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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第2章─街へ行こう! 世界を知るための第一歩?
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森の出口で最後の調整! 魔道具と身分証?

 森の出口が近付いてくる。

 あと少しで、街道という辺りで、お母さんがレグルスを止めた。


「ユナ、【無限収納】から魔道具(マジックアイテム)を出してくれる?」


「マジックアイテム? どれ?」


「【風の言祝(ことほぎ)】と【氷霧の微笑】と【春雷の歌声】を1つずつと、【強者の剛腕】に…あとは、【女神の揺り籠】かな? を3つずつ」


 アイテムウィンドウを開いて、【魔道具(装飾品)】を選択する。

 名前の上がった魔道具を、個数を指定して取り出します。

 最初の3つは、それぞれ風・氷結・豪雷の“魔法強化”効果のあるアクセサリーだ。

【風の言祝】は、鮮やかな緑の石のイヤーカフ。

【氷霧の微笑】も、深みのある青の石のイヤーカフ。

【春雷の歌声】は、艶やかな蜜色の石の指輪(リング)


 残りの2種も、それぞれ効果の高い物で、特別感が半端じゃ無いです。

【強者の剛腕】は、“物理攻撃強化”のバングルで、表面に繊細で優美な模様が彫られた、美術価値すらかなり高いのがよく分かる品だし。

【女神の揺り籠】は、“状態異常無効”効果のビブネックレスで、中央に嵌め込まれた菫色の石が、豪奢でありながら気品溢れる美しさです。


 ところで、この5種類の魔道具には、“伸縮”効果もあるのですが…。


「はい。どうするの?」


「レグルス達に着けるの。

 普通、野生の動物は飾り物なんて着けないでしょう?

 だから、飾り物を着けていれば、誰かの契約獣だって一目で分かるわ。

 本来の姿のままで、街中に入れる様に、今の内に着けちゃいましょう♪」


 シリウスには【氷霧の微笑】、レグルスには【風の言祝】、アルタイルには【春雷の歌声】を、右耳と右足の指に。

【強者の剛腕】と【女神の揺り籠】も、それぞれの左前肢や左足首と、首(胸元?)に飾らせて、お母さんは1度遠目で確認したあと頷いた。

 私もお母さんに下ろしてもらって、3匹の全体像を見たら、一気に気分が上がった!

 3匹とも凄く似合う!


「ふおぉ~、かっこいい~♪」


「ふふっ。ね、やっぱり似合うわよね♪」


「シリウス、きれ~い。アルタイル、にあう~。レグルス、かっこいい~♪」


 シリウスは、凛とした美しさが強調され、銀の毛並みと相まって、氷の彫像のような涼やかなれど、麗しいと言える雰囲気がある。


 アルタイルは、金褐色の羽毛に金のベースが埋もれ、菫色の石が鮮やかに浮いて見えて、鳥類の王子様みたいな、気品溢れる装いになってる。


 レグルスは、威風堂々とした佇まいと、純白の毛皮に金の飾り物が、華やかさを添えて、森の王を思わせる風格を漂わせている。


 3匹が3匹とも、それぞれに良く似合い、「このすっごく格好いい3匹は、私の“家族”なんだよ」と、自慢したくて仕方ない衝動に駆られた。


「さてと、あとはステータスもちょっと弄らないとね。

 今のままだと、ユナに注目されちゃいかねないし。

 取り敢えず、3匹の“種族”と“強さ”を誤魔化さないと。

 契約者も、ユナじゃなくて、私にしておきましょう」


 流石に3歳児が、中型とはいえ“聖獣”を従えてたら、狙われたり、絡まれたり、疑われたりと“百害あって一利無し”って感じだろうね。

 うん。お母さんに任せよう♪


「それと、ユナは“身分証”と、私達の分の魔道具を出しておいて。

 魔道具は【女神の導き】と【精霊の誘惑】と【強者の養い子】がいいかな。

 …一応【聖女の(かいな)】も着けておく方がいいか」


 私達ってことは、お母さんと私の2人分だよね。


【女神の導き】と【精霊の誘惑】と【強者の養い子】は、どれも違う色(順に紫、透明、赤)の石の金の指輪。

 これは、それぞれ“追跡”と“魔力攻撃無効”と“物理攻撃無効”の効果のある魔道具だね。

【聖女の(かいな)】だけは、特別製。金のイヤーカフなのだけど、緻密な模様の刻まれた美術品みたいな魔道具で、効果は“精神攻撃の無効”っていう、ちょっとチートな装飾品です。

 状態異常無効の効果の(罠や暗殺などの回避に使われる)魔道具は、わりと一般的に普及しています。

 状態異常とは、毒や麻痺といった“身体にのみ症状が出た状態”の異常を指します。

 逆に、恐慌や魅了などの“精神に異常を来すことで、身体に影響を及ぼした”状態は、精神異常に当たります。

 なので、精神“攻撃”無効(誘惑や撹乱の回避)効果は、とんでもなく希少らしいです。


 ん~。あと、これもいるかな?

 あれば使えそうだけど…。

【春風の囁き】という、虹色の石を嵌め込んだ、ブローチ型の魔道具も一緒に取り出す。

 これは、“魔力を込めておく(登録しておく)”ことで、“相手を認識”して声を飛ばせる魔道具です。

 複数の魔力を登録出来るので、生活に余裕があれば、1家族で1セット(3個)は所有しているし、大規模なものなんかは、国が所有(軍事に使用)してたりします。

 無線機(携帯電話?)の様に使えるから、何かの役に立つかも知れません。


 ………。


 魔道具はともかく、“身分証”って…ぁ、そういえば【無限収納】にあったかな?

