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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第2章─街へ行こう! 世界を知るための第一歩?
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見えた~! 農産の街【ラディオール】到着。

 街道に出て暫く進むと、大きな外壁が見えて来ました。

 門へと向かうと、数人の列が出来ていて、最後尾付近にいる兵士さんが、辺りを警戒しています。


 おおっ♪ 初めて見るクラウディアの住人達です!


「おいっ! そこで止まれっ!」


 最後尾の辺りにいた兵士さんが、レグルスを見付けたらしく、こちらに槍の穂先を向けて、警告を呼び掛けます。

 純白の大きな虎の背中に、女性と子供が無防備に乗っていて、ゆっくりとはいえ近付いてくるなんて、驚くのも仕方無いよね?

 ただ、命令口調は嫌な感じです。


 警戒しつつも、兵士さんがそろそろと近付いて来ます。

 お仕事とはいえ、猛獣と云われる虎に近付くのは、怖いのかも知れませんね。

 レグルスは普通より大きいみたいですし。

 私は家族として出会ったので、怖いと思ったことはありませんが。

 レグルス達が一般的に“猛獣”だと云われていることを、失念してました。


「おい、その虎は、契約獣か?」


「はぁ~。名乗りもしない人間相手に、手の内は晒さないわよ」


 兵士さんの質問に、お母さんが深く溜め息をつきました。

 お母さんの話し方が、いつもよりちょっと雑な感じです。

 お母さんも命令口調が嫌だったのかな?


「っ、す、すまん。俺、いや私はこの【ラディオール】の街の衛兵で、ラジムという。

 その虎は、貴女の契約獣だろうか?」


 一瞬言葉に詰まった兵士さんでしたが、威丈高に振る舞うのではなく、お母さんが話の出来そうな相手と判断したのか、丁寧な応答に変えてくれました。


「ご丁寧にどうも。私は冒険者のシアで、この子は娘のユナ。この()はレグルス、確かに私の契約獣の1匹よ。陰に潜ませることも、縮小させることも出来るわ」


 兵士さん改め、ラジムさんの質問に、レグルスから降りたお母さんが、今度はちゃんと答えます。

 でも、話し方はやっぱりちょっと雑な感じです。

 クラウディアに居るときは、このままなのかな?

 不思議に思いつつ、お母さんを見上げていたら、私を紹介するときに、ひょいと抱き上げられました。

 左腕に座らせる様な形で、抱っこされてます。

 空いている右手で、レグルスの背中を撫でながら、契約獣であることを認めます。


「この街の教会とギルドに用があるの。通してもらえるかしら?」


 ラジムさんに確認すると、冒険者証の提示を求められ、お母さんが右の腰に手をやり、身分証とは違う小さなプレートの付いた、ブレスレットらしき鎖を外して、ラジムさんに放りました。

