美味しいものは皆で食べよう♪ お悩み解消、取り置きオーケー?
あぅうぅぅぅ。
作り過ぎましたぁ~。
私達の目の前には、大小合わせて、237個のコロッケ。
小さめの方が多いとはいえ、この量は無い。
山と盛られたコロッケに、お姉ちゃん達は苦笑い。
お兄さんズは……遠い目をしてます。
ヒュー様とルクレヒト様、それにアルセさんは達成感故か、キラキラ笑顔。
調理場の料理人さん達──同じ空間でメイン以外を作ってくれてました──は、出来上がったコロッケに興味津々な人と、山盛りの量に唖然としてる人と、二通りの反応。
「つくりすぎちゃいました…」
私、どれだけコロッケが食べたかったんでしょうか……。
流石に、遅くてもタネ作成時には、気付くべきでしたよね。
いや、じゃが芋を湯がき始めた時点で、自重しておくべきだったのか…。
ふえぇぇぇん。
やっちゃいましたぁ~。
泣いてもいいかなぁ。
「…大丈夫…。…皆で食べる…」
「そうね♪ 使用人さん達にも食べて貰えば、これだけあっても、今日中に消費出来るんじゃない?」
「だなぁ。私らの分としては……ん~、一人3個もあれば、充分だな。
あと、レグルス達は、縮小化した上で、5個ずつか?」
「アりゅタイゆは、10こくらいたべしょうでしゅ!」
「レグルスは?」
「ん~、レグルしゅは、たべしゅぎにゃいように、じぶんでちょうせつゅしてるので、きいてみましゅ! レグルス~」
シリウスとレグルスの居る厨房入り口へと走り、2匹に確認してみます。
『私は5個で充分ですよ』
『ふむ。俺は7個にしておくか…』
「シリウしゅが5こ、レグルスが7こね。アルタイりゅは、いくついりゅかなぁ」
『あいつは有れば、有るだけ食べそうだ。ユナが制限しないと、また食べ過ぎで動けなくなるな』
「むぅ。しょだね。たべしゅぎちゃうよね。アルタイルは、10こにしとこう…」
レグルス達の分が22個、私達の分が大人と子供を合わせて33個、合計55個かな?
ぁ、でも、自分で食べたくて作ったのに、私は3つも食べられない……。
………。
お散歩時のおやつに、確保しとこうかな……。
ん。そうしよう♪
いそいそとお姉ちゃん達の元へと戻り、レグルス達が欲しい数を伝えます。
おかわり分も含めて、60個確保して、残り177個。
使用人さん達は、全員で30人程。
それぞれに3個ずつで数えて、90個…。
まだ、87個も残ってる。
「あまっちゃうねぇ…」
人数分を取り分けて、残りの山を見渡します。
粗6皿分が残ってますね。
「ね、これ半分くらい貰ってもいいかしら?」
フォルお姉ちゃんが、残りのコロッケ山を指差して、皆に確認を取ります。
「? 構いませんが。どうするのですか?」
ルクレヒト様が不思議そうに、問い返します。
「魔導鞄にしまっておいて、お腹が空いた時の非常食にしようかなって」
「半分もか!?」
お姉ちゃんの提案に、ヒュー様が驚きます。
いやいや、ヒュー様。
何か勘違いしてませんか?
お姉ちゃんの事だから、私達の分まで確保してくれたんだと思いますよ?
「………。流石に一人で食べたりしないわよ?」
お姉ちゃんが不穏な空気を纏って、胡乱な態度のヒュー様を睨みます。
「私一人で、こんなに食べられる訳無いでしょう!」
「…食いしん坊…が…何を言う…?」
「制御出来ずに食べ過ぎて、動けなくなるまでがお約束だわな」
プリプリと怒るお姉ちゃんに、ラル姉さんとベル姉様が、こっそりツッコミました。
「──っ、ラル! ベル!」
姉さん達の言葉が聞こえたのか、フォルお姉ちゃんの怒りの矛先は、ラル姉さん達へと向かったみたいですね。
ヒュー様が胸を撫で下ろしてます。
作った物を、美味しそうに沢山食べて貰えるのは、作り手冥利に尽きるんですが…。
大食漢みたいに言われたら、誰だって怒ると思うんだけどなぁ。
フォルお姉ちゃん、女の子なんだし。
ぁ、それ以前に、私もアルタイルを大食漢扱いしてましたね。
いけません。
言われて嫌なこと、されて嫌なことは、しちゃ駄目なのです!
