お邸探検♪ 最初はちょっとシリアス風味。悲しい出来事は、誰の元にも突然訪れます。
さてさて、やって来ましたお邸探検の時間です!
「たんけん、たんけん♪ おやちきたんけ~ん♪」
約束のお邸探検に出発です!
メンバーは、お姉ちゃん達3人と、お兄さんズとシリウス。
案内役に、ヒューバート様と、そのお兄様のルクレヒト様。
レグルスとアルタイルは、お父さん達とお留守番です。
………。
前にも思いましたが、探検に興味を示すべきは、男性陣ではないのでしょうか?
レグルスもアルタイルも、華麗に流しますよね…。
シリウスは、お姉さん的目線から、お付き合いしてくれている感じです。
探検にワクワクしてるのは、私だけ?
ちょっと寂しい…。
気持ちを切り替えて、探検を楽しみましょう♪
気持ちの浮き沈みが激しい私を気遣ってくれるのは、ヒューバート様。
自分より小さな子供に接した事がなかったそうで、割れ物を扱うかの様に、慎重に接してくれます。
案内の際に、あちこち気を捕られる私を案じて、手まで繋いでくれました。
強く引かれる事もなく、自分の速さで歩く事もせず、常に私の歩幅に合わせ、ゆっくりのんびり進んでくれます。
紳士ですねぇ。
6歳にして、レディファーストが粗完璧とは。
歳が離れていると、私の歩みに合わせるより、抱き上げた方が早いので、女の子扱いより、子供扱いされる事の方が多いんですよね…。
3つくらいの差だと、こんな風に女の子扱いされるのですねぇ。
「ヒュー、大丈夫かい?」
「問題ないですよ兄様。ぁ、少し急ぎますか?」
歩みの遅い私のせいで、ちょいちょい遅れがちになるのを心配してか、ヒューバート様のお兄様──食事時の紹介で、ルクレヒト・マルス・オルブラントと名乗ってくれました──が、時々声をかけてくれます。
ところで、お兄さんズ……もうちょっと心配してくれても、いいのですよ?
遅れるメンバーは、私を含めた年下組──私達姉妹と、ヒューバート様の5人──なので、お姉ちゃん達が一緒な為か、お兄さんズは全然心配してくれません。
「いや、今日は父上からも、休日に当てて良いと了承を貰っているから、時間は気にしてないよ」
「良かった。ぁ、でも、歩調を合わせるのが大変な様なら、双手に別れますか?」
「ん~、大変では無いけど、見たい場所が別なら、別れた方が良いかな?」
「そうですね。ユナ、此処が見たいって場所はあるか?」
突然尋ねられて、咄嗟には思い付かず、プルプルと頭を横に振ります。
お兄さんズも特に此処! という場所が無かったみたいで、今以上にゆっくり見て廻ることが決まりました。
お兄さんズも、今日の鍛練はお休み……というか、既に終了?
