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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第9章─お父さんの悪友? エルフのお爺ちゃんは、とっても元気!
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閑話・また会えた。思い出は鮮やかに、悪友は死して尚、俺を笑わせる。

明けましておめでとう御座います。

新年最初の投稿です。


スミマセン。

今年も、キャラクターに乗っ取られました。

去年は大丈夫だったのに…。

 ★☆★☆★☆★☆★

 ─【エル・ディオン・ロッソ】村長(むらおさ)・ベリウス視点─



 長いエルフ生に於いて、こんなにも嬉しかった事は、初めてだ。

 また、アイツに会えた。

 いや、正確には違うが、アイツに良く似た、懐かしい雰囲気の孫息子(ラズヴェルト)は、私の──俺の隣で笑ってる。


 なぁ、悪友?

 お前との連絡が途絶え、諦めていた俺に、こんな嬉しい驚きを遺してあるなんて……もっと早く教えておけよ!

 人が悪いにも程があるだろう!



 *~*~*~*~*



 アイツに出会ったのは、村長(むらおさ)として結界の維持をし続ける事に飽きていた頃だった。


 村長の役割とは、結界を維持し同胞の『平穏な日常』を守護するというものだ。

 確かに責任の重い大切な仕事なのだが、魔力操作に長けた者にとって結界維持は、実は割りと簡単なものだったりする。

 責任の重さを無視すれば、片手間にこなせる仕事なのだ。

 ………そりゃぁ、飽きるだろ………。


 歴代の村長達の中にも、役目に飽きて弾けた奴が、何人もいたらしい。

 その為、先代や先々代が存命であれば、多少の融通は利く。

 一時的にではあるが、村長の役目から離れる事が可能なのだ。

 なので、この時の俺は、村の外へ出ていた。



 *~*~*~*~*



「ぅわあああぁぁぁぁぁっ。に、逃げろっ! ワイバーンだ! ワイバーンの群れがっ!」

「きゃあああぁぁぁぁぁっ」「ぎゃあああぁぁぁぁぁっ」

「誰か助け─」「子供がっ! うちの子が居ないのっ!」

「逃げろっ!」「どこにだよ!?」「知るか!」


 立ち寄った小さな町は、物見台からもたらされた情報に、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。

 慌てて町を出ようとする者、自宅へと駆け込み財産を持ち出そうとする者、家族を探し右往左往する者と、多種多様の統制の無い動きに、俺は呆気に執られていた。


 エルフの村では、緊急時の動きは決められていて、ここまでの騒ぎに発展する事態は、なかなか無い。

 その為、自分の行動を決めかねたのだ。

 アイツに気が付いたのは、そんな時だった。


 混乱が支配する町中にあって、アイツの行動は異質だった。

 焦るでも無く、急ぐでも無く、ただ物見台へと向かって行く。

 その行動に興味を引かれ、つい目が追ってしまった。


 本来なら、他の者達と同様に、逃げるのが正解だろう。

 一体でも脅威であるワイバーンが、群れで近付いて来ているのだ、逃げ場が無くとも、出来る限り逃げたいと思うのが当然だ。

 だが、アイツの落ち着き払った行動が、俺の琴線に触れていた。

 ───何か面白い事が起きる。

 俺は、本能的にアイツの背中を追って走っていた。


「おいっ! 何をする気だ!」


 綺麗な長い銀髪を揺らす背に、咄嗟に声を掛けながら。



 *~*~*~*~*



「空飛ぶ蜥蜴風情が、調子に乗るものではありません。其処に直りなさい。身の程を弁えさせて差し上げます」


 アイツはワイバーンを見据えて、ぼそりと呟いた。

 背後の俺を無視したままで。


 物見台にたったアイツは、威圧のみでワイバーンの群れを墜落させた。

 威圧に当てられ、次々と落ちるワイバーンに、俺は呆然とした。


 いや、おかしいだろ!

 ワイバーンの群れだぞ!?

 一般的には、災害級として知られる魔物だぞ!?

