迷子になったら、安全を確保した上で、動かずに助けを待ちましょう。
緑鮮やかな木の葉の間から、キラキラと降り注ぐ陽の光。
森の木陰は深く、木漏れ日に照らされたその場だけが、スポットライトを当てたかの様に、幻想的な空間を作り上げる。
「…どこだ、ここ……」
「…どこだろねぇ…」
「? リシャの森じゃろ?」
ヒュー様の呟きに、ついつい同調してしまいました。
迷子になって、既に1刻程。
リムが大雑把な事実を突き付けます。
………。
いやいや、リム!?
知ってるよ!?
ここがリシャの森なのは、ちゃんと分かってるよ!?
な、なんか、一気に緊張感が弛んだ気がします…。
「…リム。そうじゃなくて…」
ぁ、ヒュー様も脱力感、感じましたか。
「? そうじゃなくて?」
「…リちゃのもりの、どこ?」
───かを、知りたいのですよ…。
「ふむ。そういう意味か! それならば…」
「分かるのか!?」
私達の疑問を理解したリムに、ヒュー様が期待を寄せます。
リムも笑顔で即答してくれました。
が、───
「いや? 分からん! 何処じゃろな♪」
………。
リ~ム~ゥ。
それは、胸を張って言うことじゃないよぉ?
*~*~*~*~*
事の興りは1刻と、数十分前。
変則鬼ごっこの最中でした。
私達が魔道具でシャボン玉に包まれ、ポヨポヨ弾みながら、わらわらと逃げ惑って数分。
リムが何かに蹴躓き、近くにいた私とヒュー様が巻き込まれ、倒立前転の要領で転がったのが、多分迷子の始まりです。
シャボン玉の回転が止まり、辺りを確認した時には、既に迷子でした。
取り敢えず、そのままシャボン玉の中に居ると、思いがけず可笑しな状況へと突っ込みそうだったので、3人で相談の上、魔道具は解除しましたよ。ええ。
いつも近くにいた家族から、意図無く離れ、不安に震えたいたら、ヒュー様が手を繋いでくれました。
繋いだヒュー様の手も、微かに震えている様でしたが、なんでしょう……とっても心強いです♪
落ち着いた所で確認したら、転がってた時は、各々違う──私は縦、ヒュー様は横、リムは器用にも斜め──回転がかかってたそうですが、何が何やら…。
ちょっとした恐慌状態に、景色を確認する余裕も無く、自力で停止するという考えにも至らず、為すが儘、為すが儘。
気が付けば、自分達の位置を見失ってました…。
*~*~*~*~*
で、今な感じですね。
やぁ~、でも、アレはちょっと怖かった…。
クリスお兄ちゃん…ごめんなさい。
アレは、自力じゃ脱出困難です。
次があったら、必ず助けます!
なんにしても、次の行動を決めかねますね。
レグルス達は鬼役と一緒だったので、絶賛はぐれ中ですし…。
どうしましょうねぇ。
───ヒュンッ! カカカッ!!
………。
……………矢?
矢ですよね? コレ。
背後から斜めに、髪と肩上を掠めて、地面に突き刺さる3本の矢。
……ふぇっ!?
射られました!?
あぶっ、危ないっ!?
「動くな!」
「何者じゃ…我が友を…ユナを傷付けんとする者か…」
背後から掛けられた制止の声に、私の左隣で恐い気配が爆発的に膨れ上がる。
私に向けられた訳でもないのに、全身から冷や汗が吹き出します。
手を繋いだままのヒュー様も、青ざめてます。
恐っ!? 恐いぃッッッ!
「───ッ!? くっ!? な、なんだこの重圧───ッ!」
「ゥあっ!?」「くっ!?」「な!?」「─ッ、かはっ!?」
───ドサッ。ドサドサッ!
─────ドッ、ガツッ!
背後で数人分の落下音が重なり、暫くすると直前までの静寂が戻りました。
ヒュー様と2人で、ガタガタと震えながらも、ゆっくりと背後を振り返り、状況を確認します。
大分離れた位置。
高い樹の根元近くに、5人程の武装した大人が、間隔を開けて頽れてます。
え"……。
コレって、どんな状況?
「ふんっ! ユナに射掛けるとは、良い度胸じゃ!
我が黙らせてやったわ!
ふふん♪ そこいらの人族程度、我にかかれば造作も無い。
己れの力量も判らんと、力の差も測れず襲うなど、笑止!
地に這いつくばるが、似合いよの♪」
胸の前で腕を組み、胸を反らして、仁王立ちしたリムが、朗々と宣言し、樹から落ちた? らしい大人達へ、未だに怒気を向け、押さえ付けてる? みたいです。
良かった。
この恐いの、怒気なんだ…。
リムの怒気って、恐いッッッ!
お姉ちゃんや、お父さん達の殺気みたい!
皮膚の下がピリピリするよぉ~ぅ。
ぅひぃぃぃ。
空いてる方の手で、ヒュー様と繋いだ方の腕を擦ります。
うぇぇぇぇぇ。
ぞわぞわする~。
「す、すまん、リム。取り敢えず、怒気を抑えてくれ。震えが止まらん」
ヒュー様も、同じ様な行動をしながら、リムを宥めます。
「ぬ? おお。すまなんだ。制御が甘かったか!?」
リムが私達に意識を向けた途端、私達の震えが治まり始めました。
今度はちゃんと制御しているらしく、大人達は変わらず頽れたままです。
「取り敢えず、相手の言い分を聞こう。突然射かけてきたとは言え、こちらに非がある可能性も無いとは言えないからな。
ぁ、でも、リムには、そのまま彼等を押さえておいてもらいたい。
相手が大人である以上、俺達には対抗手段が無いから…」
「了解じゃ♪ ユナも、ヒューも、我の友。害為すモノは、なんであろうと、我が敵じゃからの♪
契約獣達が居らぬ今、そなた等は我が守る! 絶対じゃ!」
*~*~*~*~*
で、樹の下の大人達──お耳が横に長い?──に近付いて、理由を聞けば…。
うん。
悪いのは、私達でした。
私達の現在地は、どうやらエルフと呼ばれる“森の民”の集落近くで、本来同種しか近付けない【迂回の結界】が張られている場所だったらしい。
なのに、その結界が破られ、何者かが侵入した形跡があり、害意あるモノかも知れぬと、警戒していたそうです。
リムが正体を明かし、説明を求めたら、害意が無い事を確認し、素直に教えてくれました。
驚いたのは、私やヒュー様には【迂回の結界】に覚えが無かったのに対し、リムがポツリと呟いた一言でした。
「………。そう言えば、転がってた時に、何やらぶち破ったのぉ」
「「はいっ!?」」
「「「「「あぁ、やっぱり」」」」」
驚く私とヒュー様の前で、理由を話してくれた大人──エルフの皆さん──達が、納得の表情で頷いてました。
どうやら、やっぱり、私達が悪いみたいです。
スミマセン。
先週、お休みの回数が9回目になりました。
既に2回分は、穴埋め投稿したのですが、もう少しの間、穴だらけの不定期投稿になりそうです。
お待たせして、申し訳ない。
不甲斐ない作者です。
現在の投稿間隔は、2週に1度、必ず金曜日の正午に。
穴埋め投稿が出来そうな時は、深夜零時に。
日付変更の時間なので、どっちとも言えませんが、金曜日から土曜日に変わる頃です。
金曜日の24時、土曜日の0時です。
近い内に、1度穴埋め投稿をするつもりです。