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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第2章─街へ行こう! 世界を知るための第一歩?
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街中散策♪ ナンパ? なおじ様と、初めてのお買い物。

 ここラディオールの街は、茜色の煉瓦と白い漆喰で作られた、可愛らしい雰囲気の街です。

 初めて見る景色に、ついつい興味を引かれます。

 お母さんに抱っこされてて良かった。

 自力で歩いてたら、すぐさま迷子決定だ……。

 いや、歩幅の問題で、時間も掛かり過ぎるんだけどね?


「じゃ、まずは教会かな?」


 顔を覗き込まれて、視線が捕らわれる。


(綺麗……。青…いや、(あお)かな…純粋な紫じゃなくて、寒色の強い菫色…。でも、内側にある優しい光が、包まれるみたいに温かい)


「ユナ?」


「おかあさんの目、きれ~い」


「あらあら。お母さんには、ユナの目の方が綺麗に見えるわ♪」


 おでこを合わせて、うりうりと構われながらも、誉められたことが嬉しくて、へにゃりと笑う。


 なんだか沢山の視線を感じて、ふと辺りを見回してみる。


 今通っているのは、商店街みたいな場所だけど、人通りはそこまで多くはない。

 まぁ、14刻(午後2時)をちょっと過ぎたくらいだから、仕方無いよね。

 もう少しすれば、夕御飯の材料を買い求める主婦の皆さんや、お仕事を早目に切り上げた冒険者達が、集まり始めるはずです。


 辺りを見回してみて、初めて気が付いたのだけど…。

 思った以上に見られてた? みたいです。

 目が合うと、そっと逸らされたり、へらりと笑顔を返されたりと、不思議な反応が多数。

 取り敢えず、笑っときましょう。

 うん。笑顔に笑顔を返すのは、当たり前の反応だよね?


「どうしたの? ニコニコして」


 当たりを見回したあと、あちこちに笑顔を振り撒いていた私を、お母さんが不思議そうに見つめます。


「む~。目が合ってね、笑ってくれたの、嬉しかったの」


 お母さんに抱き付いて、肩口に額を擦り付けながら、小さな声で答えました。


 流石に、知り合いでもない人達に、笑顔を振り撒いていたことを指摘されると、ちょっと恥ずかしい。

 以前は表情筋が仕事を放棄していたので、笑顔には会釈を返したりしていたのですが、身体の小さな子供が会釈で返すのは変かと、笑顔で返しただけです。

 なのに、その笑顔を見た人達は、びっくりしたあと、それまでとは明らかに違う、満面の笑顔を見せてくれました。

 嬉しくて、ちょっと泣きそうです。

 恥ずかしいのと、嬉しいのとで、感情が混乱してますね。


「お~い。そこ行く、姐さん。

 可愛い嬢ちゃんを抱っこしてる、別嬪の姐さん!」


 ん?

 誰か、お母さんを呼びましたか?


 私が“可愛い”かは“人それぞれ”なので置いときますが、女の子(嬢ちゃん)を抱っこしてる“女の人(姐さん)”は、お母さん以外見当たりません。

 その上、お母さんは確実に、誰が見ても“別嬪さん”です。

 でも、女神様を姐さんなんて(そんな風に)呼び止めて良いのかな?


「私?」


 私を抱っこしたままなので、お母さんは身体ごと振り返って確認します。


「ああ。姐さんのことさ」


「ふふっ。姐さんなんて呼ばれるの久し振りだわ♪ 何か用?」


 ぁ、良いんですね。

 お母さんてば、ちょっと楽しげです。


「おう。時間があるなら、串焼きでも食わねぇかい? うちの串焼きは絶品だぜ?」


 呼び止めたのは、串焼き屋台のおじ様でした。


「うふふ♪ 前半だけ聞くと、下手なナンパみたいよ?」


「がははっ。違いねぇ! まぁ、ナンパっちゃあ、ナンパだがよ。

 相手は姐さんじゃなくて、姐さんが抱えてる嬢ちゃんだけどな」


「う? わたし?」


「おう。嬢ちゃん、串焼き食わねぇか?」


 おじ様はニヤリと笑い、焼き上げたばかりの串焼きを差し出しました。

 焼き立ての串焼きが、香ばしいスパイスの薫りで、暴力的に食欲を刺激してきます。

 そう言えば、お昼ご飯がまだだった!

