ドワーフさんがいっぱい? 鬼ごっこの終点ですが…。
さて。
あちこち曲がりくねった道を進み、漸く駐留場所に着きました。
案内して貰いながら、ドワーフさんと沢山お話しましたよ。
ドワーフさんのお名前も教えて貰いました♪
ドワーフさん改め、フィリップさんはドワーフとしては若年で、50歳を少し過ぎた所なんだって。
ドワーフは、大体200歳が平均寿命だもんね。
エルフは700~800歳で、1番長生きなのがドラゴン。
ドラゴン達は、上位になる程、万年単位で生きてるんだよね。
クラウディアには、不死は存在しない。
不老は存在しても、アンデッドにすら消滅や浄化という“死”があるんです。
これは、お母さんが教えてくれた知識にちゃんとありました。
と、またズレた。
え~と、そう!
フィリップさんだ。
フィリップさんは、歳は若くても採掘ではとっても優秀で、今回の採掘隊の先見役を担ってる。
「ゥオーイ、みんなぁ、班長~ぉ!」
「「「「「ん?」」」」」
「どーしたぁ、フィル坊!」
丁度お昼時が近付いてたのもあって、ドワーフさん達はわらわらと集まり出してました。
フィリップさんが、担いでいたツルハシを掲げて声をかければ、一斉にこちらを振り返ります。
個人的に呼んだのは、この隊の班長さん。
責任者さんです。
「班長! ちぃと、問題発生ッス!」
タッタカ駆け出し、フィリップさんが班長さんと合流して、私達の事を説明してくれてます。
「オーイ、元々の状況を説明して欲しいッス」
「フム。アンタ等ッスかい? フィル坊のいう被害者とやらは?」
話を終えたフィリップさんが、班長さんを連れて、私達に近付いて来ます。
「ああ。初めまして。僕は冒険者のラズヴェルト。家族で娘の友人宅に遊びに来てたんだが──」
今度は、お父さんがリムを交えて、班長さんに説明します。
「取り敢えず、エディ達は他の連中に会うッスよ。犯人見付けるッス」
お父さんとリムが説明している間に、お兄さんズを中心に私達はドワーフさん数名に紹介されるらしいです。
フィリップさんが、鼻息荒めにエディ兄さんの腕を引きます。
「と。分かった、分かった」
低い位置からグイグイと引っ張られて、エディ兄さんが軽く多々良を踏みます。
駐留場所に着いて直ぐ、お父さんの腕から、クリスお兄ちゃんの腕へと移された私は、抱っこされた状態のままの移動です。
ヒュー様もお爺ちゃんに抱っこされっぱなしです。
「みんなぁ、こん人達を知ってるヤツは居るッスか?」
エディ兄さんを引き摺る様にしてドワーフさん達の元に辿り着いたフィリップさんが、まずは確認とそこに居た全員を見渡します。
「あ~、オイは坑道で見たッスよ?」
「「オイも」」
「オイも見たッス。班長と居る嬢ちゃんが、なんだか怒ってたッス」
数人が頷いてますね。
あの人達は、多分フィリップさんを確保した時に、わらわらと散開して行った人達ですね。
「──って事らしいッス! 人様ん家の壁を破壊した上、謝罪も無しに逃亡したヤツがいるッス!」
「「「ナンダトォ!」」」
フィリップさんから事情を聞いたドワーフさん達が、一斉に怒気を発してます。
ドワーフさん達は、本来責任感の強い職人気質で、礼儀には煩い人が多いらしいです。
が、稀に当てはまらない人もいます。
今回は完全にその“当てはまらない人”が犯人ですね。
「今ここに居ねぇのは、カラオとクース、それにドノバンッスね!」
「カラオは違うッスね…アイツァ、オイ以上に礼儀に煩いッス!」
「なら、ドノバンッスか? ドノバンは、ちょっと緩いッスよ?」
「いや、それならクースだって緩いッス!」
ドワーフさん達だけで、どんどん犯人探しが加速してますね。
………。
方言? ですかね?
フィリップさんだけなら、気にならなかったのですが…。
なんだか「~ッス」って言葉が、全体に飛び交ってます。
しかも、フィリップさんはそれほどじゃ無いですが、他のドワーフさん達の声は、割りと低音。
なぜだか違和感が凄いです。何故?
と、現実逃避をしていたら、お父さん達の話し合いが終わったらしく、私達に合流しました。
「リムの嬢ちゃんには、本当に申し訳ないッス。なんでも越してきたばっかりだったそうッスなぁ。
新築の家に穴なんざ開けて、家主に謝罪も無く逃げるなんざァ、ドワーフの風上にも置けねぇッス」
「いや、越しては来たばかりじゃが、新築では無いのじゃ」
リムが班長さんの言葉を、一部否定します。
そう言えば、元々あった洞窟でしたね。
それを拡げたのはリムですが、新築というより改築した感じですもんね。
「ん? そうだったッスか? まぁ、どっちにしても、オイ達ドワーフの印象を悪くしたのは事実ッスな。
いかに同胞といえど…いや、同胞だからこそ、取っ捕まえて、キチンと謝罪させてやるッス!」
……班長さんが熱い。
犯人探しが再び加速しそうです。