 魔獣化していないとはいえ、ただ横切るだけで風害を振り撒くワイバーンの群れを、威圧で黙らせるって………。


「ん? どなたですか?」


 沈黙したワイバーンの群れを、何事も無かったかの様に視界から外し、振り返って初めて俺に気付いたらしく、アイツは不思議そうに俺を見た。


 アイツは、正面から見たら、とんでもなく整った顔立ちをしていた。

 美醜の基準が人族のものとは違うらしい(エルフ)からしても、綺麗だと思える面立ちなのだ。

 人族であれば、『言葉を失う美しさ』なのではないだろうか…。


「ぁ、すまん。俺はベリウス。旅人だ。あんたが何をするのか気になって…」


「あぁ、そうでしたか。私はルトヴィアスと申します。駆け出しの冒険者ですよ」


「は!? 駆け出し? ベテランじゃ無く?」


「? えぇ。先日ライセンスを取得したばかりです」


「………マジ…か………っ、有り得ねぇぇぇっ!」



 *~*~*~*~*



 アイツ──ルトヴィアスは、どこか浮世離れしていて、話してみると、とんでもなく面白かった。

 村長なんて引きこもりをやってる俺ですら知ってる常識を、ルトヴィアスは軽々と飛び越え、非常識さえ混ぜっ返して、常識と差し替えた。


 ドラゴンの棲みかに「鱗を採取しに行く」と言うので同行すれば、そこの若長──勿論、ドラゴンだ──に喧嘩を売られて、返り討ちどころか、ボッコボコのタコ殴りの末、他のドラゴン達に怯えられたり。(鱗は当然の様に、いつの間にか採取していた)


 緊急依頼の特殊な薬草採取の途中、群生地で暴れていたガキども──後で自称魔王と自称勇者だったと判明した──を無手で無力化し、簀巻きにして、冒険者組合に「貴重薬草の群生地荒らしだ」と突き出したり。(採取依頼は何事も無かったかの様に完了させてた)


 “駆け出し”って言葉の意味を、再確認したくなるような行動ばかりが重なり、気が付いた時には、ルトは高位冒険者と成っていて、俺まで冒険者登録させられ、様々な面倒事に巻き込まれていた。


 後から思えば、駆け出しの冒険者は、ドラゴンの棲みかになんか行かない──正確には『行けない』──し、貴重な薬草の採取なんて難しい依頼は受けない──というより、組合が許さない──はずだ。

 なのに、ルトだと『それが当然』だと思えて、当時は疑問にすら思わず、仕事に付き合っていた。



 *~*~*~*~*



 お互いがお互いを親友──いや、悪友だと認識し、好き勝手に思うがまま冒険者を楽しみ、やがて別れの時が来た。


「そろそろ村に戻らんと…」


「そうですね。私も最愛の女性の元へと帰ります」


「ブフッ。あぁ、お前のベタ惚れ相手な。いつかは、会わせろよ?

 お前の爆笑武勇伝を披露してやるから。ククッ」


「御免被ります。彼女に会わせて、万が一にも惚れられては困りますし。

 貴方と本気で殺しあいをするのは、疲れそうですしね」


「なんだよ、その子は惚れっぽいのか?」


「阿保ですか? 惚れるのは、貴方が彼女に(・・・・・・)ですよ。

 相思相愛の私達に、貴方が横恋慕するのが困ると言っているのです」


「…ぁ、そう。まぁ、好きに言ってろ。お互い連絡くらいは取り合おうぜ?

 俺としちゃ、お前の近況が気になるし♪」


「…まぁ、良いでしょう。連絡くらいはして差し上げますよ」


 エルフと人、生きる時間の長さが違う。

 俺にとっての一瞬も、ルトにとっては数年だ。

 別れれば、再び出会える可能性は、皆無に近い。


 けれど、何故だろう。

 多少の寂しさはあれども、哀しみは感じない。

 理由も無いのに、確信だけが強く在る。


 ──ルトとは、必ず(・・)また会える。


 俺達は、別れた後も、ルトからの連絡が途絶えるまで、お互いがお互いを悪友だと笑いあえた。


 連絡が途絶え、十数年が過ぎた頃、ルトの死を疑い調べた。

 ルトの出身である隠れ郷は、エルフの村よりも厳重に隠蔽されているらしく、結果としては『ルトの生死は不明』だった。

 そして、数十年の時が流れる───



 *~*~*~*~*



 ルト。お前も、やはり死んでしまったのだな。

 お前の死は、俺にとてつもない衝撃を与えたぞ。

 それと同時に、お前に良く似た孫息子なんていう、驚きと喜びを用意しているなんぞ、まったくお前らしいな。


 お前を思い出して泣くことすら許さないとは、我が悪友は実に人が悪い。

 だが、そうだな。

 お前を思い出すのなら、泣くより笑っていたいと思うよ。


 お前の事だ、今頃あの世で、俺の驚きと喜びを肴に、孫息子と良く似た悪戯者の笑顔で、楽しく酒盛りでもしてそうだ。

 ならば、俺も笑っててやろう。

 悪友に良く似た孫息子と一緒に。


 孫息子(こいつ)もきっと、俺を笑わせてくれるだろうから。

 いずれ、また会える時を楽しみに、俺も笑って生きてやる。

 ★☆★☆★☆★☆★

微妙にシリアス…かな?

いえいえ、エルフのお爺ちゃんは、お茶目さんのはず…。


まぁ、何はともあれ。

今年も宜しくお願い致します。

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