始めてのお泊まりは、よく知らない場所。…でも、お父さんのお友達のお家です。
「はふぅ。いいおゆでちたぁ。ゆじゅのかおりが、しゃわやかだったねぇ」
大浴場でお姉ちゃん達と温まり、先程目覚めた時に居たお部屋へと戻って来ました。
客室にも簡易浴室があるのですが、広いお風呂が別の場所にあるので、そちらを使わせてもらいました。
簡易浴室だと、姉妹4人で一緒に入るのは、ちょっと無理そうだったので。
しかも、大浴場なら掛流しのお湯も、簡易浴室だと湯量を調節しなきゃいけませんし、温度調節──沸かし直しには魔導具が必要──を小まめにしたりと、手間が余計に掛かります。
なので、どちらか選ばせて貰えるとなった時に、大浴場の使用をお願いしてみました。
快く許可してくださった領主様にお礼を述べて、大浴場へと向かえば、本日の湯には柚子の実が浮かんでました。
「家でも今度やってみるか?」
「薬草湯や、香草湯なんかも、良さげね♪」
「…鉱石も…」
「ぅ? こうせき? おふりょに?」
「…うん…色んなのがある…。
…湯に浸けると…泡が出るの…とか、…湯の色を変えるの…とか…。
…勿論、効能もある…。…例えば───」
ベル姉様の鉱石講座が始まりました。
フォルお姉ちゃんの薬学講座でも思いましたが、流石は女神様。
知識が深くて広いです。
私には、一般的な知識が刷り込まれているだけなので、まだまだ知らない事の方が多いですね。
勿論、現物があれば、【鑑定】スキルで確認しますよ?
でも、その場その場で、確認作業をするのは、あまり誉められた行為では無いのです。
お勉強は必須項目ですよねぇ。
実際、【鑑定】は複合技能なので、所持している人は少ないのです。
通常技能である【物品鑑定】【無機物鑑定】【生物鑑定】を、揃って所持して始めて複合スキルの【鑑定】が使える様になるんですから、稀少性は高くなります。
通常スキルのどれか1つ、もしくは2つを所持している人は、普通にいるので、そのくらいなら自ら暴露したりもします。
ですが、複合スキルや上位スキルは…。
所持している事を知られれば、どんな状態になるのか、考えるだけでも……オソロシイ……。
まぁ、私の所持技能は、どれもそんな感じになっちゃう訳ですが…。
【鑑定】どころか、上位技能の【看破】と【隠蔽】も所持しているので、最上位技能【解析】に統一されちゃってますもん。
ウフフ。そりゃあ、お母さんも心配し過ぎなくらい心配しますよねぇ。
クラウディアに来て、落ち着いて刷り込まれた知識を確認したのは、お姉ちゃん達と会えてから数日後でしたが、驚愕の嵐でしたよ。
説明されていたとはいえ、私の認識が甘かったです。
お姉ちゃん達が、誘拐を警戒したのも頷けました。
ぁ、お母さんには感謝しか無いです。
この状態は、お母さんが故意に起こした訳じゃ無いですし、何より、きちんと謝罪されてますしね?
あんなに申し訳なさそうなお母さんは、始めて会った“巻き込まれ事故の謝罪時”以来でしたから。
ベル姉様の鉱石講座を聴きながら、思考が変な方に跳んでます。
集中力が落ちてますね。
「ベル、そのくらいでストップ!」
「だな。今日は疲れてるし、早めに寝た方が良い。ユナ、母上に挨拶しておいで」
「…ん…ごめん。…つい…」
「ぁい。めがみじょうは…リュックのなか~。…どこにおこう…」
むぅ。眠いせいか、滑舌が悪いですね。
そういえば、今日は後半、興奮や緊張で噛み噛みでしたねぇ。
発音が怪しい事この上なかった気がします。
取り敢えず、女神像は窓際のティーテーブルに置きましょう。
窓を背にして置いて、カーテンを開けば、小さな像でも、月明かりが映えて、綺麗です。
*~*~*~*~*
『お母さん、お母さん聞こえる?』
御祈りの形に手を組んで、目を閉じてお母さんを思います。
ティーテーブルが私の視線と同じくらいの高さなので、今日は立ったままです。
『ユナ。大丈夫だった!? 風邪をひいたりしてない!?』
焦った様なお母さんの声に、心配してもらえた嬉しさと、心労を掛けた悔しさが浮かびます。
『大丈夫だよ。水分はレグルスが直ぐに乾かしてくれたし、その後は暖かい場所にいたせいか、全然元気!』
『良かったわ。あの瞬間を“窓”から見てたから。
なんとか思い留まったけど、無意識に顕現しかけちゃったもの。
あの子達、天罰とか必要かしら………ね?』
ひょわぁぁぁ。
お母さんが怒ってます!?
天罰って、なんですか!?
と、取り敢えず、話を逸らす方向で…。
『お母さん! 今日はね、色んな事があってね、色んな人に会ったんだよ!』
お母さんの気を剃らすためにも、今日あった事を報告します。
思いの外、色んな事がありましたからね。
ベル姉様とラル姉さんの思い掛けない帰宅。
お父さんとの始めてのお出掛けと、悪者さんの受け渡し。
お姉ちゃん達や、お兄さんズとの街中散策。
お姉ちゃん達とお揃いのリボンと、始めてのプレゼント。
冒険者組合での騒動と、モル兄との再会。
噂の真実と、ギルドの面白い職員さん達。
まだまだ話は尽きなくて、お母さんに聞いて貰える事が嬉しくて、時間が全然足りません。
とうとう睡魔が襲ってきて、必死に善戦するも、最後には屈伏するしかありませんでした。
この章、『女神様の娘に…』最長ですね。
グダグタでスミマセン。
σ( ̄∇ ̄;)
一応、この話でこの章は終幕? です。
が、形的に次章に続きます。
(-""-;)
だって、ユナちゃんがお家に帰れなかったんですよ~。
あの子達は、作者の都合お構い無しに、勝手にお泊まりしやがりました!
!Σ( ̄□ ̄;)
何してくれてますか!?
(`Д´≡`Д´)??
続きの展開考えるのは、作者なんですよ!?
…くっ! 逃げてやるぅぅぅ!
。・゜゜(ノД`)