 ブレスレットは銀色で、プレートにはアルファベットの花文字みたいな“A”の文字が3つ。


「!? AAA(トリプル)!?」


 プレートの文字を確認したラジムさんが、驚いて小さく叫びます。


「トリプル?」


「ユナにはまだ教えて無かったわね」


 ラジムさんの言葉を拾って、疑問形で繰り返した私に、お母さんが苦笑しながら教えてくれました。

 ハハハ……一般常識みたいなことなので、知識として知ってはいたはずなんだけど、咄嗟に思い至らなかったよ…。


 AAA(トリプル)とは、冒険者ランクのことで、最高ランクの“S”の1つ下のランクを指します。

 ただし、Sランクは単独で古代竜(エンシェントドラゴン)力比べが出来る(遊べる)実力が必要で、現在は人族に1人と魔族に数人、獣人族や妖精族には存在しないらしい。

 なので、AAAランク(若い竜に、数人で挑めば勝てる)は最強の部類になるらしい。


 ついでだと教えてもらったが、冒険者ランクはE~Sまで8段階があって、E~Bが銅、A~AAAは銀、Sだけが金のブレスレットでレベル分けされてるそうです。



 ─────────

 ランク

 ━━S━━生きた伝説

 ━AAA━英雄

 ━━AA━凄腕

 ━━A━━熟練

 ━━B━━一人前

 ━━C━━半人前

 ━━D━━駆け出し

 ━━E━━初心者

 ─────────



 表にすると、こんな感じの認識になるね。

 冒険者登録自体は、年齢問わず直ぐに出来ます。

 そこから上のランクに上がるには、決められた依頼をこなした上で、昇格試験に合格することが、必須らしいよ。


「申し訳ありませんでした。お通りください。

 ただ、契約獣は縮小化させていただけると助かります」


 ラジムさんが謝りながら、お母さんの冒険者証を返してくれました。

 言葉使いも、より丁寧になった感じですね。

 謙った(へりくだった)というより、お母さんが敬うべき強者だと、認識を改めたみたいだ。

 ただ、無意識にレグルスを警戒しているのか、近付くのにちょっと腰が引けてます。


「分かったわ。レグルス」


 お母さんに呼ばれて、レグルスが瞬時に真っ白な子猫へと姿を変えた。

 レグルスの背中に乗ったままだったシリウスは、いつの間にかちゃっかり地面に下りてます。


「有難う御座います」


 小さくなったレグルスに驚きつつ、ラジムさんがお母さんに頭を下げる。

 随分礼儀正しい人だね。

 お母さんが馴染ませてくれてた知識の中では、衛兵さんは一般国民に対して、少々威丈高な態度で接する様相がある。

 ラジムさんみたいな対応は、随分“稀”なはずです。


「良ければ、その姿のままでお連れください。

 本来の大きさだと、街の住民が恐がりますし、陰に潜ませると、契約獣の存在を知られた時に、冒険者や貴族の方達に、絡まれかねませんから」


 苦笑しながら、ラジムさんが忠告してくれました。

 確かに、普通に暮らしている街中に、猛獣がいたら恐怖で戦き(おののき)ますね。

 “陰に潜ませると絡まれる”というのは、“不意討ちを狙った”とか、“暗殺でもする気なのか”など、因縁をつけられるってことですね。

 居ますね。弱いくせに良く吠える小悪党とか、自意識過剰な権力至上主義者とか。


 でも、やっぱり意外です。

 ラジムさんは、衛兵だと言いました。

 領主様は、余程寛大なんでしょうか?

 貴族批判は、不敬罪を問われかねませんよ?

 大丈夫なのでしょうか……。


「忠告は有り難いけど、いいの?」


 お母さんが言外に尋ねれば、ラジムさんはやっぱり苦笑で返します。


「大丈夫ですよ。このラディオールの街の領主様は、国王陛下の信頼が篤く、国民に対して他の血統主義の貴族の様な横柄さはありません。

 何より、この街には横柄な貴族ほど、寄り付きませんから」


「あぁ、そっか。逆側にある“ボルヴァルディの森”と、北の“ドラグーン山脈”のせいね」


「ええ。北のドラグーン山脈は、人族では登頂も儘ならない険しい山ですし、西側にあるボルヴァルディの森は、こちら側のリシャの森と違って、高レベルの魔物が頻繁に出没しますからね。

 その上、魔物の大量発生(モンスタービート)を恐れてか、高位貴族ほど近寄りません。

 まぁ、下位貴族ほど横柄な者が多い気はしますが…」



 話に出て来たドラグーン山脈は、大陸の北西に斜めの逆Y字型に聳える(そびえる)山脈で、Y字の頭の先がラディオールの街の北側にある。

 結構な標高の山で、冒険者でもAAランク以上じゃないと、登頂は難しいとされてます。

 まあ、獣人族だと体力や身体能力が発達してるので、ヒョイヒョイ越えて来るみたいですが。

 ただ、裾野は思いの外登りやすく、素材確保に冒険者が踏み込むのはざら(・・)にあります。


 私達のお家のあるリシャの森は、大陸中央にあるけど、大陸の南西側にも大きく拡がったボルヴァルディの森がある。

 リシャの森もボルヴァルディの森も、中立地帯なのだけど、中立地帯になった経緯が違う。


 リシャの森は、お母さん(主神)やお姉ちゃん達(三柱の女神)のお気に入りで、顕現する神々の目撃情報が多く、聖域指定されてしまい、荒らすことを禁止するために、中立地帯とされたらしい。

