出来上がった壁と、同居人。ドワーフさん達は、匠な人達でした。
ぅわぁお♪
壁、完成です。
私達は、目の前の壁に唖然としてる真っ最中です。
だって、私達の目の前にあったのは、以前の岩肌剥き出しな壁じゃなく、所々に繊細な彫刻が施された、「なにコレ芸術品?」とでも問いたくなるような壁。
洞窟感が一切ありません。
そう言えば、ドワーフさん達は、造る事に特化してるのでしたね。
お母さんから貰った知識の中に、有りました。
え~と、どういう反応が正解ですか?
満面の笑み? 苦笑? 薄ら笑い?
はたまた、爆笑すべきですか?
見惚れるくらい素晴らしい技術とデザインです。
が、自宅の壁にここまでの芸術は要らない気がします。
しかも、洞窟内。
違和感バリバリです。
いや、貴族様の御屋敷とか、王宮とか国立の建築物なら、ありだとは思うよ?
でも、ここはリムの自宅で、どちらかと言えば在るがまま、自然のままの洞窟です。
他の壁が岩肌そのままなせいで、違和感が半端無いです。
ドワーフさん達は、唖然とする私達を他所に、ドヤ顔で満足げに頷いていたり、三つ編み頷髭を撫でながら難しい顔をしていたりと、それぞれ違った雰囲気を醸し出してます。
「…やり過ぎじゃな」
リムがぽそりと呟きました。
聞き取ったお父さんやお爺ちゃん、レグルスとシリウスが無言で頷いてます。
「すげぇなぁ」
「エディ…それは、何に対してですか?」
「や、細けぇなって」
「ああ。技術に対してですか───」
「兄上、ドワーフの仕事は、凄いな!」
「正確・迅速・繊細だとは聞いていたけど、ここまでとは…」
「この速さなら、家一軒建てるのに、数日で済みそうだな」
「そうだね。人海戦術で行えば、まる1日で人の暮らせる家が建ちそう」
お兄さんズは、ドワーフさん達の技術品評中だし、ヒュー様とルクレヒト様は、ドワーフさん達の仕事の速さを讃えてました。
ん~。
素直に称賛したいのに、壁のあまりの違和感に、言葉が全部呑み込まれてます。
「しゅごいねぇ…ふぇっ!?」
細かなレリーフ細工は、可愛らしい花と蔦、小鳥がモチーフになっていて、石壁とは思えない程、滑らかな質感です。
思わず、壁に彫られた小鳥に触れたら、ゴゴゴゴゴと重い振動音と共に、壁がスライドして行きます。
「「『『隠し扉……』』」」
「「「ふぉぉぉぉぉっ!」」」
お父さん、お爺ちゃん、レグルス、シリウスが呟いた言葉と、ポッカリ開いた出入口に、ヒュー様とリムと私の叫び声が続きます。
凄い!
隠し扉!
からくり屋敷みたい!
私とヒュー様、リムが扉の仕掛けを確認しに駆け出します。
が、扉の裏側を確認しても、仕掛けらしきものが見付からない。
3人でわちゃわちゃと扉のあちこちを確認してみても、分からない。
「凄いのじゃ! ドワーフ達よ、この仕掛けはどうなっておるのじゃ!?」
「フフフン。凄かろうッス」
「オイ達の技術と魔法の合作ッス」
「昔ながらのやり方に、最近覚えた魔法を加えたッス」
「上手く出来たッスね」
「む。まだ、甘い所もあるッスけどな」
リムがドワーフさん達に詰め寄るようにして聞けば、すんなりと仕掛けを教えてくれます。
成る程。
からくり部分は、魔法が代用されてるから、目に見える仕掛けが無かったんですね。
確かに、扉の辺りに魔素が集まっていて、キラキラしてます。
「あら、あら、あらなのん?」
「新しいお部屋なのん?」
「埃っぽいのん。お掃除するのん?」
「お片付けも必要なのん?」
「いや。新しい出入口が出来ただけじゃ。
ふむ。ブラウニー達にも部屋は必要じゃの。
サクッと増やすかの♪」
ちょこちょこと近付いて来たブラウニーのおば様達が、扉の向こうを覗き込み、ソワソワと坑道を確認してます。
そんなブラウニーさん達を見ていたリムが、増築を宣言しました。
「ん? なら、オイ達が造るッスか?」
「ん? そうじゃのぉ。ふむ。
ある程度、我が拡げるのじゃ。二部屋あれば足りるじゃろう?
ドワーフ達には内装を頼みたいのぉ。
我は在るがままで事足りるが、ブラウニー達には人の住処の様相が落ち着くじゃろうし」
「分かったッス! 任せるッスよ」
「迷惑かけた礼代わりッス。全力で整えるッスよ」
「「「「「オー!」」」」」
リムがお願いすれば、ドワーフさん達は張り切り、ブラウニーさん達は嬉しそうにピョコピョコ飛び跳ねます。
「家主様、家主様。ありがとうなのん。嬉しいのん」
「うむ。喜んで貰えるなら、我も嬉しいのじゃ。
どれ、サクッと拡げるぞ」
言うが早いか、リムが本来の姿へと戻ります。
「「「「「「どえぇぇぇぇぇっ!?」」」」」」
「「「「───っ!?」」」」
ドワーフさん達とブラウニーさん達が、リムの姿に驚愕しました。
………。
そう言えば、リムがドラゴンだって、誰も教えてませんでしたね。
リムってば、ずっと人化したままでしたし。
まぁ、ドラゴンといっても、リムは小さいですけどね。
『じゃ、拡げるのじゃ♪』
──────ガガガガガ。
────ザカザカザカ。ドシャドシャッ。
───ドガンッ。ガラガラガラ。
リムが鋭い爪で、岩肌をチーズか常温バターを削るみたいに、掘り進みます。
前の世界で見た、ブルドーザーを思い出しました。
あれよりずっと強力で、速やかですが。
『ふむ。まずは、一部屋出来たのじゃ。こんな物かの?』
リムが納得いく大きさに堀広げられた新しい部屋は、大人の男の人が4人くらいで普通に生活出来そうな広さです。
『さて、もう一部屋じゃの』
「家主様、家主様。ありがとうなのん」
「この部屋だけで、十分なのん」
「こんなに広く使って良いのん?」
「前は、もっと狭かったのん」
『なんじゃ? これだけで良いのか? 遠慮せずとも良いのじゃぞ?』
「ありがとうなのん。十分なのん。前に居た場所より、ずっとずぅっと広いのん」
『まぁ、御主らがそう言うのならば、ここで止めて置くかの』
部屋を増やそうとしていたリムを、ブラウニーさん達が止めました。
まぁ、ブラウニーさん達は、私と同じくらいの背丈の小柄な種族ですもんね。
この広さなら、普通に生活するのに、一部屋あれば十分です。
と、それより。
ブラウニーさん達は【念話】が使えるんですね。
ドラゴン姿のリムと話が通じてます。
「さて。ドワーフ達よ、内装を頼めるかの?」
「「「「「「任されよ!」」」」」」
リムが再び人化して、ドワーフさん達にお願いしたら、ドワーフさん達が一斉に新しい洞窟を整え始めます。
どんなお部屋に成るんでしょう♪
とっても楽しみです。