まずは、ご飯にしませんか? 犯人探しはその後で。
相変わらず、説明文過多かもです。
スミマセン。
「…おなかへっちゃ」
ドワーフさん達が犯人推測をするのを見てたら、私のお腹がグゥ~と鳴りました。
お腹の虫さんは、今日も元気ですね。
リムの望みは、謝罪であって、断罪じゃないです。
あんなにヒートアップしてたら、多対一の多勢に無勢、虐めに成っちゃいそうですし。
一旦、落ち着きましょう♪
お兄ちゃんの腕から下りて、近くに来て居たお父さんの洋服の裾を、ツイツイと引っ張ります。
大きな音が飛び交う中で注意を引くには、これが一番ですね。
お父さんが気付いて、私を抱き上げました。
あや? しゃがんでくれればと思ったんですが…。
まぁ、いいか。
「おとぉしゃん、おにゃかへりました…」
抱き上げられた私のお腹が、再びグゥ~と鳴ります。
周りの喧騒に掻き消される事無く、お父さんのお耳が音を拾ったらしく、一瞬考える様な間が空き、次いで納得したように頷きました。
「おや。そういえば、ご飯がまだでしたね。
みんな、ユナがお腹を空かせてますから、お昼にしましょう。
班長! 犯人探しは後にして、昼飯にしよう!
子供達が腹を空かせてる」
お父さんは、ドワーフさん達の話し合い? をぶった斬り、私を腕から下ろすと、サクサクと厚手の絨毯を【無限収納】から取り出します。
あ、ドワーフさん達が驚いてる…。
そういえば、【無限収納】って珍しい技能でしたね。
私が自分の【無限収納】を使うのは、家族以外の前では禁止されてたので、ちょっと忘れてましたよ。
良かった~。
自分の【無限収納】使わなくて…。
まだ、ヒュー様達にすら話してないですからね。
他の人達に知られるのは、もっと大きくなって、自分の身は自分で守れるように成ってからじゃないと、危ないですからね。
「なんだなんだッス!? アンタ、【収納】持ちッスか!」
ドワーフの班長さんが、お父さんに詰め寄ります。
「ああ。ほら、それよりも、飯だ! 飯!」
絨毯の上に次々とお弁当を詰めたバスケットを取り出しながら、お父さんが班長さんを適当にあしらってます。
お兄さんズはそれを横目に、我関せずでサッサと絨毯に腰を落ち着け始めてます。
お爺ちゃんはヒュー様を抱えたまま上がり、ルクレヒト様は遠慮がちにドワーフさん達を見てます。
ドワーフさん達も誘いましょう♪
ドワーフさん達は、岩肌に直に座る方が慣れているらしくて断られました。
私達としては岩肌に直だとちょっと辛いので、遠慮無く絨毯で場所を確保させて貰います。
わぁ~い♪
本日のご飯は、ピクニックランチですね♪
背景はちょっと寂しい──剥き出しの岩肌ばかり──ですが、皆でワイワイ食べるのは、どんな場所でも楽しいですから。
あんなにヒートアップしていたドワーフさん達でしたが、ご飯を前にして空腹を思い出したのか、今は皆さん静かです。
さっきまで居なかった数人も、戻って来たみたいです。
全員揃ったので、各々食べ始めます。
今日はサンドイッチじゃなくて、おむすびです。
おかずも和食寄りで準備してます。
バスケットから和食系料理が出てくるのって、微妙に違和感ありますね。
でも、食べます!
煮物に塩鮭、お新香各種。
佃煮に白和え、蒸かし芋。
全部、手作りです!
美味しく出来てます♪
み~んな笑顔。
ご飯がどんどん減っていきます。
作り手として、嬉しい限りです。
ドワーフさん達は、ドワーフさん達で、簡単な竈を作って煮炊きをしてます。
美味しそうなスープの匂いが漂ってます。
*~*~*~*~*
さて、ご飯は食べ終えたし、お片付けも済みました。
ヨシッ!
元気充填完了です♪
ん~、リムのお家の壁を破壊したドワーフさんは、誰なんですかねぇ。
ご飯を終えたドワーフさん達が、ご飯前に居なかった3人に、確認を取ります。
結論。
犯人はクースさんでした。
「…っ、本当に悪かったッス。申し訳ないッス」
クースさんは、涙目になりつつも、リムに向かって深々と頭を下げます。
壁の向こうに消えていった時のふてぶてしさは皆無です。
なんでも、クースさんは極度の人見知りで、口下手さん。
口下手というか、緊張のあまり言葉選びに失敗し、必要以上に敵を作っちゃうらしいです。
前の職場も、それで嫌味ばかりを言われて、ノイローゼ気味になって辞めたそう。
今回こそは、なんとか仕事を続けられる様に、人見知りの緊張が解けるまで、口数を減らして、最小限の問答で仕事をしていたのに、人様の家の壁を壊す大失敗。
軽いパニックになって、咄嗟に逃げてしまったらしいです。
「もう良いのじゃ。壁なんぞ、すぐに直せる。
我はちゃんと謝って欲しかっただけじゃ。
謝ってくれたのじゃから、これで終いじゃ♪」
クースさんが下げた頭を、リムがワシャワシャと撫で、笑顔で赦します。
幼女に慰められる小柄なおじさん…。
なかなかにシュールな絵面な気はしますが、一応大団円ですかね?
あれだけ怒っていたドワーフさん達も、クースさんの話を聞き、仕方がなさそうに苦笑しています。
班長さんが、「責任は上の者が取るものだ」と言って、リムのお家の壁を直してくれると言い出せば、他のドワーフさん達も「なら、連帯責任ってのもあるよな」と、全員で直してくれる事になりました。
皆さん仲間思いの良いドワーフさん達です。
鬼ごっこの鬼だった私達ですが、ちゃんと捕まえられて良かったです。
クースさん、実は責任感が強くて、罪悪感に押し潰されそうだったらしく、お昼ご飯の味が分からないくらい縮こまってたんだって。
“悪いことをしたら謝る”って、自分の為にも凄く大事な事なんだねぇ。