お客様がいっぱい♪ また会えて嬉しいです!
「じゃあ、あの3人は、暫くいないのか…。ユナ、大丈夫か? 寂しくないか?」
ヒュー様が心配そうなお顔で、私の頭を撫でてくれます。
「ん。だいじょ~ぶよ? しゃみちくないわけじゃないけど、にぃにたちや、レグルしゅたち、おとぉさんがいてくれましゅ!」
「そぉか。…良かった…」
ヒュー様が優しいお顔で笑ってくれます。
最後の声は小さくて、良く聞こえませんでしたが、暖かい雰囲気なので聞き返すことはしません。
私もヒュー様が笑ってくれるのが嬉しくて、にこにことお顔が勝手に笑顔になります。
───ドズンッ! グラグラ。
みっ!?
何事ですか!? 地震?
突然家が揺れ、慌ててレグルス達やお父さんの様子を伺います。
レグルス達は、一切慌てていないし、お父さんも普通です。
お兄さんズは、驚いてるみたいですが…。
危険な兆候であれば、レグルス達もお父さんも、もっと険しいお顔をするので、取り敢えず危機的状況ではなさそう?
『痛たたたた。目測を誤ったのじゃ~』
ワタワタしていた所に、外から聞こえて来たのは、透明感のある澄んだ声。
……というか、念話ですよね!? 今の。
『ユナ~、居るかのぉ~』
聞こえてきた声には覚えがあり、数日振りの訪問に、心が浮き立ちます。
「リム!」
「! ユナ!? 何処に行くんだ!?」
「おしょと! おともらちがきたの。ヒューしゃまたちに、しょうかいしゅるね!」
急いで外へと走る私を、レグルス達とヒュー様が追ってきます。
玄関扉を勢い良く開き、前庭へと飛び出します。
前庭の柵の内側に、ペタンと後ろ脚を投げ出して座り、両前脚で鼻先を擦る深紅の竜が居ました。
「リム!」「…ドラゴン…が、顔を洗ってる?」
『『『ブフッ〈プッ〉!』』』
『おおっ! 数日振りじゃのぉ、ユナ。ぁ痛たた』
ドラゴンの姿のまま鼻先を擦るリムに、1番最初に感じたのは、また会えた喜びでした。
…が、再会の喜びも束の間。
追い付いてきたヒュー様が唖然として呟いた言葉に、レグルス達が噴き出します。
いやいや、ヒュー様?
猫じゃないので、「顔を洗う」って……なんか違う。
というか、痛がってるので、多分何処かにぶつけた? んだとおもいますよ。
うぅ、痛そう。
再会を喜んでる場合じゃ無いです。
「だ、だいじょ~ぶ!? リム、いたいいたい?」
『む~、大丈夫じゃ。ちと目測を誤ってのぉ。
この前庭に下りるつもりが、気が急いて速度を出しすぎたようでの。
勢いを殺せなんだ。思い切りユナの巣に突っ込んでしもうた。
大分衝撃を与えてしもうた故、驚かせたじゃろう?
我としたことが…申し訳ない』
鼻先を擦りつつ、落ち込み気味にリムが状況を説明してくれます。
どうやら、先程の衝撃は、リムがぶつかった時のものだったみたいです。
リムがチラリと視線を向けた場所を見上げましたが、屋根と玄関扉の間の壁には、傷ひとつありません。
『ユナの巣は頑丈じゃのぉ。傷ひとつつかぬ処か、我にこそダメージを与えるとは…。いったいどの様な素材で出来ておるのか』
鼻先を擦るのを止め、染々とおうちを見上げるリムに、念話の聞こえないヒュー様が、不思議そうにリムの視線の先とリム自身とを見比べています。
取り敢えず、お客様なのです。
お客様は歓迎しなくちゃですよね!
「リム、じんかできましゅか? いたいたいだからムリ?」
『ん? 大丈夫じゃ。しかし、前の時はそのままだったのに、此度は人化が必要なのか?』
「きょうはね、ほかにもおきゃくしゃまがいるの。しょのひとたちに、リムをしょうかいちたいの♪ だかりゃ、ことばがはなしぇたほうがよいのよぉ?」
『成る程。了解したのじゃ!』
了承の返事と共に、リムの身体が柔らかな深紅の光を纏い、次の瞬間には、深紅の髪と紅茶色の瞳の女の子が、その場に居ました。
「へ!?」
リムの人化を目の当たりにしたヒュー様が、唖然としてます。
「ユ、ユナ!? い、今、ド、ドラゴンが…」
「ヒューしゃま、このこは、わたちのさいしょのおともらち、ドラゴンのリムらよ」
「うむ。我はリム。ユナの友人にして、誇り高きヴォルケーノドラゴンじゃ!」
「~~~っ!?」
ヒュー様が、リムの自己紹介に絶句して固まります。
………。
リムって、ヴォルケーノドラゴンだったんだ…。
知らなかった…。
あれ?
ヴォルケーノドラゴンって、火山地帯に棲みかを作るって、お姉ちゃん達から聞いた事があるんだけど…。
リム、森に居たよ?
多分、新しい棲みかも、この森の中だと思うんだけど…。
あれぇ?
「っ、は、初めてお目にかかる。お、私はユナ嬢の友人で、ヒューバート・ニクス・オルブラントと申します…」
「ヒューしゃまは、このもりのちかくの、いちばんおおきなまちの、ごりょ~しゅしゃまのこどもにゃんだよ」
緊張からか、物凄く丁寧な自己紹介をするヒュー様。
私の疑問は、取り敢えず横に置いて、追加情報を補足してみます。
「ほぉ。以前、上空から見たことがある。あの街の権力者の倅か? ユナは変わった友人を増やすのぉ」
「? ヒューしゃまは、かわってにゃいよ? しょれより!
リム、またしばりゃく、いらりぇるの?」
「うむ。新しい棲みかも決まったし、ユナ達を招待しようと思って来たが、来客中ならば仕方無い。
一度帰っても良いが、邪魔しても良いなら、暫し滞在させて貰うかのぉ」