 リシャの森で、悪行を働くと天罰が落ちるとまで言われてます。

 聖域ではあるけれど、荒らさなければ天罰を受けることもないため、端の方に幾つか街道が通されていて、人の往き来は少なめだけど、そこそこ賑やかです。

 ただし、奥に入るほど静かではある。

 私達のお家のある辺りとかね♪

 薬草や野草の宝庫なので、低ランク冒険者が採取に入ることも多いです。


 逆に、ボルヴァルディの森は、魔素濃度が高くて、高レベルの魔物が頻繁に出没するので、人族が踏み込むのは結構大変。

 森の向こう側には、魔族の国があり、不可侵条約を結んだ時に、ボルヴァルディの森を中立地帯に指定したらしいです。

 魔素濃度が濃すぎて、数年置きに魔物の大量発生(モンスタービート)が起きるらしく、魔族側と人族側の双方から間引きを行うため、中立地帯にせざるをえなかったみたい。

 だけど、この森の魔物は、素材的には希少でもあるので、高ランク冒険者にとっては、丁度良い稼ぎ場所らしいね♪


 つまり、ここラディオールの街は、北側には標高の高い山脈があり、東西も2つの中立地帯(森)に挟まれた、ちょっと面倒臭い位置にポツリとある、人族国家の辺境なのです!


 ラディオールの街は、生産職や冒険者にとっては、かなり都合の良い立地らしくて、危険であっても暮らしやすいこの街に、定住する者も少なく無いらしい。

 土地が広いから、農業も酪農も盛んで、“農産の街”として知られていますが、別名は“高ランク冒険者の街”です。

 街に暮らす人々は、農業をする人でも、Bランク冒険者と同じくらい強くて、街中ではAランクやAAランクの冒険者が、普通に生活してるそうです。

 高名な職人や有名な冒険者は、大抵この街を拠点としているようだけど、危険度も高いため貴族はあまり近付かない。


 あ、街や冒険者について考えてる間に、お母さんに運ばれました。



 高ランク冒険者は、貴族になることも可能なため、他の人達みたいに並んで待たずに、“貴族門”と呼ばれるチェックのゆるい門から、優先的に街へと入れるらしいけど、お母さんは一般の人達が使う“通用門”の方に並びました。


「? 宜しいのですか?」


 ラジムさんが不思議そうに、お母さんに尋ねます。


「いいの、いいの。急ぎじゃ無いし、このくらいの人数なら、直ぐに順番が来るでしょ?」


「ええ。あと15分ほどじゃないかな…」


「ふふっ。そのくらいなら、待ってても大丈夫でしょ。娘と遊んでるわ♪」


 わ~い♪

 お母さんと遊べます!

 時間は大切ですからね。何をして遊びましょう?

 ん~。他人の迷惑になっちゃ駄目ですね~。

 何がいいかな~。

あ~、街に入れなかった…。


すみません。

中途半端ですが、ちょっとお休みします。

ストックが切れて、駆け込み投稿が続いたので、息切れしました。

少しお休みして、ストックを増やそうと思います。

2週間くらいで、復活するつもりなので、次回投稿は、12月の16日を考えてます。


1章ごとに1日しか進まない、超スローペースな物語ですが、読んでくださり、有難う御座います。

また、気にかけて頂けたら幸いです。

少しの間、お休みします。

また、お会いしましょう。

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