壁破壊事件の次は…。どちら様でせう?
「「「「「………」」」」」
ドワーフの皆さんが絶句してますね。
まぁ、開いた穴の大きさが大きさですしね。
「ま、待て、待て、待て、待ってくれッス! オイが開けた穴は、こんなに大きく無かったッス!」
「あ~、すまぬ。加減を間違うて、我が拡げてしもうたのじゃ。
故に、自力で直すつもりじゃったのじゃ」
「ブッハッハッハッハッ。リムの嬢ちゃんは面白いッス
ほれほれ、皆の衆。
サッサと直すッスよ! オイ達の方が石や岩には詳しいッス。
穴の跡なんか、分からない程綺麗に直すッスよ」
班長さんの掛け声に、ドワーフさん達が動き出します。
私達は邪魔になりそうなので、穴の内側へと戻る事になりました。
*~*~*~*~*
………。
誰?
「誰じゃ? 御主ら」
穴を抜けた先には、見知らぬ小人さん──3歳児と同じくらいの背丈のおばさま──達が数人。
私達が残して行った、寛ぎスペースが占拠されてますね。
「ん? ここの家主さんですのん?」
「その通りじゃが、先に名乗ってくれんかの? 御主ら、ブラウニーじゃよな?
なぜに姿を晒しとる?
御主らブラウニーは、姿を見られる事を嫌って居ろう?」
家主に見つかっても、おばさま達はみんな揃って小首を傾げただけです。
リムが不思議そうに、次々と疑問を投げ掛けます。
………。
不法侵入だろう事は、どうでも良いのかな…。
リムが気にしてないなら、良いのかな?
お父さんを見上げれば、仕方無さそうに苦笑してました。
「誰も居ない間に、お邪魔してたのん」
「別に、悪さをせぬなら、構わぬが?」
「そうなのん? でも、一応謝罪は受け取って欲しいのん。
勝手にお邪魔して、ごめんなさいなのん」
「うむ。謝罪は受け取ろう」
「ありがとうなのん。ところで、迷惑で無いのなら、ここに居着いても良いかしらなのん。
以前居た場所から、逐われてしまったのん。
新しい家を探していたら、ここを見付けたのん。
ここは、居心地が良いのん。
勿論、小さな報酬を貰えれば、お仕事沢山手伝うのん!」
ブラウニーさん達は、押し掛けお手伝いさんですか?
というか、リムの質問はサラッと無視させてませんか?
『ここは、リムが暮らし始めた為に、魔素が集まり始めているからな。
精霊や妖精、種族的に日常生活を魔法で行う者達には、居心地も良かろうな』
『ですね。それに、ブラウニーが姿を現して居るのは、姿を消せぬ程に弱っている為では?
気配が随分と希薄です』
『だね~♪ 逐われたって言ってたけど、大分虐められたみたいだね。
傷こそ目に見えないけど、瞳に翳りが見えるもん』
レグルス達契約獣が、思い思いにリムの疑問の回答をあげてます。
え!?
ブラウニーさん達、苛められてたんですか!?
怪我とかしてないですか?
私に出来ることって、無いですか?
ハラハラしはじめた私の頭を、優しく撫でる手があります。
撫でてくれたのはお爺ちゃんです。
大丈夫と言われたみたいで、ちょっと安心しました。
お母さんに教えて貰った事が頭に浮かびます。
妖精族と呼ばれる者達は、皆さん一点特化型が多いそうで、行き過ぎ・やり過ぎ・拘り過ぎて他種族に煙たがられる事があるらしいです。
リムとの対話を聞いていると、どうやらブラウニーのおばさま達もやり過ぎた様です。
ブラウニーの特化は“家事仕事”です。
故に、以前居た場所でも家事をしていた様なのですが、お手伝いし過ぎて、家主さんが何もしなくなっちゃったらしい。
お手伝いをしても報酬は貰えない、報酬を渡さないのに仕事をしないと責められる、報酬無しに魔法を使えばブラウニーさん達が疲弊する。
と、環境がどんどん悪化していき、とうとう「仕事をしないなら出ていけ!」と、お家を追い出されてしまったそうです。
報酬を貰えずに居た為に、ブラウニーさん達は大分お疲れ気味で、魔素を求めて途方に暮れていた所、ここの雰囲気に惹かれて洞窟に入って来た。
ら、魔素は十分だし、誰かが暮らしている形跡もある。
ここならば、家主さんが良ければ新しい家になるのではと、リムの帰りを大人しく待っていたということらしい。
「うむ。御主らの言い分は分かったのじゃ。
我が家で良ければ、居着くと良い♪
我も一人暮らしを寂しく感じていたのじゃ、同居仲間は歓迎するのじゃ♪」
「「「「「ありがとうなのん」」」」」
リムの言葉に、ブラウニーさん達が一斉に頭を下げました。
魔力が足りず、姿を晒してしまう事は、ブラウニーさん達には不本意らしいですが、回復するまでは仕方無いと諦めているんだそう。
リムとしては、自分以外の気配があるだけでも十分だけど、話が出来るのなら、姿を消せる様になっても会話だけはして欲しいと、同居においての条件付けをしてました。
ブラウニーさん達は直ぐ様快諾。
仲良くなれて良かったです♪
リムとブラウニーさん達が話し合いをしていた間、ドワーフさん達は黙々と壁を修理してました。
チラリと背後を伺えば、なんだか凄い事になってます。
い、いいのかなぁ。