 詳細を確認しないで、【雑貨】に放り込んだかも…。


 ぁ、やっぱりあった!


「お母さん、“みぶんしょう”ってこれ?」


 取り出したのは、キーホルダー型のドックタグ。

 右上の隅に、藍色の石が嵌め込まれた乳白色の板に、【名前】【年齢(誕生日)】【出身地】が彫り込まれてる。


「そうよ。成人するまでは藍色、成人した後は未婚なら翡翠色、既婚者なら深紅の石が嵌め込まれるのよ。

 子供を持てば、左下に男の子なら黄緑、女の子なら薄桃色の石が嵌め込まれるしね。

 あと、成人すると【職業】も彫り込まれるわ。

 ただし、ステータスの【職業】とは、記載される意味が違うの。

 ステータスの【職業】は、1番適性のある職業という意味で、身分証のはその職に就いているという意味よ。間違えないようにしましょうね♪」


 お母さんのを見せてもらったら、右上に深紅の石と、その対角線上に薄桃色の石が4つ並んでます。

 既婚者で、4人の娘がいるってことですね。


 ……。


 ? 娘4人は、お姉ちゃんである3人の女神様達と私だけど、既婚者ってことは、旦那様がいるってことだよね?

 お母さんの旦那様ってことは、私のお父さん?

 あとで聞いてみよう!


 あ、【職業】の欄には、“冒険者”と“薬師”と“魔道具技師”の3つ(私のには“一般国民”だけ)が彫られてました。


(“国民”って職業なのかな?)


「は~い。…でもこれって、ふつうは産まれたときから、2しゅうかん(週間)(10日)いない(以内)に、きょうかい(教会)しんせい(申請)して、もらうやつだよね?」


「ええ。ユナと私のは特別ね。教会を通さずに、私が造っておいたの。

 大丈夫、他の人の身分証とまったく同じ物で、教会の書類にも細工をしておいたから、ユナの身分証も一般的なそれと変わらないもの」


 …いいのかな?

 まぁ、そうでもしないと、【転移者】に身分なんて存在しないもんね…。


 身分が無ければ、国どころか街にすら、入ることも滞在することもできない。

 それが例え“奴隷”であっても、“貴族”であっても、身分証は“存在を保証”する物らしいからね。

 身分証には、本人を認識させてあるので、例え紛失しても他人が使用することは出来ないらしく、大銅貨1枚(100円)で再発行が可能だ。

 お財布に優しい料金設定だよね♪


 ─ただし、2度めは無い。


 2度以上の紛失は、犯罪行為(身分の偽証や譲渡)の可能性を考慮して、私財の半分以上を教会と国に提出(奉納や献上?)する罰則が課せられる。

 発行自体は、罰則をクリアすれば、行ってもらえるらしいけどね?


 紛失と言っても、何処かに落とした場合は、教会に行って仮の身分証(木製)を、小銅貨1枚(10円)で借りて、半月(3週間(15日))程返却を待つことが出来ます。

 身分証を拾った者には、優先的に教会への返却義務が生じる為に、落とした場合なら、戻って来る確率が高いからです。


 返却義務を怠ったり、拾得物である“他人の身分証”を悪用すると、自分の身分証を剥奪(結構な重罪扱い!?)されます。

 剥奪された場合、再び発行されることはありません。

 なので、身分証に纏わる犯罪は思いのほか少なく、“身分証を拾ってしまった”という言葉が、遅刻の言い訳に用いられるくらいです。


 死亡した場合は“看取った者”、孤独死や変死(冒険者や犯罪者、貴族に多い)などの場合は“第1発見者”に、教会への返却義務が生じるそうです。

 この場合は、最寄りの教会へ返却するのですが、辺境だったりすることもあるので、最優先でなくても、拾得物の所持期限(1週間(5日))以内に返却すれば、罰則は免除されます。

 期限を過ぎてしまうと、事情があった場合のみ、事実確認を行い、実証されれば罰則は(罰金や軽い労働奉仕に)軽減されます。



 さて、魔道具も身分証も身に付けましたよ。


 指輪は、3歳児が幾つもしていると目立つので、お母さんが長めの金の鎖に通して、ペンダントみたいにしてくれました。

 トップにある3つの指輪が、お腹の辺りにあります。

 身分証も、キーホルダーではなく、ペンダントにして胸元にあります。

 身分証は紛失が怖いので、成人するまでは、ペンダントにしているのが普通だそう。


「どっちも、服の下に隠しておいてね。小さいうちは、対外的に魔道具を見せない方が賢明だから。うん、可愛いわね♪」


 イヤーカフを付けて、ブローチを飾った私の頭を、お母さんが撫でてくれます。


「えへへ。おかあさんと、おそろい~」


 嬉しくて、へにゃっと顔が綻びます。

 お母さんも私の頭を撫でながら、にこにこと満面の笑顔です。


「じゃ、行きましょうか♪ 街まであと少しよ」


 再びレグルスに乗せて貰って、街を目指します。

 やっと、お姉ちゃんに“ありがとう”が言える。

 やっと、クラウディアでの本来の生活風景が見られる。

 やっと、家族以外の“誰か”に会える。

 いろんな期待で、胸がいっぱいになって、ドキドキとわくわくで、鼓動が早い。

 さあ、街道に出て、街を目指そう♪

 小さな冒険は、まだまだ続く!

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