お風呂の危機回避~♪ …でも、どんな話にも、落とし穴はあるものです。
はふぅ~♪
お、お、お風呂♪ ぽか、ぽか、お風呂♪
今日の疲れも、さよ~なら~♪
ふにゃぁぁぁぁあ♪
気持ちいい~。
溶けます、蕩けます、でろでろです~ぅ。
「ふにぃ~きもち~ね~」
湯槽に揺蕩う私を、お姉ちゃんが流されない様に捕まえます。
「ユ~ナ~? 深さは無くても、気を抜き過ぎると、溺れるわよ?」
「そうだぞ? 例え溺れなかったとしても、湯槽の縁に頭をぶつける可能性だって、無くは無いんだ。もうちょっと気を付けろ?」
「…ん。…ユナ…怪我したら…ぼく…泣く…よ…?」
………。
フォルお姉ちゃん、ラル姉さんの言い分は尤もですが…。
ベル姉様?
それは、軽い脅しでは?
自宅に戻り、加護に関するびっくり事実を知った後、私達はいつも通りの日常生活を過ごしています。
帰って直ぐは、一休憩としてお茶を飲んだりしながらまったりしてましたが、晩ご飯の支度や晩ご飯そのものは、みんなで楽しみながら、賑やかにすませました。
そうして、後はお風呂に入って寝る準備。
ぁ、勿論、寝る前のお母さんとのお話も楽しみですよ?
1日振りの我が家のお風呂。
昨日の領主邸のお風呂を見倣って、炭酸風呂にしてみました!
ベル姉様が面白い鉱石があると教えてくれたので、即実践しましたとも!
姉様が見せてくれたのは、透明感のある黄緑色の石で、水に浸けてもなんの変哲もないくせに、お湯に浸けると発泡する不思議な鉱石です。
お風呂に入れる前に、水にも浸けてみましたが、本当になんの変化もしませんでした。
なのに、お風呂に入れると、あら不思議。
しゅわしゅわ発泡し始めました。
ただ、うちのお風呂の広さだと、鉱石1つじゃちょっと淋しい感じだったので、石の数を増やしました。
………。
ラル姉さんが面白がって、10個以上を放り込んじゃった…。
クリスお兄ちゃんに指摘されて、姉妹だけで入浴する時は、お湯を減らしてるのに。
今の湯量は、お姉ちゃん達の膝くらい。
湯槽の床に座っても、お湯は顎に着くか着かないかといった感じです。
湯量が多ければ多い程、溺れる確率が上がるのだから、お湯を減らしたら? と言われて、その手があったか!? とお姉ちゃん達と顔を見合わせたのは、つい先日。
ふ、ふふふふふ。
魔法に浮かれて、当たり前のことに気付かなかった私って…。
お姉ちゃん達も、落ち込んでましたよ。
と、また思考が逸れました。
え~と、そう!
ラル姉さんが少ない湯量にも拘わらず、鉱石の数を予想外に増やしちゃったんですよ。
ええ。はい。
只今、お湯はしゅわしゅわを通り越して、じゅわわわわってなってます。
見た目だけだと、炭酸風呂というより、泡風呂か濁り湯……。
まぁ、これはこれでアリですが…。
おかげで、いつも以上に溶けそうな感覚です。
「ぁい~。きょ~ちゅけましゅ」
注意喚起にぽわぽわしながら返事をします。
まずいですねぇ。
軽く湯だってるかもです。
………眠い。
「あ! ユナ! 寝ちゃ駄目よ!?」
「ユナ!? 寝るな! 溺れる!」
「…出よう…」
あぅ~。
なんか……お姉ちゃん達の声………遠…………い……─────
───ハッ!
「………ぁりぇ?」
気が付いたら、目の前にデデンとレグルスのお顔が…。
『……起きたか。阿呆娘め』
「「「ユナ!? 起きた~」」」
『ユナ~大丈夫~?』
『目が覚めて良かった。覚えていますか? ユナはお風呂場で気を失ったのですよ?』
近くにいたらしいお姉ちゃん達が嬉しそうにはしゃぎ、おでこに乗ったアルタイルにも心配され、レグルスの横からシリウスに現状を報告されました。
「ぁう~。あちゃま…いちゃい…」
『完全に逆上せてる様ですね。多目に水分を摂取してください。飲めますか? ユナ?』
「う~」
横になったまま、ストロー付きの大きめマグカップを口許に寄せられ、頑張って飲んでみました。
一口飲めば、大分喉が渇いていたのを自覚しましたが、吸い込むだけでも気力が消耗していきます。
『飲み込むのさえ体力を消耗する状態だろう。無理せず、数回に分ける形で、ゆっくり飲み干せ』
レグルスに注意され、ストローを口から離します。
『大分疲れてたんだね~♪ 逆上せるの久し振りじゃない~?』
アルタイルが羽根先で、私のおでこをてしてしと叩きます。
痛くはない…けど…。
「にゃぁ~、てちてち、やめて~」
「「「アルタイル!」」」
お姉ちゃん達がアルタイルを鷲掴みにして退かしてくれました。
鷲掴み…。
アルタイル、大丈夫かな?
逆上せてるせいか、思った様に動けません。
ちょっと離れた位置で、お姉ちゃん達がアルタイルにお説教? 中みたいですが、耳鳴りもしてるのか声が遠い。
シリウスに促され、ボーっとしつつも、再びストローを咥えます。
ふぅ~。…疲れましたねぇ。
まだ、ちょっと…眠……い…───
*~*~*~*~*
眠りに落ちた私を見て、お姉ちゃん達が悲鳴をあげて慌てたり、その悲鳴にお兄さんズが脱衣場に飛び込みかけてお父さんに叱られたり、レグルスがその場を仕切ったりしていたと、アルタイルが楽し気に話してくれたのは、翌朝私が目覚めてから。
お泊まりの興奮も、新しいお友達も、みんなで楽しむダンスやお料理も、3歳の私にはちょっぴり刺激的過ぎたのかな?
楽しい事も、一度に沢山は大変だなぁ。
全力で楽しんじゃったけど、気持ちは兎も角、身体に負担はあったのかも。
次は気を付けなきゃ。
………。
お母さんと夜のお喋り…出来なかった…。
ふぇぇぇぇぇん。
深夜にも1話投稿予定です。
3月30日の休載穴埋め分です。