夢の中でお勉強? お母さんが教える常識講座・スキル篇
結愛ちゃんが寝てる間に、少しだけ説明(解説?)になります。
分かりにくいかもですが、お付き合いください。
微睡みの中で、お母さんが教えてくれたことを、ふと思い出した。
◆◇─◆◇◆─◇◆
~3匹を紹介される前~
「技能について、説明するわね。クラウディアに行けば、説明が無くても、身体に馴染ませた知識で、理解は終えていると思うけど、今現在の結愛が気になるでしょ?」
「うん」
紅茶を飲み干して、お母さんの話を聞きます。
「技能はね、さっき教えた様に、先天的なものと、後天的なものがあって、各系統に7つずつ存在するの。わりと簡単に取得出来る“通常スキル”が3つ、通常スキル3つを合わせた“複合スキル”が1つ、取得の難しい“上位スキル”が2つ、6つのスキルを統一した“最上位スキル”が1つの、合計7つよ。」
「ん~? 例えば、私の持ってる、最上位スキルは?」
「結愛が持ってるのは、【主婦】【職人】【採集】【解析】【獣契約】【状態異常耐性】【精神異常耐性】の7つね。【主婦】は、完全に前の経験値の持ち越しになってるわね。練度は、上限達成まで上がっちゃったけど……」
「ふぇ? 一般的に、スキルってそんなに持ってるもの?」
「通常スキルなら、わりと沢山持ってる人は、多いわよ? 冒険者には、特に多いかも。ただ、結愛の場合は、私の眷族であることで、取得スキルも多くなるし、そのレベルも上がりやすいの」
(……冒険者がいるんだ……)
「レベル?」
「技能練度のことよ。練度は、初級・下級・中級・上級・徒弟・習熟・熟練・師範・達人・神業の10段階があって、それぞれ経験値を99まで上げれば、次のレベルに上がるの。中級以下は“見習い”とか“未熟”って言われるし、上級以上で“そこそこ使える”くらい。熟練以上が“腕利き”と言われるわ。達人までは、順当に成長するけど、神業に至るには、経験値が999必要になるし、神業の上限達成にも、同じ様に999の経験値が必要よ。文字で説明するなら…こんな感じかな?」
1枚の紙が、テーブルの上にあった。
∵∴∵∴∵∴∵∴∵
錬度[経験値]
(見習い・未熟)
Lv.1:初級[99]→下級[99]→中級[99]→
(そこそこ)
Lv.4:上級[99]→徒弟[99]→習熟[99]→
(腕利き)
Lv.7:熟練[99]→師範[99]→
達人[999]→Lv.10:神業[999]
※ 上限達成すると、経験値の表記が不可視になる。
∴∵∴∵∴∵∴∵∴
(ぁ、分かりやすい…)
「普通なら、神業に至ること自体、ほとんどないわ。なのに、眷族である結愛のスキルは、どれも勝手に上限達成しちゃう……」
何か気になったのか、お母さんの表情が曇る。
「スキル取得と同時に、経験値が限界まで上がっちゃうのが、眷族仕様ってこと?」
「ええ。ごめんね」
「ん? なんで、“ごめんね”?」
「だって、本当なら人族にとって、長い時間をかけて上がる経験値が、取得直後に神業になっちゃうから、何かちょっとした事で、異端扱いをされかねないもの。結愛を守りたいのに……」
「お母さん、大丈夫だよ? お母さんが心配してくれてるのを、私は知ってるでしょ? だから、他の誰かが私を嫌っても、独りにはならないもん」
落ち込むお母さんに、笑って見せれば、お母さんもちょっとだけ笑ってくれた。
「分かったわ。説明を続けるわね」
「うん」
「じゃあ、技能錬度は1度置いて、話を戻すわね」
「うん。逸らしちゃって、ごめんなさい」
「大丈夫よ。ふふっ。え~と、結愛の最上位スキルを例えに使いましょうか」
空気を変える為に、ほんの少し勢いをつける。
「じゃあ、【主婦】で説明してください!」
「ふふっ。は~い。それじゃ【主婦】を例えに使うわね♪ これは、通常スキルの【料理】【掃除】【洗濯】の3つが合わさって、複合スキル【家事】になったことと、上位スキルの【育成】と【家計管理】を取得していたことで、6つ全てが統一されて【主婦】スキルに進化したのよ」
「ん~と、【料理】【掃除】【洗濯】のどれか1つが抜けてれば、【家事】スキルにはならないし、複合スキルである【家事】があっても、上位スキルの【育成】と【家計管理】が取得出来なきゃ、【主婦】スキルにはならないってこと?」
「そうよ。【家事】を取得出来ても、【育成】か【家計管理】のどちらか片方しか取得出来なければ、最上位スキル【主婦】は取得不可能なの」
「結構面倒くさい?」
「そうね。しかも、取得したスキルには、レベルが存在するから、取得条件の厳しい上位スキルや最上位スキルは、持っている者自体が少なくなるの」
「ぁ、そっか。ここでレベルが関わってくるのかぁ」
「結愛は取得さえ出来れば、レベルは常に最高レベルの神業[999]になっちゃうから、割と楽かもね。逆に取得し過ぎると、最上位スキルだらけになるかも……」
お母さんが、徐に真っ更なステータスウィンドウを開いた。