朝のうちに、日課のお父さんとの打ち込み稽古を終え、更に昨日と同じく練兵場での複数組手を行っていたらしいです。
朝食の席に遅れたのは、そのせいだったみたい。
お父さんは、涼しい顔で席に着いていたので、今日も朝稽古をしているとは思いませんでした。
余所様の御宅なので、日課とはいえ、朝から稽古に励むとは、考えなかったんですよね。
………私も普段通りに過ごしていましたが…。
朝食の席で、エディ兄さんが、「師匠……あれだけ動いて、汗ひとつかかないとか……人間やめてないか?」なんて小声で呟いていたのに、ちょっと吃驚しましたが。
勿論、エディ兄さんは、朝食後にアイアンクロー? でしたっけ?──頭を鷲掴みにして、頭蓋骨を軋ませる技?──を、表情を消したお父さんに、無言でかけられてました。
声も出せずに、降参の意思を告げる様に、お父さんの腕を高速で連打するエディ兄さん…。
あまりの状況に、理解が及ばず周囲も無言でしたね。
おっと、また思考が逸れました。
*~*~*~*~*
「──で、この人が先代…僕の本当の父親ですね」
歴代の領主様の肖像画が飾られた回廊。
古い代から眺めつつ歩いて来て、一番新しいディラン小父様の絵のひとつ前。
ディラン小父様に良く似た雰囲気、ディラン小父様と同じ黒に近い濃紺の髪、綺麗な水色の瞳の青年が描かれています。
小父様はお父さんと同じ歳(27歳)で、ルクレヒト様は12歳。
小父様の奥様、アリアテレス・ルシェル・オルブラント様は、ひとつ年下の26歳。
クラウディアでは、成人するのは15歳とはいえ、貴族間では成人前に婚姻を結ぶのも少なくありません。
なので、ルクレヒト様が御二人の実子であっても、有り得なくは無いのですが、実際は小父様の実兄であり、前領主であった方の忘れ形見で、ヒューバート様とは従兄弟になるのだそうです。
小父様は、不慮の事故で亡くなられたお兄様の変わりに、領主という地位に就いたそうです。
本来であれば、小父様は領主補佐をつとめる立場だったのですが、前領主であったお兄様が亡くなった事故には、同行していた奥方や、そのお腹に宿っていた小さな命も巻き込まれていました。
後継ぎであるルクレヒト様だけが、たった1人遺される形になった為、当時婚姻したばかりのディラン小父様が引き取り、実子同様に育ててくれたのだそうです。
オルブラント伯爵家は、代々国境を守護する家系な為か、成人の義を迎えると必要最低限の政務を教え込まれ、早々に爵位の継承が行われ、次代へと権限を移すのが慣わしになっています。
実際、ルクレヒト様のお父さんが領主になったのも17歳の時で、先々代様──小父様のお父さん──は領主の地位を降りた後、今でも最前線……というか国境に当たる森や山脈で、警備に尽力しているらしいです。
若い世代で継承を繰り返しているため、突発的な対応を要する事態にも、柔軟な対処が可能という組織作りがされているんだって。
それもあって、小父様が領主となるには、大きな変動は無かったのですが、一度に家族を喪ったルクレヒト様は、感情が抜け落ちた、人形の様な子供へと変わってしまったそうです。
当時を知る大人達は、いまだに心配性のままだと、ルクレヒト様が苦笑していました。
ルクレヒト様を救ってくれたのが、引き取られて暫くして産まれた、ヒューバート様だったんだって。
ヒューバート様は、兎に角人見知りの激しい赤ちゃんで、両親以外が触ろうものなら、引き付けを起こすまで泣き叫び、誰の手にも負えない問題児だったそうな。
なのに、ルクレヒト様だけは違った。
何故かは分からないまでも、ルクレヒト様だけは特別らしく、触ろうと抱き上げようと、泣き叫ぶどころか、キャッキャッと喜び、常にご機嫌。
そうなれば、当然の如く、ヒューバート様をあやすのは、ルクレヒト様の独壇場となった。
両親以外では、自分にしかなつかない小さな命。
全部喪ったと思っていた家族が、形は違えども、まだちゃんと傍にあると実感するのに、そう長くはかからなかったんだって。
ヒューバート様を受け入れる事で、小父様達にも心を開く事が出来る様になり、今では実の両親や、生まれてくるはずだった兄弟の分まで、前向きに生きられていると、ルクレヒト様は誇らしげに教えてくれました。
お話を聞いている間、ヒューバート様が百面相をしていたけれど、ルクレヒト様がお話を終えて微笑んだ時には、ヒューバート様もとっても嬉しそうに笑っていました。
*~*~*~*~*
「さて、長々と語ってしまいましたし、案内に戻りましょうか」
微かな痛みを残しながらも、小父様達が素敵な家族である事が知れるお話に、私もお姉ちゃん達と笑顔を交わして、お邸探検へと気持ちを戻します。
次は、どんな場所でしょう♪
体調不良です。
発熱です。
インフルエンザは勘弁してください。
病院は……怖くて行けず……。
↑
!Σ( ̄□ ̄;)早く行けヨ!
あれ?
1日寝込んで完治?
あの発熱は何だったのか…。
(・_・?)???
取り敢えず、投稿に支障が出なくて、良かった良かった。
ε=( ̄。 ̄ )