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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第7章─新たなお友達? それとも好敵手? 歳上の男の子は、未知の存在です!
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お茶の時間は遅めにしますか? どこまでが “ お約束 ” ?

「「「「「『う~、苦しい~。動けない~』」」」」」


 ………。

 はい。“お約束”ですね。


 フォルお姉ちゃんにベル姉様、エディ兄さんも。

 アルタイルも勿論、ヒュー様とディラン小父様までダウンです。


「…阿保だな」「阿保ですわね」「───ベル…」


 無事なのは、私とお父さん、ラル姉さんにクリスお兄ちゃん、アリア小母様とルクレヒト様。

 レグルスとシリウスも、勿論無事。


 お父さんと小母様が、呆れたように溜め息をつき、ラル姉さんが、ベル姉様の状態に頭を抱えてます。

 ご飯前に、一緒にフォルお姉ちゃんを、からかってましたもんね。


 というか、ベル姉様は最初のご飯の時にも、やらかしてませんでしたか?

 ………。

 取り敢えず、思い出すのは止めておきましょう。

 溜め息が出そうな気がしますし。


「「「…うっ。胸が…ムカムカする…。うぷっ」」」


「ねぇね、ねぇしゃま。おくすり、いりゅ?」


「「……ください……」」


「お、俺にもくれ…」


「「…うぅ。…薬…?」」


 もう、このさい仕方無いですよね?

 人数分お薬を用意しましょう…。


「おとぉしゃん。おかぁしゃんおてせぇのいぐしゅり、だちてくだしゃい。あれにゃら、ニガニガでしゅけど、よくききましゅ」


「ん~───ぁ、これですね」


 そう言って、お父さんが【無限収納】から取り出したのは、赤紫色の粉が入った瓶。

 ラベルには、大きく【胃薬】の文字があります。


「しょれ!」


 このお薬は、かなり苦いです。

 何も知らずに処方された物を飲み、あまりの苦味に気絶した患者まで出た“最()”胃薬です。


 ………。

 取り敢えず、飲んでもらいましょう。


「あと、あまぁ~いかじつゅしゅいも、ろくにんぶん、おねがいしましゅ」


「ほいほい」


 口直し様に、甘めの果実水も、お父さんに出して貰います。

 確か、作っておいた筈…。


「あ、これ。ティクターシュですね。ユナ、いつの間に作ったのですか?」


「くだもにょがりしたとき~♪」


 取り出した水差しから香る匂いに、お父さんが果実水の元の果物を断定します。

 我が家の果実水は、私とラメル姉さんのお手製です。


 ティクターシュは、クラウディア独特の果実で、凄ぉ~く甘いのです!

 初めて食べた時は、本当に驚きました。

 兎に角“甘い”!


 糖度が高いのか、口に入れた瞬間から、甘味を感じる迄が極端に短い。

 舌に乗せた時には、既に口の中が甘さでいっぱい。

 含んだままでいたら、味覚が麻痺しそうな程の甘さです。


 なのに、噛んで呑み込んだ後は、「今までの甘さは何処行った!?」と驚くくらい、綺麗さっぱり、スッキリと爽やかな後味だけが残る、不思議果物です。


 後味は、マスカットに似てました。

 直ぐ消えちゃいましたが…。


 見た目は大きな金平糖。

 大きさは、大人の男性の拳大なので、前の世界のオレンジとグレープフルーツの中間くらい。

 皮には色んな色があるのに、中身はみんな綺麗な………黄緑。


 ………。

 うん。最初に見た時は、食べるの躊躇いました。


 鮮やか過ぎる程に綺麗な黄緑。

 真夏の草原みたいな、爽やかで鮮やかな黄緑。

 レタスやキャベツより、緑が濃くて、黄色味が強い。

 この色で、あの甘味。

 自然界の法則って……。


 香りは、金木犀。

 私の好きな花の匂いがして、香りを辿った先にあったのが、ティクターシュ。

 果物だって聞いた時は、やっぱり驚いたっけ。

 ティクターシュは、香り(最初)から(最後)まで、驚きでいっぱいです♪


「アりゅタイルが、いっぱいとってくりぇたから、いろいろつゅくったの~♪」


 ええ。

 色々作りましたとも!