そこにすぐさま、新しいステータスが記入されていく。
「通例として、15歳になると教会で“成人の儀”が執り行われ、ステータスウィンドウの自己開示が可能になるのだけど…」
─────────
名前:─
種族:人族
年齢:15歳
職業:村人
魔法属性:無/火
技能:収穫―Lv.2[18]/採取―Lv.1[77]/大工―Lv.1[82]/投擲―Lv.1[39]
固有技能:─
加護:─
称号:働き者
─────────
「一般的な人族の成人男性だと、こんな感じのステータスになるわ。大抵、通常スキルのみで、1つでも下級になっていれば、優秀だと言われる方かな。成長に合わせて、スキルも増えるし、レベルも上がるけどね。冒険者だと、これの2から3倍位ね」
「? 2倍から3倍? 1番高いスキルレベルでも、中級くらい?」
「ええ。“駆け出し”とか“初心者”と呼ばれる冒険者が、それくらいね。“ベテラン”とか名前の知られる様な冒険者だと、もうちょっとレベルも高いし、スキルも多くなるけど」
「固有技能は?」
「持っていないのが当たり前ね。ユニークスキルは、女神達が与える、“特別”の印なの。だから、普通のスキルとは少し違って、先天的なものしか無いわ。ただ、100~500人に1人くらいの確率で与えているみたいだから、大きな街なら10人以上はいるかしら? 小さな村だと、1人いるかどうかって感じかな」
「? お母さんがあげてるんじゃないの?」
「ええ。私は【管理者】だから、世界に生まれる命に干渉出来ないのよ。私が干渉するなら、間接的にじゃないと、バランスが崩れちゃうから」
(お母さん以外に、神様がいるのかな? お母さん自身が、自分のことを“みたいな何か”だって言ってたけど…)
「なら、私は? 私にユニークスキルをくれたことも、いけないことじゃないの?」
「大丈夫。屁理屈に聞こえるかも知れないけど、結愛は“世界の外”で生まれた命だから」
「世界の外?」
「ええ。“転生”するのであれば、クラウディアで生まれた命だから、私が干渉することは出来なかったんだけど、結愛は“転移”するんだから、クラウディアとは違う世界で生まれた命になるわ。だから、私自身がユニークスキルを与えることが可能なの」
「いいのかなぁ…」
「いいのよ。結愛はもうちょっと欲張りになりなさい♪」
(まぁ、いいか。お母さん笑ってるし…)
「え~と。スキルについては、大体分かったよ。あとは…あ、取得方法って?」
「スキルの取得方法は、様々よ? 大抵は、行動することで取得するけど、それぞれに条件があって、その条件を揃えないと、どれだけ行動しても取得出来ないの」
「例えば?」
「例えば…結愛の場合なら、通常スキルの【料理】は、10種類以上の食材の知識を持つ、5種類以上の調味料の知識を持つ、包丁を使う、鍋またはフライパンを使う、出来上がった料理を自分で食べる、この5つの条件が揃って、スキル【料理】の初級を取得したの。下級に上がるには、また別の条件があるわ」
「? あれ? レベルって、経験値が99になれば、勝手に次の段階になるんじゃないの?」
「違うわね。それだと、高レベルのスキルを持つ存在が、もっと多くいる筈でしょ?」
「ぁ、そっか。確かに…」
「レベルは、1段階ごとに取得条件が変わるの。だから、出来るとこを増やしながら、手探りで取得条件を解明しようと、頑張ってる子達も少なからず存在してるわ」
「向上心の強い子達が、高レベルの通常スキルや、低レベルとはいえ上位スキルを取得してるのが、クラウディアの現状かな。稀に、最上位スキルを取得出来た子もいるわね。そういう子は、ユニークスキルを持ってることが多いの」
「私の場合は、眷族仕様だから、最上位スキルが多くなっちゃったのかぁ」
「ええ。もともと、結愛は“本来1度消す筈”の経験値を、そのまま抱えていたから、最初から取得スキル自体が多かったの。だけど、クラウディアでの生活は、以前の常識を抱えたままだと、厳しいモノになりそうだったから、必要性の高いスキルを、身体を創る際に追加しておいたの。それがしっかり反映されてるわね」
「クラウディアでは、あんまり派手に行動しない方がいいかな?」
「大丈夫。そのステータスでも、自由に動ける様に、いろいろ準備してあるもの♪ 結愛は自由に楽しんで♪」
「ありがとう、お母さん。大好き」
「ふふっ。私こそ、ありがとう。私も結愛が大好きよ」
テーブル越しに、優しく頭を撫でてくれるお母さんの手が、暖かくて幸せな気持ちを教えてくれる。
大人に頭を撫でて貰うのが、こんなに嬉しいことだとは知らなかったよ。
照れ笑いを浮かべる私に、お母さんが優しい笑顔を見せてくれる。
声は聞くことが出来るみたいだけど、お顔を見ることは出来ないだろうから、お母さんの笑顔をしっかり覚えておこう!
◆◇─◆◇◆─◇◆
意識がゆっくりと、眠りの海に沈んでいく。
次に見るのは、どんな過去夢なのか、ほんの少し楽しみに思いながら、深い眠りについた。