頭の上で飛び交います。
……やっぱりお父さんも居るんですね。
「ま、ユナは父親の顔すら知らないけどね」
「はぁっ!? どういうことよ!?」
「あの人ったら、別行動のここ4年ほど、弟子2人と修行の旅に出てるのよ。
だから、ユナが産まれた事は伝えたけど、まだ戻って来れて無いのよね」
「……相変わらずねぇ。あんた達夫婦は」
お父さんは、熱血系なんですかね?
お弟子さんが居るとは、職人さんなのかな?
でも、修行の旅ってことは、商人さんなのかも?
ん~、人物像がはっきりしません。
「ところで、この子は『ユナ』って名前なのね?」
「可愛いでしょ?」
「確かに。面差しはあんたに似てるけど、髪質はあいつ似かしらね。
こんなに可愛いと、三つ子ちゃん達も焼きもち妬かずに、可愛がりそうね」
「ええ。上の子達にも溺愛されてるわ」
おぉっ! お父さんは、私とおんなじサラサラ髪なんですか。
初めての確定情報ですね!
お母さんは、緩いウェーブがかかって、ふわふわ髪です。
色はおんなじですけどね♪
以前の私も、ふわふわ髪と言えなくはなかったけど、あれは“癖毛”が正解だと思う……。よく跳ねてたもん。
お姉ちゃん達の事も話してますねぇ。
お姉ちゃん達には、大好きって言って貰えましたよ?
私も大好きなのです!
早く会いたいなぁ…。
………。
…まずい…。
眠くなってきちゃった…。
「…おかぁしゃん…ねみゅい…」
「寝てても良いわよ?」
お母さんの肩に、ぐりぐりと額を押し付けて訴えたら、軽く揺すられて寝かし付けられそうになってます。
…本格的に…まずい…です…。
今、寝ちゃったら、また暫くお母さんに会えなくなっちゃいます。
もうちょっと一緒に居たいよ。
まだ、お母さんと一緒がいいよ。
「ん~や~。…おかぁしゃん…いっしょ…いりゅ…にょ………」