あとでアルタイルに謝っておきましょう。
でも、突然謝られたら、驚くかな…。むぅ。
おっと、そろそろ、お姉ちゃんを止めましょう。
姉さん達との追いかけっこに発展しそうです。
厨房で追いかけっこは、流石に駄目ですよ。危険! 危険!!
「ねぇね、ねぇね。オルねぇね」
言い合いをしているお姉ちゃんの服の裾を、ついついと引っ張り、意識を私へと促してみます。
「わたちのつゅくったの、おいちしょうにたべてくれりゅの、うれちいの。ねぇね、あいがとぉ」
裾を引く私に気付いて、お姉ちゃんが目線を合わせてくれたので、にっこり笑ってお礼を伝えます。
これで止まってくれるかな?
「~~~っ、ユナ、可愛い~♪」
一拍置いて、フォルお姉ちゃんが抱きついて来ました。
勢いに驚きましたが、加減がされていたのか、押される事無く、抱き締められます。
「あ~も~、ユナ、大っ好きっ!」
「わたちも、ねぇね、だいちゅき~♪」
「あ! こら! フォル、狡いぞ!」
「…ぼくも…ユナ…好き…」「あたしだって、好きだぞ!」
ベル姉様が右側から、ラル姉さんが左側から、抱き締めてくれます。
フォルお姉ちゃんには、正面から抱き締められていたので、姉妹団子が完成しました。
あれぇ?
何が原因でコウナッタ?
ま、まぁ、良いや!
取り敢えず、追いかけっこは止まったもんね。
*~*~*~*~*
やっと、やっとご飯です!
やぁ、作るにしても、限度って大切ですね。
普段から多目に作る癖がついてたみたいです。
大抵、多目に作って、【無限収納】にしまっておくので。
収納スキルを秘密にすると、ちょこっと面倒臭いですね。
ぁ、バタバタしてたから、コロッケが冷めちゃったかというと、そんな事は無く、今でもホカホカ湯気が目視出来てます。
原因は状態維持の魔道具。
現物は紙。
半透明なクッキングシートみたいな紙。
微弱な状態維持の魔法が付与されている物で、この紙の上に乗せておけば、冷めないし温くならない。
耐久値が粗使い捨て──油や水分に弱いらしい──なので、かなり高価かと思いきや、安価で手に入る主婦の味方。
付与されている魔法が微弱なので、長期間に渡る状態維持は無理。
もって3刻、耐久値ギリギリで半日くらいらしいです。
しかも、食材や料理にしか使えない。
………。
この紙があって、何故にお弁当文化が無いのか…。
不思議異世界事情です。
まぁ、兎も角、ご飯です!
コロッケ食べるぞ~! お~!
食堂の15人程が一度に食べられるダイニングテーブルで、お父さん達が待ってました。
一番奥のお誕生日席は、この領主邸の主であるディラン小父様。
その両脇をお父さんと、アリア小母様──当人に呼び方指定されました──が向かい合う形で陣取っています。
なので、子供達は年齢順に、それぞれの親元へと並びます。
アリア小母様の隣にルクレヒト様、その隣にヒュー様。
お父さんの隣は、フォルお姉ちゃんで、ラル姉さん、ベル姉様、私と並んで、お兄さんズは二人ともヒュー様の隣。
お兄さんズが、どの席に座るかで少々揉めましたが、会話をしながら食事をするなら、この席が最善だとの判断で、確定しました。
では。
皆揃って。
「いただきます!」