おはようございます♪ 今日も1日、元気に過ごそう!
───チチチッ チチッ ピィルルルル。
鳥さん達の声が聞こえる…。
むぅ。
「………ぅにぃ~、あしゃ?」
『ユナ? 起きたのか? まだ火の鐘まで、4刻以上ある、起きるには早いぞ』
上半身を起こしたら、レグルスの小声みたいな【念話】が、頭の中で小さく響いた。
火の鐘は、別名“朝の鐘”。
朝8時に鳴る大鐘楼の刻告げの鐘の音の事。
その鐘が鳴るまで4時間以上……つまり、今は朝の4時前くらいかな?
寝起きで上手く働かない頭で、ぼやっと考える。
私、昨日いつ寝たんでしょう?
え~と、お母さんと話してて………あれ?
もしかして、また寝堕ちた?
………って、アッ!
今日って、リムのおうちに遊びに行くんだよね!?
準備しなきゃ!
『もう起きる! リムのお家に行く準備しなきゃ!』
レグルスに【念話】で返事を返して、モソモソと移動を開始する。
一緒に寝ていたお父さんを起こさない様に、気を付けてベッドから降りようとしたら、フワッと身体が浮いた。
「おはようございます、ユナ。随分早起きですね」
「ぁい。おはよぉごじゃいましゅ、おとぉしゃん」
床に下ろされて、蕩ける様な笑顔のお父さんにご挨拶します。
……………。
………。
…。
お父さん?
何故に無言笑顔のままで、私の頭を撫で続けていらっしゃいますか?
素敵な笑顔は眼福ですが、この撫で撫ではいつ終わります?
そろそろ5分くらい経過してそうなのですが…。
『ラズヴェルト様、寝惚けてる~? おぉ~い』
私の肩によって来たアルタイルが、いまだ私の頭を撫でるお父さんの手を、軽く突っついた。
「ん? おや、アルタイル。どうしましたか?」
『おはよう~、ラズヴェルト様。何時までユナの頭を撫でてるの?
ユナ、困惑しちゃってるよ~?』
「え?」
あれ?
お父さん、私の頭を撫でてる自覚無かった?
え~と、もしや、アルタイルが言ってたみたいに、寝惚けてたのかな。
「すみません、ユナ。大丈夫ですか?
力加減は間違えていないつもりですが、首が痛かったりとかしてませんか?」
自分の行動を振り返って、私の頭に置いたままの手に気が付いたらしく、お父さんが慌てて確認してきます。
「ぜんぜんだいじょうぶ。どこもいたくにゃいの」
撫でられ続けていた理由が分からなかっただけで、絶妙な力加減の撫で撫では、ほんわか幸せを感じられて大好きです。
なので、にぱっと笑ってお返事します。
お父さんは冒険者なので、気配には人一倍敏感です。
そのせいか、毎朝私が起きる前か、私が起きるのと同時に起き出します。
たまに、私より遅く起きる時は、大抵二度寝に移行してる時ですね。
前に「自宅だから出来る贅沢ですねぇ」とか言ってたので、確実です。
にしても、寝惚けた所は初めて見ました。
お父さんは、自己行動の認識と、時間経過の判断が鈍くなるみたいですね。
私は、言葉が拙くなります。
あと滑舌が絶不調。
軽い低血圧なのか、全体的に活性速度が低迷します。
と、話が逸れました。
え~と、そうそう。
リムのお家に行く準備です!
「おかお、ありゃってくる~」
お父さんに見送られ、お部屋を出ますよ~。
扉を閉めて、左手に進めば洗面所です。
洗顔と歯磨きを済ませましょう♪
『珍しい事もあるものだな。ラズヴェルト様が寝惚けるなど、初めて見たぞ』
「しょだね~。おとぉさん、ポヤポヤちてたねぇ」
ぱしゃぱしゃと水を使いながら、合間に付いてきてくれたレグルスと言葉を交わす。
さっき見た珍しい光景に、レグルスが溜め息をついた。
歯磨き、洗顔を終えた私に、レグルスがタオルを渡してくれます。
元の大きさに戻っている──寝るときは大抵小型化してる──らしく、上の方から差し出されてます。
素直に受け取って、お顔の水を拭き取る。
と、お礼はちゃんと言わなきゃですね。
「ぷわっ、タオルありがとぉ、レグルしゅ」
ゴシゴシ拭いたので、息継ぎ失敗したよ。
苦しかった…。
さて、戻って着替えと髪を直しましょう。
……あれ?
私、レグルスに朝の挨拶したっけ?
………。
してませんね。
挨拶出来ないとか、駄目でしょう!
挨拶は大事です!
挨拶は人付き合いの総ての基本です。
疎かにしてはいけません。
「レグルス、おはようごじゃいます…」
遅い? 遅いよね!?
でも、しないままは、それこそ駄目です。
気まずいですが、ちゃんと挨拶するのです。
『おはよう、ユナ。そう気落ちせずとも良い。
挨拶する前にラズヴェルト様の寝惚けに巻き込まれたのだ、疎かになっても仕方無かろ』
レグルスは優しく頬擦りして、私に寄り添ってくれます。
部屋の扉の前で、再び縮むレグルスを待って、そっと扉を開きます。
見送ってもらいましたが、お父さんが二度寝に突入してる場合もあるので、ノックは控えます。
一応、自分の部屋でもあるので、お行儀悪くは無いはず。
『ぁ、お帰り~。ラズヴェルト様、ユナ戻ったよ~』
扉の蔭から中を覗いたら、アルタイルがお父さんに報告しました。
どうやら、お父さんも起き出した模様です。
アルタイルとも挨拶がまだだったので、サクッと挨拶しておきます。
アルタイルも返してくれました。
シリウスは? と探していたら、衣装部屋から声がします。
『ユナ、今日の服はどれにしますか?』
シリウスは常に側に居てくれる家族の中で、唯一の同性なので、普段から装いについての相談役と化してます。
今日も先に選び始めていたみたい。
さて、お友達のお家訪問には、どんな装いが良いでしょう?
サクッと決めて、お土産や朝ご飯の準備をしなくては!
今日も1日、元気に過ごすぞ! おー!