おかえりなさい! いただきます! みんなと一緒は嬉しいのに…。
お料理を終え、ダイニングテーブルに並べ終えた処で、クリスお兄ちゃんが帰って来ました。
「ただいまぁ。疲れたよ~」
少々掠れた、疲労感の濃い声で、帰宅の挨拶をしながら、クリスお兄ちゃんがダイニングへとやって来ます。
「「お疲れ〈様〉~」」
「にぃに、おかえりなしゃい!」
「「お邪魔してるよ〈ます〉」」
「「こんにちは」」
お父さんとエディ兄さん、ディラン小父様とルクレヒト様、アリア小母様とヒュー様が其々ハモりました。
「ただいま。いらっしゃい。留守にしていて、すみませんでした」
「ん? お~、もう一人の兄君か! 数日振りじゃのぉ」
ご飯に釘付け状態だったリムが、お兄ちゃんに気付き、軽く手を振って存在を主張します。
「あれ? リムも来てたのかい? 新居を探すって言ってたから、暫く来れないかと思ってたのに…」
「ホッホッホッ。新たな塒ならば、此処を出てから直ぐに見つかってのぉ。
サクッと巣穴を作ってやったぞ。
ユナを招ける様に、人の子らの巣を真似て、幾つか部屋も作ったのじゃ。
近い内に、揃って遊びに来れば良い♪」
お兄ちゃんが驚くと、リムが上機嫌で新居へ招待してくれました。
『おい? 御主の巣に、人族を招くのか?
まぁ、ユナ達であれば、何の問題も無いと思うが…。
他のドラゴンには、気付かれるなよ?
どんな騒ぎが興るか分からん。
それと、御主の正体を知るものが、近くに居る場では、気軽に誘うでない。
ユナを要らぬ危険に晒すな』
『貴女を捕らえる為に、ユナを人質にしよう等と企む輩は、どの様な場所にも居るのです。
会話の内容は、時と場所を選んでください』
『そうだよ~。ユナ達は兎も角、他の人は僕ら保証しないよ?
まぁ、ヒューバートとルクレヒトなら、ちょっとはしてあげても良いけど』
『ん? ふむ。そうであったな。ユナの家族は、皆邪気が無かったので、忘れておった。
人の子らとは、弱いくせに良ぉ頭が回る。
邪な考えを抱くものも多いのじゃったな。すまぬ』
レグルス達に続けざまに注意され、リムがしょんぼりします。
上機嫌だったのに、レグルス達を見て突然落ち込んだリムに、念話の聞こえないお兄さんズとご領主様一家が、オロオロしはじめました。
「ど、どうした!?」
『リム、大丈夫ですよ。カーチェ達の保証は、私がします。
今ここに居る人族相手なら、心配はいりません』
エディ兄さんが心配して声をかけるのと同時に、お父さんが念話でリムに話し掛け、小父様達の人間性を保証します。
『!? 本当かの!? ならば、次からはちゃんと気を付ける。
ユナに害が及ぶのは、我にしても本意ではないからの!
ユナ、皆も、ほんにすまんかったの』
『まぁ、御主にとっても、初めての事なのだろう? 失敗くらい仕方無い。
次から気を付けてくれるのなら、そう強くは言わぬよ』
『『そうですね〈だね~♪〉』』
お父さんの念話に、リムの気持ちも浮上したみたいです。
良かったぁ~。
レグルス達の言い分は理解出来る気はしますが、言い方にハラハラしてしまったので…。
喧嘩にならなくて安心しました♪
さて、ご飯が冷める前に、みんなで楽しくいただきましょう♪
「リム、げんきになったの。よかったねぇ」
「はは。良く分からんけど、元気になったんなら、まぁいいか。
さぁ、飯だ飯~♪」
にこにこ笑顔でエディ兄さんに同意を求めたら、兄さんに苦笑で返されました。
周りを見ても、ホッとした様子で、其々ご飯の方に意識を切り替えたみたいです。
変な空気にならなくて良かった。
みんな仲良し♪
お母さんやお姉ちゃん達も、一緒ならもっと楽しかったのに…。
ぁ、駄目ですね。
後ろ向きは無い無い。
寂しいのは仕方無くても、落ち込むのは違います。
一緒に居てくれるみんなに失礼ですね!
むぅ。
お留守番は、ちょっとだけキライです。
よしっ!
今日は目一杯遊ぶぞ~!
お父さんの保証もあったし、リムのおうちに遊びに行くのもいいかも。
後で相談してみましょう♪
でも、先ずは、みんな揃って。「いただきます!」
*~*~*~*~*
「ふい~っ、旨かったぁ~♪」
「……エディ…どんだけ食べるのさ…」
「……クリス、エディは、ついさっきお茶菓子も、大量に食べてたよ…」
「は!? ちょっと、エディ!? お腹壊すよ!?」
「平気、平~気♪ 大丈夫だって」
「クリス、エディには言うだけ無駄です。放置で良いですよ」
食後、緑茶を飲みながらのお兄さんズとルクレヒト様の会話に、お父さんが呆れたように一言。
お父さんや小父様、小母様の親組を挟んだ逆の位置では、レグルス達も同じ様な会話をしてます。
『う~っ、ちょっと、食べ過ぎたぁ~』
『またか!? 毎度毎度、学習せんな…』
『…一度、痛い目に遭わねば、覚えないのでしょうか?』
………。
整腸剤…いるかな?
「ユナ、甘やかすなよ? エディさんも、アルタイルも、自業自得だ」
「そうじゃの。ヒューバートの言うとおりじゃ。我とて頑張って食欲を制御したのじゃぞ?
ユナの手による美味なる食事とは言え、毎度食しておる彼奴等が我慢を覚えんのは、彼奴等の怠慢じゃ」
私、ヒュー様、リムのチビッ子(?)3人組は、生温い目でお兄さんズやレグルス達を眺めます。
大丈夫かなぁ?
ご飯の後は、毎回心配してる気がします。
お姉ちゃん達が居れば、もう一ヶ所でも同じ様な状況が出来そうですね。
お母さんが居たら、どんな反応するのかな?
会いたいなぁ。
落ち込むのは止めましたが、寂しいのは寂しいんです!
う~っ、我儘な自分にイライラします。
………。
あ~も~! 遊ぶぞ! 遊ぶ!
寂しいのも、イライラも、どっか行っちゃえ!
お留守番なんて、キライだぁ~っ!