閑話・お兄ちゃんは心配性。妹が可愛いとお兄ちゃんは大変です。
暴走時のお兄ちゃん視点。
エルフ側の理由説明の前に、心配性のお兄ちゃんに乗っ取られました。
「ふわぁぁぁぁぁ。たかぁ~い♪」
私達がエルフの村を案内されてる頃、お兄さんズはイライラ最高潮だったんだって。
合流した時、アルタイルがすっごく楽しそうでした。
エディ兄さんは、なんだか疲れてるみたいだったけど、大丈夫かなぁ?
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─クリストファー・リーシェンブルク視点─
僕には、妹がいる。
いや、『妹』とは言っても、正確には『妹分』だけれど…。
冒険者としての僕の師匠、ラズヴェルトさんの実子で、可愛らしい女の子4人。
8歳の3人は、三つ子だけど、三者三様で、各々個性的だ。
フォルは、おしゃまで可愛いものが大好き。
ラルは、快活で一番お姉さんらしい確り者。
ベルは、物静かだけど好奇心旺盛な女の子。
3人とも外見は誰が見ても美少女なのに、口を開けば思いの外辛辣で、シアさんに鍛えられているのか、外見に似合わない実力を持った強者だ。
けど、末っ子をこよなく愛する、可愛い『小さなお姉ちゃん』達でもある。
末っ子……。
この子が家族の中心かな?
ユナという名の3歳児は、母親であるシアさんそっくり─三つ子はどっちかというと父親似─で、シアさんを小さくしたら、こうなりますって見本みたいだ。
どこか大人びた考え方をするのに、その行動はちょっと抜けてる。
ドジってわけじゃないのに、ポロッと肝心な事を忘れてたり、お菓子作りが好きなのか、作り始めたら止まらなかったりと、可愛い失敗を何度も見た。
ユナが僕を家族として受け入れてくれたのは、何が切っ掛けだったのかなぁ。
この時だ! って確信が、僕には無い。
だけど、ユナが受け入れてくれたから、師匠や三つ子も僕を家族として認識してくれたし、僕自身も家族の在り方を知り、まだ小さな妹達を大切にしたいと思えたんだと思う。
………だから。
妹達の誰か1人でも傷付く事があったら、その原因を全力でもって排除するって決めている。
家族であれば、仲直りの猶予はもつが、他人であれば、それが例え身内と呼ぶような近しい相手でも、容赦するつもりは無い。
それは、相棒であるエディも同じだろう。
………。
今現在、その末っ子が行方不明だ。
あちこち探したし、かなり広範囲で呼び掛け続けたのに、ユナの返事は一切無い。
契約獣達の内、一匹だけでも一緒なら、ここまで心配せずに居られたかも知れないが、契約獣達は3匹とも個別行動中。
その上、一緒にいるかは不明だが、最近知り合ったリムとヒューバートの姿も見えない。
ただ迷子になっただけなら、必ず見付けて連れ帰るが、何か厄介事に巻き込まれたのなら、その原因ごと潰してやる。
僕の可愛い妹……無事でいて。
妹の無事を思う僕の真後ろで、気配が動き、ルクレヒトが狙撃された。
飛んできた矢は、初めから威嚇目的なのか、僅かに的から外れた軌道ではあった。
が、そんな事は関係無い。
もしも、ルゥが少しでも動いていたら……。
もしも、エディが間に合わなければ………。
只でさえ妹の不在で苛立っているのに、友人を狙われて怒らないわけが無いよね?
………。
叩き潰す。
自分の中で、殺意が膨れ上がるのを感じる。
………良いよね?
感情の制御なんてするもんか!
心のままに暴れてやる!
エディが面倒臭そうな顔をしてるけど、知るもんか。
エディだって怒ってるの、気付いてるからね?
さぁ、誰から沈む?
大丈夫。
全員ちゃんと叩き潰すからね♪
………。
投降してくるくらいなら、最初から喧嘩売らないでよ。
喧嘩を売るなら、八つ当たりくらい、甘んじて受けてよ…。
やりきれない。
このイライラ、どうしてくれようか…。
取り敢えず、エディが話を聞く態勢みたいだから、一応殺気は収めるけどね?
ふざけた話しなら、相応の態度をとらせて貰うから、覚悟して話してくださいね♪
フフフ。
話を聞いて時間を捕られるだけでも、充分迷惑なんだから。
早くユナを見付けてあげなきゃ。
今頃泣いてたりしないかな………心配だ。
*~*~*~*~*
………。
結界が破られた?
………それって。
僕達は、思い当たった。
……リムは、ドラゴン。
そう。
あんな可愛らしい見掛け─人化してると5歳児の美幼女─でも、実態はヴォルケーノドラゴン。
人族…いや、妖精族の魔法ですら、些細な行動ひとつで相殺・消滅・破砕は当たり前なドラゴン様だ。
………。
やっちゃったね? リム。
取り敢えず、僕らは推測を話し、ユナ達のことを気にしつつも、エルフの村へと向かう事になった。
だって、そこには確実にリムが居るだろうしね。
もしかしたら、ユナも一緒かも知れないし。
待っててね、ユナ。
直ぐにお兄ちゃんが迎えに行くからね。
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「へくちっ!?」
「!? 大丈夫か? ユナ。風邪でもひいたか?」
「なんと!? それは一大事じゃ! 温かくするのじゃ! 氷水はいるかの? 元気を出すのじゃ、ユナ~」
「だ、たいじょぉぶ。げんきらよ!? おはなが、むずむじゅしただけよ~」
リムに前後に揺さぶられつつ、くしゃみの原因に思いを馳せます。
お兄さんズ……噂してますか?
私達は無事ですよ~。
早く迎えに来てね。
お兄ちゃんが暴走してる頃、ユナちゃん達はまったりエルフ村を満喫中。
ストックが無いので、穴埋め投稿は次の機会に。