 果実水を初め、ジャムやコンポート、ゼリーやムース。

 シャーベットに、ドライフルーツ。

 基本はデザート系ですが、本当に色々作りました。


 実は、ティクターシュは、お薬の原料だったりもします。

 果実も花も、葉っぱや樹液すら、乾燥させると(・・・・・・)薬効を持ちます。

 それぞれ用途の違う薬効を持つので、薬師の間では、ティクターシュを育てている人も多いらしいです。

 お母さんは、薬効以前に食材としても栄養価が高いため、確保してくれてました。


 というか……。

 私の【無限収納】に、クラウディアにある食べられる物や、薬効のある物は、(ほぼ)総て【種】か【苗】で収納されてました。

 魔道具【私のお城シリーズ】と、同期させた時点で、勝手に育ってたので気付きませんでしたが、同期させた場所の気候に合わせて、育つ物だけが植えられていた模様。

 育つ環境が違う物は、未だ【無限収納】内に【種】や【苗】の状態で入ってます。


 あと…実は、【無限収納】内に、魔道具も大量にあって、中に【シリーズ】と付くものも多数。

 その中のひとつに、【環境改善シリーズ】なんていうのがあったのですが…。

 フォーレお姉ちゃんに相談したところ、これって温室みたいに“室温湿度管理の出来る空間”を造る魔道具らしく、いずれ環境に関係無く、全種類の【種】や【苗】を育てる事になりそうです。


 ………ハッ!

 話がずれました。

 まずは、お姉ちゃん達にお薬を飲ませねば!


「おくしゅりは、ようほうようりょうを、まもりまちょう」


「胃薬は、1日2回、小匙で3杯」


「い~ち、に~ぃ、さ~ん。こりぇで、いっかいぶんでしゅね」


 薄紙の上に、小匙と摺切りを使って量った粉薬を盛り、同じ様に人数分を用意します。

 赤紫の小山が出来た薄紙を、お姉ちゃん達に渡して、飲んで貰います。


「ニガニガでしゅけど、よぉ~くききましゅ。いっきにのんでくだしゃい」


「「「『うぅ~。はぁ~い』」」」


「「うっ。苦いの〈かい〉…」」


「諦めろ。効果は保証してやるから、とっとと飲め」


「貴方。ヒューも。ちゃんと飲んでくださいね?」


「が…頑張れ、ヒュー」


 お薬と白湯の入ったコップを渡せば、お姉ちゃん達は力無く受け取り、ディラン小父様とヒュー様はちょっと渋りました。

 お父さんが淡々と服用を迫り、アリア小母様がにっこり笑顔で促し、ルクレヒト様はちょっと青ざめてひきつったお顔でヒュー様を応援してます。


「「「「「『──(にっが)ぁぁぁぁぁっ!!!』」」」」」


 揃ってお薬を飲んだ人達が、一様に絶叫して、悶えます。

 絶叫できるなら、まだ大丈夫です。

 最悪、気絶しますからね。


「ほれ」「はい、飲んで」


 私がお薬を用意している間に、果実水を用意してくれていた、ラメル姉さんとクリスお兄ちゃんが、それぞれに果実水を手渡します。


「「「「「『──!? (あっま)!!』」」」」」


 お薬の苦味を打ち消す甘さに、皆揃って口を手で覆います。


「薬に懲りたのでしたら、次からは食べ過ぎには注意なさい。次は、果実水無しで飲ませますよ?」


 お父さんが厳しい眼で、お薬を服用した6人に、言い聞かせます。


 お母さんが作るお薬は、苦い物が多いのですが、お母さん曰く「薬を飲むのが嫌な経験であれば、次はそれをしなくても良くなる様に、多少なりとも行動の改善を考えるでしょう?」との事でした。

 思いやり故の“苦いお薬”なんですね。


 まぁ、飲むのを嫌がるだけで、原因を改善させようとしない場合は、自業自得なので無理矢理服用させるらしいですが……。


「おちゃのじかんは、おしょめになりしょうでしゅね…」


 美味しいお菓子も、食べれなければ、悲しいだけです。

 美味しく食べれる様になるまで、今度はお外へ出てみましょうか?

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