また、やった…。学習しようよ、私! ちょっとした失敗と、家族の外出事情。
時間はちょっと戻ります。
*~*~*~*~*
本日は、お寝坊もせず、朝から元気いっぱいです♪
なので、朝のお仕事は既に終わり、お菓子製作真っ最中です。
お客様が来るのが分かっているのに、作り置きのお菓子ではちょっと淋しいですもんね♪
とはいえ、何を作るかで何時も通りに一騒動。
うふふ。
アルタイルとエディ兄さんが口喧嘩を始めちゃったので、キッチンから追い出しました。
お姉ちゃん達がお仕事に戻ってしまって、寂しくなってたのさえ、何処かに行っちゃいましたよ!?
お姉ちゃん達は身体があっても、15日の内5日間が一緒にいられる限界。
それ以上は、お仕事──世界の管理調整──に支障が出て、世界が危険。
お母さんと比べれば、大分長く一緒にいられますが、離れれば寂しいのは、仕方無いですよね…。
………。
わ、私が寂しがりやな訳ではないです!……よね?
それでも、お父さんやお兄さんズが居てくれますし、レグルス達は常に一緒です。
寂しがってばかりでは、呆れられてしまいます!
多少寂しくとも、自分に出来る事を確りこなし、次にお母さんやお姉ちゃん達が帰って来るまで、元気でいるのが「私のお仕事」──シリウスに言われました!──ですもんね♪
と、それは兎も角。
作っていたのは、お茶菓子の定番クッキー。
思い付くまま、数種類。
ブラウニーに、紅茶のフィナンシェ。
ケーキはチーズケーキを三種類。
チーズスフレ、レアチーズ、ベイクドチーズ。
ちょっと方向性を変えて、抹茶のムース。
コロンとまぁるいマシュマロ各種。
魔法を使って時間の短縮が可能だからこそ、色々作ってみました!
………。
はい……作り過ぎ……ですね。てへ。
うわぁぁぁん、またやっちゃった~ぁ!
「お! 出来たのか?」
『食べていい? 食べていい!?』
そぉ~っと伸びてきたエディ兄さん手と、今にもお菓子に届きそうなアルタイルの嘴を、軽くペチリと叩きます。
「メ! よ?」
小首を傾げ、じぃ~と見つめると、エディ兄さんもアルタイルも苦笑して、お菓子から離れました。
「みんながきたら、いっちょにたべよぉね♪」
*~*~*~*~*
と、いうわけで、今現在ダイニングルームのテーブルは、様々なお菓子に占拠されてます!
「「………。凄いな〈ね〉」」
ヒュー様とルクレヒト様が、テーブルを見て固まってます。
え、えへ。
し、仕方無いですよね!
お客様は、リム──深紅の鱗の小さなドラゴン──以来なんですもん。
ちょっと浮かれてたのは、事実ですけどね?
とりあえず、お茶にしましょう♪
「ところで、今日は三つ子はいないのか?」
ヒュー様がお茶菓子に手を伸ばしつつ、視線だけで私達を一巡します。
「そうですね。クリスの姿もありませんし…」
ルクレヒト様も、不思議そうにエディ兄さんを見つめます。
「あ~、クリスはギルドに呼び出された。指名が入ったらしいぞ?」
「え? クリスは低ランクだろう? 指名って…」
エディ兄さんの応答に、更に疑問を浮かべるルクレヒト様。
まぁ、確かに、クリスお兄ちゃん──エディ兄さんも──はCランク。
冒険者としては、半人前とみなされるランクです。
指名依頼が入るのは、Aランクより上が一般的。
ただし、特殊指名依頼というのが存在していて、本来指名依頼など入るはずの無い低ランクにも、何かに突出していれば、稀に指名が入るんです。
今回は採取依頼で、クリスお兄ちゃんの薬草発見率の高さと、採取能力──採取対象への適切な処置や保存状態の良さ──が買われたみたい。
半日くらいで戻れそうな依頼だからと、朝からサクッと出掛けてます。
「クリスは採取…特に植物関係の採取が得意だからなぁ。たまに指名されるんだ」
「…成る程ね」
エディ兄さんの答えに、ルクレヒト様も納得しました。
でも、ヒュー様は答えを貰っていないので、憮然とした顔でエディ兄さんを睨みます。
「じゃあ、三つ子は? 三つ子もか?」
「ねぇねたちは、ちがいましゅよ? さしゅがに、8しゃいでぼうけんしゃには、なりぇましぇん。
ねぇねたちは、みきょのおちごとをしに、さとにもどってましゅ」
「みきょ?」
あう。
噛み噛み過ぎて、伝わらない…。
「あぁ、巫女だみこ。フォル達三つ子は、母親の素質を継いでるらしくて、次代と成るための経験が必要とかでなぁ。
半月に一週間が外出限度なんだと。
それ以外は、故郷の隠れ郷の結界の中に隔離されてる。
ユナは、外見は兎も角、素質は母親より父親の方に似たらしくて、全然平気なのにな」
落ち込む私に苦笑して、エディ兄さんが正確な情報を提示します。
はい。
私達の設定です。
お母さんやお姉ちゃん達が一緒にいられない理由です。
「…そういえば、ラズヴェルト殿の奥方は、故郷では“神降ろしの姫巫女”と呼ばれる、特別な存在だと父上が仰ってましたね。
1年に5度程、4時間程度しか故郷から出られない…のでしたか?」
「あぁ、隠れ郷に張られた結界の中じゃないと、魔力流出の速さに身体が耐えられないらしいぞ。
常に大量の魔力を消費し続けていて、結界の外に出ると、途端に魔力切れを起こすんだと」
エディ兄さんがルクレヒト様の質問に答えながら、目の前の大量のお菓子を坦々と消費していきます。
「なんでも、その体質が神様を降ろす為の条件らしくて、10歳前後でこの体質が発覚するんだとさ。
三つ子は早かったらしくて、7歳頃には分かってたから、郷からの外出に条件が付いちまったんだと」
難しいお話はその辺にして、お茶のおかわりは如何ですか?