 買い食いするつもりだったのを忘れてました。

 匂いに刺激され、お腹が小さく空腹を主張します。


「! 食べる!」


「あらら。じゃあ、4本ほど貰える?」


「ん? 4本? 嬢ちゃんと姐さんが、2本ずつ食うのかい?」


「プッ。違うわよ! この子達の分!」


 足下を見たお母さんにつられて、おじ様も視線を下に落とした。


「おっ? こりゃ、すまん。ちっこいのが、他にも居たんだな!

 待ってな、今いい具合に焼き上がる」


 レグルス達を見付けたらしく、いそいそと焼き立ての串焼きを準備してくれる。

 1本が結構大きくて、私の腕の長さくらいの串に、掌サイズのお肉が4つ並んでる。

 随分食べでがありそうだ。

 わくわくしている私を、優しく地面に下ろして、お母さんがおじ様に話し掛ける。


「丁度いいわ。お兄さん、この子の“初めての買い物”の相手役を頼める?」


「おいおい、おっさんでいいぜ?

 初めての買い物……って、まだ小せぇのに金勘定が出来んのかい!?」


 ええ、ええ。おじ様と2人で、びっくりして顔を見合わせましたよ?

 お母さん…先に言っておいて欲しかったです…。

 まぁ、事故みたいな状況ではあるけどね?


「うふふっ。自分で買い物してみたいって言うから、教えちゃった。

 それに、間違えたら間違えたで良いのよ♪

 こういうのは練習あるのみ!

 ユナ、私があげたお金、ちゃんと持ってるわね?」


 お母さんに促され、リュックから青い紐の袋を出して、大事に握って頷きます。

 以前は普通に買い物もしてましたが、クラウディアでの買い物は、お母さんが言う通りこれが“初めて”です。

 ちょっと緊張しますが、頑張りますよ!


「おおっ! 準備万端って感じだな!

 んじゃ、嬢ちゃん、1本50(ゴルド)で、4本分だ」


 お財布代わりの袋を握り締め、やる気に満ちた私の心境に気付いてくれたらしく、おじ様が計算と会計を促してくれます。

 袋から更に小さな袋を取り出し、銅貨を4枚おじ様に渡します。

 銅貨は、1枚50Gなので、4枚(200G)で良いはずです!


「はい。合ってましゅ()か?」


(にゃ!? また噛んだ~)


 気合いを入れ過ぎたのか、滑舌がよくない~。

 “さ行”は天敵ですか!?

 ……泣いていいかな…。


「おっ! すげぇな、嬢ちゃん。合ってるぜ!

 こんな小さい(ちっさい)のに、ちゃんと計算出来てらぁ。偉いぞ!

 持ちやすいように、紙袋に入れてやっから、ちょい待てな?」


 ちょっと落ち込みそうだった私の頭を、おじ様が豪快に撫でてくれます。

 お!? と、とぉ!?


(痛くないけど、この勢い、首もげませんか?)


 お~。ちょっとくらくらしますね~♪

 びっくりしたけど、面白かった!


 おじ様の手が頭から離れて、串焼きを4本一纏めに袋に突っ込んでます。

 お金を受け取って貰い、次いで串焼きを突っ込んだ薄手の紙袋を、お財布を握ってない右手で受け取ります。


 ………。


 はい。すみません。

 左手にお財布代わりの袋を2つ、握ったまんまです…。


 熱々ほかほかの紙袋を抱えて、お母さんの元に戻ります。


「できた~」


「ふふふ。上手に出来たわね♪ 偉い偉い」


 戻った私の頭を、お母さんが目線を合わせて撫でてくれました。

 クラウディアでの“初めてのお買い物”は、概ね大成功だ♪

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