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女神様の娘になりました。  作者: 峠岬 嶺
第7章─新たなお友達? それとも好敵手? 歳上の男の子は、未知の存在です!
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作るぞ! まぁ、でも、何事にも準備は必要です。

 楽しいダンスを終えて、再びゆったりと案内して貰っていましたが、みんなちょっと疲れてきました。


「おにゃかへった…」


 軽い空腹感を感じて、ポツリと言葉が溢れました。


「ぁ、そう言えば、もうじき昼の鐘が鳴るか?」


「ん~、あと一刻くらいはあるかな?」


「早めに昼食を摂りますか? それなら、厨房へと連絡しますよ?」


 歳上組3人が、私の呟きを拾って、相談を始めます。

 私は歩き疲れて、ヒューバート様とラル姉さんと一緒に、シリウスの背中にいます。

 私、ヒューバート様、ラル姉さんの順番に座ってます。


 乗せて貰うメンバーや、順番を決める時に、いつもの一騒動もありましたが、シリウスの独断で即決。

 ひょいひょいひょいっと、私達3人を襟首咥えて背中に乗せて、問答無用で歩み始めたので、エディ兄さんがフォルお姉ちゃんを、クリスお兄ちゃんがベル姉様を抱き上げて、シリウスの後を追い掛けて来ました。


 現在は、お姉ちゃん達を抱っこしたお兄さんズが、シリウスの両脇を歩き、シリウスのお顔の右横──エディ兄さんの前──を、ルクレヒト様が案内している感じです。


 私達の頭の上? 頭越し? で相談している歳上組には悪いのですが、私は今猛烈にアレが食べたい!


「コりょッケ、たべたい…」


 お肉メインのお肉屋さんのコロッケや、コーンたっぷりクリームコロッケ、ホクホク男爵芋の王道コロッケに、南瓜や薩摩芋の変則コロッケ。

 色んなバリエーションのコロッケが、思考の全てを埋め尽くしています!


 コロッケ!

 コロッケが食べたいです!

 誰か、私にコロッケをください!


「? コリョッケ? なんだそれ?」


「!?」


 ヒューバート様の聞き返しに、多大なる衝撃を受け、ヒューバート様を振り返って、大きく目を見開きます。


 ふぇ!?

 コロッケを知らない!?

 うどんやグラタン、パスタがあるのに!?


 私の表情が、あまりにも驚きでいっぱいだった為か、ヒューバート様も不安げに私の出方を窺っています。


「………コりょッケ…ちら…にゃい…?」


 ショックのあまり片言になりながらも、ヒューバート様に確認します。

 ヒューバート様が頷くのを確認し、ルクレヒト様にも確認すれば、こちらもやはり「知りません」とのお返事が…。


「あ~、ユナ。ユナの故郷は、隠れ里だろ? ユナが知ってる料理は、独特な物が多いぞ?

 俺達だって、師匠の家で暮らし始めて、初めて食べた料理が多いんだ」


「師匠の料理は、美味しいけれど、大雑把な物が多かったから気付かなかったんだよね。

 隠れ里は、特別な調理方が多いし、料理の種類も豊富、味も一つ一つが繊細で、僕達が育った環境のどんな場所より、食文化が発達してるみたいだよ?」


「…じゃあ…コりょッケ…にゃい…の…?」


 愕然とした私に、お兄さんズが顔を合わせて苦笑します。


「ユナが自分で作れるなら、食べられるんじゃないか?」


「いつもみたいに、作ってくれるなら、僕達も手伝うよ?」


 お兄さんズの提案に、私は即座に頷きました。


 コロッケ!

 コロッケ作るぞ! お~!!



 *~*~*~*~*



 厨房にて、新事実発覚です!

 クラウディア(この世界)には、揚げ物が無かった!!


 え? あれぇ?

 私、かき揚げ食べましたよ?


 この世界、“揚げ焼き”に近い技術はあるのに、“揚げる”という調理方は、存在して無かった!!

 油は大量に使うと、べちゃべちゃになると判断されていて、高温でカラッと揚げて、余計な油をきるという調理方は、確立されていませんでした。


 言われてみれば、私が食べたかき揚げも、厚みの無い平たい野菜焼きみたいな物でした。

 唐揚げやフライドポテトみたいな、大衆人気の高そうな物が、メニューに載っていなかったのも、頷ける状況です。


 領主邸の料理長さんに場所を借りて、早速準備に取り掛かりましょう。


 料理長さんは優しい女の人で、珍しい調理方の料理が食べたいという私の我が儘を、珍しい(その)調理方を教える事を条件に、忙しい時間帯の厨房へと、私達を迎え入れてくれました。

 自宅と違って、調理台の高さが調節出来ない場所なので、大人の手伝いがあるのは、正直大変助かります。

 不安定な足場を作るより、慣れている人に動いて貰う方が確実ですね。

 否も応も無く、問答無用で、料理長さんを確保です!


