遊びは遊びでも、これって普通? 気分転換は楽しいぞ♪
「ぅにゃ~♪ にゃはははははは♪」
「うわっ!? ─っ、ははっあはははははは!」
「あっはっはっはっ! なんじゃこれは♪ 面白いの」
「ええっ!? ─っわ! アハハ、何これ!」
「お~、ルゥ、バランス取れ! バランス!」
「ちょっ!? アルタイル!? はやい、ハヤイ、速い~ぃ!」
あちこちで、笑い声や悲鳴が上がります。
まぁ、悲鳴と言っても、驚愕の色が濃いんですが…。
ぃやぁ、あまりにも気持ちが落ち込むので、只今全力でレグルス達に遊んでもらってます!
はい。
猫みたいな可笑しな悲鳴と笑い声を提供しているのは、私です。
………。
…恥ずかしい!
が、力の抜けた状態だと、笑い声さえ可笑しなモノになるのは、仕方無いよね? ね!?
みんなでまったりしていた食後休憩の後。
アルタイルとエディ兄さんのお腹が落ち着いたのを見計らい、お父さんの「今日の家事が終わっているなら、遊んでおいで」という鶴の一声がありました。
なので、ヒュー様とルクレヒト様、お兄さんズを誘って、湖近くまで出てきましたよ。
ピクニックにしようかとも思ったのですが、またもや食べ過ぎ・作り過ぎになると残念な感じなので、気分転換とカロリー消費を狙って、身体を動かす事になりました♪
身体を動かす遊びとして選択したのは、鬼ごっこ。
ただし、体格差と体力差を考えて、変則鬼ごっこを希望します!
取り敢えず、地に足の着いた状態だと、お兄さんズやルクレヒト様が有利なので、浮かんでみました。
えへ。
提案者はアルタイル。
お母さんがくれた魔道具の中に『何か面白いのがあるかもよ♪』と教えてくれました。
お父さんに探してもらって、ゲットしたのは【泡沫の楽園】という魔道具。
簡単に説明すると、巨大なシャボン玉発生装置。
海中でも陸上でも、上空でも使用可能で、シャボン玉の大きさも、持続時間も任意で変更可能。
シャボン玉の中では、綺麗な空気──何処から来てるか謎…らしい──が循環していて、普通に呼吸が出来ます。
重力から風による物理抵抗まで、様々なモノを徹底無視。
海底調査や負傷者救助なんかにも使用される、一般的で安価な魔道具です。
なので、只今私達は、1人ひとつの魔道具を所持して、地上から踏み台ひとつ分程の高さを、シャボン玉に入った状態で、プカプカ浮遊しています。
1人ひとつのシャボン玉なので、好き勝手移動してみれば、思いの外自由自在に操作が可能。
ただし、慣れないと思わぬ方向に転がります。
というか、それが面白くて、慣れても転がってみてますが、目が回らない!
なんだろう、コレ! ちょっと楽し~♪
すっごく楽しい!
楽しさに委せて、ヒュー様とリムのシャボン玉に突撃~♪
どぉ~ん♪
2人を弾き飛ばして、反動で私も転がります。
シャボン玉同士がぶつかると、ポヨンポヨンと弾みます。
物理抵抗は無いのに、物理耐性はある。
触れるけど、抜けられない。
尖ったモノでも穴は開かないらしく、木の枝にぶつかっても、にょ~んと伸びただけで割れません。
レグルスやシリウスは、シャボン玉には入らず、みんなのシャボン玉が転がりすぎない様に、遠くに行きそうになると、前肢や尻尾、身体を使って止めてくれます。
本来の大きさに戻っているので、中に居る私達に負担が無い様に、簡単上手に止められます。
動物の本能故に、転がるシャボン玉を見ては、ムズムズしているみたいだけど、それを抑えて見守り役を努めてくれてます。
みんな思い思いに試していて、ヒュー様は私にぶつかられた勢いのまま、ポォ~ンと弾んで、水切り石みたいに跳ねてます。
リムもぶつかった時の勢いのまま、ルクレヒト様に激突。
ルクレヒト様が衝撃に押されてコロコロ転がります。
……ビリヤード?
一番先に慣れたらしいエディ兄さんは、それを見ながらルクレヒト様にアドバイスを飛ばしてます。
クリスお兄ちゃんは、シャボン玉に入ってないアルタイルに獲物認定されたのか、結構な勢いで転がされてます。
………。
あの勢いは、危なくないですか?
わあぁっ!? ストップ! ストップ~ッ!
──ぁ、……シリウスがアルタイルを叩き落とした…。
うわぁ…。
だ、大丈夫…かな。
アルタイル、ベチャッてなったよ?
………レグルス?
「わあぁっ!? レグりゅしゅ!? アルタイルぐりぐりしちゃメ~!
シリウしゅ、とめてぇ~」
いやいやいや。
墜落したアルタイルを、前肢で踏みつけて、ぐりぐり踏みにじるって、やり過ぎでしょ!?
お仕置きは兎も角、折檻はダメ絶対。
叩き落とした後は、傍観を極め込んでいるシリウスに、咄嗟にお願いしてみます。
まぁ、それ以前に、私が駄目だと言った時点で、レグルスは踏みにじるのを止めてましたが…。
なんだろう…。
最近、レグルス達がもの凄く自由だ。
と、それより、クリスお兄ちゃんは大丈夫ですか!?
「う~、酔った……」
「にぃに! らいじょうぶ?」
「ブハッ! ちょ、クリス!? 大丈夫か?」
少々青ざめてはいますが、クリスお兄ちゃんに怪我は無いみたいです。
私の呼び掛けに、確り頷いてくれました。
エディ兄さんがクリスお兄ちゃんの一連の状況を見て、噴き出してます。
エディ兄さん…。
そこは、心配する所じゃないんですか?
いや、一応心配はしてるのかな?
取り敢えず、クリスお兄ちゃんも無事だったので、当初の予定通り、これから変則鬼ごっこですね!
アルタイルも心配したのですが、彼はサクッと復活して、楽しげに鼻唄を歌ってました。
鳥って鼻唄歌えるんだ……いやいや、アルタイルだしね?
契約獣って、わりとなんでもアリダヨネ。
鼻唄を歌いつつ、チラチラとエディ兄さんやクリスお兄ちゃん、ルクレヒト様の入ったシャボン玉を見ているアルタイル。
反省してるのかは………謎ですね。
ちょっと捕捉説明。
ユナちゃんが感じた様に、シャボン玉の移動では目は回りません。
クリスくんが酔ったのは、景色の移り変わるスピードにです。
どれだけ速く転がしてたのか…。