英雄の家族が教える『嫌味受け流し方法』? 笑顔は無敵、真顔は素敵?
今年もあと少し。
この投稿で、今年分は終わりになります。
忙しい年の瀬を、皆様健やかにお過ごし下さい。
「何!? 彼の英雄【銀雷のラズヴェルト】殿か!? それは本当だろうな!? 嘘だったら、承知しないぞ!?」
「本当だ。あたしは、ラル・オーリシェン。同じくラズヴェルトの娘だ」
「…ぼくは、ベル…。…ベル・オーリシェン…。…ぼくも…父様の娘…」
興奮して、言葉遣いが荒くなるヒューバート様に、呆れた様に自己紹介するのはラル姉さん。
ベル姉様は、ちょっとお顔をしかめて、ボソボソと自己紹介をしました。
………。
ベル姉様、五月蝿いのや騒がしいのが苦手だから…。
うん。
仕方無いと思うの。私も苦手ですもん。
「英雄殿の娘児達とは……、今までの無礼、失礼致した」
人族では、ただ1人のSクラス冒険者として、お父さんは男の子達の生きた英雄として、憧れられているらしいです。
どこの世界でも、英雄の冒険譚──お父さん的には黒歴史らしいですが…──というのは、男子に人気なんですね。
その上、お父さんの容姿や、お母さんとの相思相愛加減──巫女姫と英雄の恋物語として本にまでなってます──が、女の子達まで虜にしているらしいです。
興奮をなんとか呑み込んで、ヒューバート様が謝罪をしてくれました…。
が、言葉が硬い!
それは、子供の喋り方じゃないと思います!
「ヒューバートしゃま、むじゅかしいことばは、イヤなの」
お姉ちゃん達にグイグイと近付いていたヒューバート様に、もう一度近付き直して、お洋服の裾をツンツンと引っ張って、関心を引いてみました。
自分の気持ちを伝えつつ、フルフルと首を横に振ります。
「だな。ヒューバート様は、幾つなんだ? あたし達は8歳と3歳だ」
「僕は、今年6歳になったのだ。もう、立派な大人なのだから、言葉遣いや言い回しに気を使うのは当然だ」
ラル姉さんに聞かれて、少々戸惑いながらも、ヒューバート様が歳を教えてくれました。
私より3つ程歳上ですねぇ。
「…6歳…。…ぼくたちより、年下…。…なら、まだ子供…。
…貴族であれば、確かに気をつけるべき…。…でも…」
「公の場でもないのに、無理する必要なんて無いじゃない。
それと、成人した訳でもない子供に、大人の対応を望む様な相手は、無視しておけば良いわよ。
あぁ、無視するっていっても、分かりやすく無視すれば、態度が悪いとか難癖をつけられて、家族まで貶されたりするから、極端な表情で聞き流すのをお奨めするわ♪」
ヒューバート様の言い分に、ベル姉様とフォルお姉ちゃんがサクッと反論してますね。
フォルお姉ちゃんなんか、立て板に水状態で、受け流し方まで教えてますし。
「極端な表情?」
「…ん。満面の笑顔か…、無表情がお奨め…」
「あたしとベルは無表情で、フォルとユナは笑顔で聞き流すぞ?」
ベル姉様まで推奨してますし、ラル姉さんは私達の受け流し方法を説明してます。
ここは、私も話に乗りましょう♪
「ヤなことをいわりぇたら、えがおで“しらんかお”しゅるのよ。
おかぁさんも、おとぉしゃんも、そうしなしゃいって、いってたの♪」
お母さんは勿論、お父さんまで推奨してくれましたとも!
因みに、お母さんとお父さんは、笑顔派だそうです。
ただし、お父さん曰く、お母さんは軽く天然呆け気味だそうで、興味の無い相手や嫌味しか口にしない様な相手は、記憶に残らないんだって。
なので、嫌味をどれだけ口にしても、暖簾に腕押し、糠に釘状態で、嫌味が途切れた辺りで、お父さんに「あの人、誰? 知り合い?」なんて、真剣に確認してくるらしいです。
このエピソードを聞いた時、お姉ちゃん達は爆笑してました。
以来、お姉ちゃん達も、お母さんに倣う形で、どうでもいい相手は、記憶してくれないのです。
だから、お姉ちゃん達が覚えない分、私が覚えておくことにしています。
回避方法としては、聞き流すより、端から遭遇しない様にした方が、嫌な気持ちになること無く、平穏に暮らせますからね。
「成る程な。僕なら無表情が良さそうだな。
言葉を崩せと言うなら、私的な場所では、多少言葉遣いが荒くても、許してくれるか?」
ヒューバート様が納得し、言葉を崩す許可を求めてきました。
立場的には、本来なら許可を求めるべきは、私達の方だと思うのですが…。
というか、公の場だと、私達の態度は、完全に不敬罪が適用されますね。
「私達も、今まで通り敬語を使わなくて良いなら、そんなの全然許容範囲内だわ♪」
フォルお姉ちゃんが楽しげに了承したので、私達も頷くことで同意します。
そんな私達を見て、ヒューバート様も嬉しそうに笑いました。
*~*~*~*~*
朝ご飯の時間まで、もう少しあるので、室内のサンルームへと移動し、お茶をしながら色々なお話をしました。
ヒューバート様が聞きたがったのは、お父さんの冒険譚で、お姉ちゃん達が話してくれるそれを、私と一緒に目をキラキラさせて聞いたり。
お姉ちゃん達が、私という家族が増えた時の気持ちを、熱意をもって語ったり。
お姉ちゃん達に負けじと、ヒューバート様がお兄様との思い出を話してくれたりと、和やかな時間が過ぎて行きます。
「……ところで、お前達3人は誰が姉で、誰が妹なんだ?」
ふと、自己紹介の時に、名前と“誰の娘であるか”しか名乗らなかったお姉ちゃん達の言葉を思い出したのか、ヒューバート様が尋ねてきました。
私は、四女と名乗っていたので、ヒューバート様の視線は、お姉ちゃん達3人の間をさ迷います。
「私達は三つ子なの。3人に順番は無いけれど、書類に記載されてる順番は、私が長女で、ラルが次女、ベルが三女よ」
「まぁ、あたし達姉妹は、姉が3人、妹1人って感じだな」
「…ん。…それが正解…だと思う…」
フォルお姉ちゃんが説明し、ラル姉さんが結論を口にします。
ベル姉様も同意して、隣に座っていた私の頭を撫でてくれます。
確かに、お姉ちゃん達は誰が一番上といった言動がありません。
私といる時は、お姉ちゃん達が上で、私が下といった姉妹間の暗黙の了解──勿論、上は下を守る者、下は上を頼り支える者という意味です──がありますが、お姉ちゃん達だけだと、3人が3人とも同等なんです。
姉妹であると同時に、気心の知れた友人の様な、お姉ちゃん達の在り方は、とっても素敵なのです♪
切りがいいのか、悪いのか…。
今年も一年間、作者の拙い文章にお付き合い頂き、ありがとうございました。
来年からは、以前予告した様に、投稿スタイルを変えてみようと思っています。
半月毎の偶数日投稿ではなく、毎週金曜日の週一投稿になります。
慣れてきたら、月・金の週二に出来たら良いなぁなんて考えています。
取り敢えずは、週一投稿という事で、来年最初の投稿は、1月5日を予定しています。
つらつらと拙い文章を書き連ねる、未熟な作者ですが、慈愛の精神をもって読んでくださる読者様方に、多大なる感謝を。
今年一年、大変お世話になりました。
来年も、何卒宜しくお願い致します。
良いお年を。
峠岬 嶺