「んと、よういしゅるのは──」


 取り敢えずは、王道。

 男爵芋のポテトコロッケを作りましょう♪

 材料…メインは、まぁるいじゃが芋。男爵芋さんですね。

 あとは玉葱、挽き肉に卵があれば、粗方揃っ………てません!?

 パン粉! パン粉がありません!

 ……むぅ。仕方ありません。

 無いなら作っちゃいましょう。


「アルしぇしゃん…あまってりゅパン…ありましゅか?」


 無かったら、どうしましょうか…。

 不安を感じつつも、パステルカラーの淡い紫の髪の料理長──アルセ──さんを見上げて、尋ねます。


「? 朝の残りで良ければ、多少ありますが…」


「しょれ! くだしゃい。パンこをつゅくりましゅ♪」


 ヒシッとアルセさんの足にしがみつき、欲しいアピールをした私の勢いに、アルセさんはちょっと驚きはしたものの、直ぐにパンを用意してくれます。


 エディ兄さんにお願いして、パン粉を作って貰います。

 すりおろし作業も、私の小さな手だと、固定が難しくて、時間が掛かるので…。

 あぅ~。早く大きくなりたいです。


 調味料は…お塩に胡椒。

 バターやコンソメを加えても良いですが、今日のところは止めておきます。

 ……手を加えて失敗すると、失望感が半端無いです…。

 なので、思考が埋め尽くされる程食べたい物がある時は、“基本に忠実”が私の調理における定石なのです!


 さて、あとは油ですね。

 揚げ物は、油が大事。

 古かったり、動物由来の物だと、臭いが気になりますしね。

 量もある程度必要ですから。


「…本当に、油を大量に使うのですか?」


 植物油の入った壷を用意してくれたアルセさんが、不安そうに私達を見回します。

 ヒューバート様とルクレヒト様は、困った様に苦笑してますが、自宅で揚げ物を食べてるお姉ちゃん達や、お兄さんズは躊躇い無く頷いてます。


「揚げ物は旨いですよ。食い過ぎると気持ち悪くなるのが、珠に傷っすけどね」


「エディは食べ過ぎ。君が食べる量は、おかしいからね?」


「…アルタイルも…凄い…。…どっちも…変…」


 お兄さんズのやり取りに、ベル姉様が便乗してます。珍しい…。

 ………。

 でも、分かります。

 エディ兄さんとアルタイル、時々お父さんとフォルお姉ちゃんも、食べる量がおかしいですから。

 動けなくなる程食べるのは、危険だと思いますよ?

 沢山食べてもらえるのは、作り手冥利に尽きますが、後々体調を崩されると、心配が尽きません。

 作る量を減らすべきでしょうか…。


「いっぱいつゅくらないで、ちょっとにすりゅ?」


「「え!?」」


 提案してみた私を、エディ兄さんとフォルお姉ちゃんが、驚愕の表情で見下ろします。


 え? 駄目ですか?


「ぶふっ。クククっ。……ユナ、食べ過ぎの体調不良は、自己責任だ。沢山作っても、大丈夫。

 と、それより、父上に作業台を出して貰って来るよ」


「あ! ラル、私も行くわ!」


「…なら…ぼくは…ユナと居る…」


「お願いね! シリウスは、そのまま此処に居て。戻って来るときは、レグルスに頼むから大丈夫よ♪」


 私達のやり取りに、ラル姉さんが吹き出しました。

 姉さんが笑い飛ばしてくれたお陰か、不安が吹き飛んだので、大量に作りましょう♪


 ラル姉さんとフォルお姉ちゃんが、お父さんの元へと走り出します。

 確かに、【無限収納】からなら、自宅にある作業台(魔道具)を取り出せます。

 私が出すのは不味い──【無限収納】は、家族以外には秘密です──ので、お父さんに出して貰うんですね。


 シリウスは、厨房の入口の横で、お座りして待っててくれてるのですが、お姉ちゃんから再び待機命令が出されました。

 お父さんの所まで、運んでくれるつもりだった様ですが、お姉ちゃん的には自分達の移動より、私の安全が優先らしいです。

 念話が『ユナの護衛宜しく~♪』と、シリウス宛に届いてました。

 私にまで聞こえたのは、お姉ちゃんの気配りか、うっかり失敗(ミス)のどっちかですね。

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